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長年連れ添った夫に「確実に殺してね」と頼む妻 介護疲れがもたらす「介護殺人」増加の深刻さ

極めて深刻な事態だ。日本では今、介護疲れの果てに家族を殺してしまう「介護殺人」が増加している。7月3日放送のNHKスペシャル「私は家族を殺した “介護殺人”当事者たちの告白」が、その実態を伝えた。

NHKの調べによると、「介護殺人」は2010年以降の6年間で少なくとも138件発生している。単純計算で約2週間に1度、家族が家族を殺す悲劇が起きていることになる。九州地方に住むAさん(71歳男性)は介護疲れの果てに、妻に手をかけてしまった「加害者」だ。(文:みゆくらけん)

介護10か月目で「生きるのが辛い」

高齢化社会は今後も進む

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2人暮らしをしていた夫婦は、仲が良かった。毎年2人で訪れる阿蘇への旅行も楽しみに、穏やかな老後生活を送っていた。妻が倒れるまでは――。

骨粗しょう症から腰を骨折し、介護が必要になった妻をAさんが世話をする「老老介護」が始まってから、夫婦の生活は一変する。当初、介護は一時的なもので、妻の状態は良くなると信じていたAさんだったが、妻はついに寝たきりになり、何もできなくなった。

慣れない家事と介護に追われる毎日。妻が排泄困難になっても「自分がやってやりたい、そばについてやりたい」という一心で踏ん張っていたが、夫婦はついに精神をも蝕まれてしまう。完全に塞ぎこむようになった妻は、Aさんにこう訴えるようになった。

「死にたい。殺して」

1日に何度もそう懇願し、自分で自分の首を絞めようとする妻を目の前に、Aさんはいたたまれない気持ちだった。介護初日から丁寧に綴られていた介護日記の内容は、10か月目にはこう綴られていた。

「(妻が)『生きるのが辛い』と言い出した。いままで何回か聞いたことだが、僕も限界に達し、『わかった。自分たちの身の回りを片付けよう』と返事した。近く、人生の幕を閉じる」

こんな形で夫婦が終わるなんて

肉体も精神も追い詰められた夫婦に残された救いの道は、「心中」しかなかった。2人でよく訪れた阿蘇に最後のドライブとして向かい、道路脇に車を止めて犯行に及んだ。

「本当にいいね? 後悔しないね? もう後戻りできないよ?」
「うん。確実に殺してね」

これは、車中での夫婦最後の会話である。その後、Aさんも妻の後を追おうと試みたが死にきれず、執行猶予のついた有罪判決を受けた。「こんな形で夫婦が終わるなんて、考えもしなかった。自分たちのような事件を繰り返してほしくない」と今回取材を受けたAさんは、妻の仏壇に手を合わせながら、涙を流しこう話した。

「今が辛い。写真でないと会えないから」

殺してくれと訴える妻を「生かす」こと。それは当然で、いかなる理由であっても殺人は罪である。しかし私たちは当事者の立場に立ったときにも、自信を持って同じことを主張できるだろうか。何が正解で、何が愛情なのか。夫婦を救える最善の方法はいったいどうすることだったのだろうか。

介護経験者の4人に1人が考える「殺人」

今、日本で介護を担う人は557万人にものぼっている。65歳以上の高齢者の割合が4人に1人を超える中、Aさんの事例は他人事ではなく、いつ誰に降りかかってもおかしくない極めて身近な社会問題なのだ。

今回NHKでは、こんな調査も行った。介護の経験がある人に対して、「『相手を手にかけたい』『一緒に死にたい』と考えたことがあるか?」というものだ。その結果、4人に1人(24%)が「ある」「時々ある」と答えた。

「家族だから、そんなことを考えるわけがない」は、もはや幻想、理想論だという実態が浮き彫りになった。愛情云々ではどうしようもない追い詰められた現実が、そこにある。既存の介護制度だけでカバーできない部分もあり、ある介護施設長はこう話す。

「これからますます認知症の人が増える。今の社会のしくみやシステムを真剣に考えないと、今後も介護殺人はなくならず、逆に増えていくだろう」

あわせてよみたい:開き直るニート 親の介護は「兄弟に任せる」

※ウェブ媒体やテレビ番組等で記事を引用する際は恐れ入りますが「キャリコネニュース」と出典の明記をお願いします。

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