TVタックル「大人のひきこもり」特集の支援業者が物議 精神科医・斎藤環氏は「ヤンキー上がりの引き出し業者」と批判 | キャリコネニュース
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TVタックル「大人のひきこもり」特集の支援業者が物議 精神科医・斎藤環氏は「ヤンキー上がりの引き出し業者」と批判

3月21日に放送された「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)がネットで注目を集めている。この日のテーマは「すねかじられる親の悲痛な叫び! 高齢化する〝ひきこもり〟問題」。30~40代の大人のひきこもりに焦点をあてた特集だ。

子どもが中年ともなると、親は年金暮らしで、精神的にも経済的にも大きな負担を強いられる。そういった大人のひきこもりの自立にも取り組む組織として「ワンステップスクール伊藤学校」(伊藤学校)が取り上げられたのだが、その手法に非難があがっているのだ。

ひきこもりを「何が何でも部屋から出す」ために壁も破る

大人のひきこもり

大人のひきこもり

伊藤学校の廣岡政幸校長によると、大人のひきこもりに必要なのは「親元から離れること」。まずは「何が何でも部屋から出す」ことが重要だとする。VTRでは説得に応じない人に対し、壁を破って「降りてこい!」と声を掛ける様子も映し出された。

番組では41歳のひきこもりの男性を説得する様子に密着する。この男性の父親によると、30歳からひきこもり始め、11年になるという。大学までは順調だったが、就職活動に失敗して以降、定職に就いたことはないそうだ。

自宅を息子がごみ屋敷にしてしまったため、父親は高齢者施設で暮らしている。自宅に踏み込んだ廣岡校長が「お金がもう底を突き始めてるんですよ」と息子に説得を試みるも、「働くのはもうちょっと先にしようかなと」と応じる気配はない。

父親も説得に加わり、「家もうぶっ壊れてる」と現状を指摘すると、息子は「だからやるって言ってるじゃない」と返答したが、ここで廣岡校長が一喝した。

「現実逃避するなよ。こっち見てよ。自分はできるなんて平気で口にするなよ。できないからこんな状態になってるんだろ、なぁ!」

さらに、家の修繕費を自分で負担できるのかという問いを投げかけたところ、息子は「やる」と宣言したが、廣岡校長はさらに畳みかけた。

「できないだろっつうの! やーだのあーだのうーだの言ってる暇あったんだったらよ、自分の自立一歩でもどうやって進むか考えろ今!」

斎藤環医師は「これ普通に軽犯罪でしょ」と指摘

廣岡校長は大人のひきこもり支援にあたる理由をこう説明する。

「ひきこもりで今SOSを出している家庭を無視しちゃって、その日に首つっちゃったらどうするんですか。息子が親殺しちゃったらどうするんですか。家に火付けて隣の家まで巻き込んだらどうします? 何かあってからじゃ遅いから僕らは対応しているんです」

だが、この番組を見た「ひきこもり救出マニュアル」などの著作がある精神科医の斎藤環医師(@pentaxxx)は伊藤学校を「ヤンキー上がりの引き出し業者」だと猛烈に批判した。

斎藤医師は、自身が提唱した支援策や、厚生労働省が2010年に打ち出した「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」があるのに、番組がなぜ伊藤学校を取り上げるのか腑に落ちないようだ。厚労省のガイドラインによれば、「(ひきこもり)当事者との初期の面談における留意点」には、ねぎらいの言葉をかけ、結論を焦らないことが重要と記されている。

「まずは、当事者の不安をじっくりと受けとめることに努め、支援者自身が焦らないことが何よりも大切です」

たしかに、伊藤学校の手法はガイドラインとは離れている。そういった当事者への配慮が見当たらない点も齋藤医師は指摘している。

「支援業者がホンモノかニセモノかは、『訪問させていただく』という配慮の有無でわかる。ヤンキー業者は『老親を苦しめる悪を討つ』くらいの単純な正義感で突っ走るのでこういう配慮は皆無。ドア蹴破り、大声で恫喝、断りなしに土足で上がり込む、これ普通に軽犯罪でしょ」

その上で、最大の問題点は「支援対象への敬意がみじんも感じられないこと」と指摘。あてこすりや皮肉で、不安を掻き立てることで「要するに本人を『おとしめる』ことしかしていない。支援対象をおとしめるのは、いかなる支援業界にあっても許されることではない」と強く糾弾している。

BPOへの審査要請呼びかける「適切な人権意識が欠けている」

また、「まともな治療者、支援者はメディアに患者を売ったりしない」といい、「取材したければ何度も彼らと接触して信頼関係を作り、個別に依頼するのが当然なのに」と番組側にも疑問を呈した。

視聴者からも、「怒鳴り散らして引きずり出せば解決できると思ってんの?」「今日のTVタックルは過去最低だった」と批判があがっていた。斎藤医師は、今回の放送について、BPOに審査要請を出した。フォロワーに対してもBPOへの依頼文例として、

「まともな専門家や支援者には一切取材せず、こうした暴力的な手法を採る業者だけを肯定的に取り上げる報道姿勢には、世間への目配りと迎合はあっても、適切な人権意識が欠けています」

という文言を紹介している。

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