「セクシュアリティに関係なく働ける社会に」 NPO法人が「LGBT就活」スタート
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーといった性的少数者(LGBT)の若者の支援活動を行うNPO団体ReBitがこの春、就職情報サイト「LGBT就活」を開設した。LGBTの先輩社会人や企業の取り組みを紹介し、キャリア形成に役立ててもらうのが狙いだ。
電通総研が全国7万人を対象に今年行なった調査によると、自身がLGBTだという人は全体の7.6%おり、決して珍しくない存在だ。しかし「LGBT就活」によると「職場に理解がないのでは…」と、就職に不安を感じるLGBTの人は少なくないという。
ゴールドマン・サックスで働くLGBT先輩社会人も登場
そこで、同サイトでは学生のロールモデルになるよう、実際に企業などで働くLGBTの先輩社会人の声を紹介。介護施設や出版社などで働く20~30代が、自身がLGBTだと気づいた経緯や学生時代の悩み、現在の職場での状況などについて語っている。
外資系企業で働く先輩社会人も印象的だ。ゴールドマン・サックスで働く30代の男性は、ゲイであることをオープンにしているが、「働きづらいっていうことはまずないですね。ゼロです」と語る。ドイツ証券で働くレズビアンの20代女性もやはりカミングアウトしており、職場で不便を感じることはないという。
また、企業の取り組みコーナーでは、この2社に加え、ラッシュジャパンやUBS証券、ギャップジャパンといった外資が登場。やはり外資はLGBTを含むダイバーシティという点で一歩進んでいるようだ。
ReBit代表の藥師実芳さん(25)は、自身もトランスジェンダー。女性として生まれたが、性自認は男性のFtMだ。ロールモデルの不足から、LGBTの人は自身のキャリアについて考えることが困難であり、就職活動を諦めてしまう人もいるという。
「自分も小6の頃にトランスジェンダーだと気づいたのですが、周りにロールモデルがいなかったので、将来働けないのではと思っていました。LGBTだからという理由で、働く上での選択肢が狭まっているように感じている人も少なくありません。また、実際に企業での差別的待遇は実在し、残念ながらそれが事実である場合もあります」
社会人にも13人に1人、LGBTはいる
いざ就職活動を始めても、トランスジェンダーの場合、履歴書の性別欄をどうするのか、男女どちらのスーツを着るのかという困難にぶつかる。就活マナーにしても男女で違うのだから悩ましい。
志望企業に対して、カミングアウトするのかどうかも難しいポイントだ。藥師さん自身も面接でカミングアウトしたところ、2~3分で切り上げられ「帰れ」と言われたことがあった。かといって自分を押し殺して就職をすると、トランスジェンダーは自分が生きたい性で働くことができなくなり、LGBT全般にとっても自分らしく働くことを阻害することになる。
LGBT支援をしているNPO法人、虹色ダイバーシティと国際基督教大学ジェンダー研究センターの共同研究によると、同性愛者・両性愛者の40%、トランスジェンダーの70%が、求職の際に自身のセクシュアリティに由来した困難を感じたことがあるという。しかしもちろん、実際に企業で働く人もいる。
「7.6%といえば13人に1人ですので、ある程度の大きさの企業ならLGBTの社員はいます。しかし、LGBTであるかどうかは見た目では判断できませんし、差別的な待遇を受けるのではとの懸念から、職場でカミングアウトできない人も多く、存在がなかなか可視化されません」
藥師さんはこう語る。これまで表に出てこなかったロールモデルを可視化することで「LGBTも働ける」ということを伝えていきたいという。
野村證券やNECなど、国内企業の取り組みも広がる
また、企業の取り組み紹介コーナーでは、5月22日に野村證券を取り上げた。3月にはNECと共同でLGBT就活生を対象にしたトークセッションを開催し、盛況だったという。
藥師さんは、「国内の大手企業でもLGBTに関する取り組みをする企業が出てきています。『LGBT就活』での活動を通して、企業にも理解を深めてもらい、セクシュアリティに関係なく働ける社会を目指していきたい」と話していた。
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