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「仕事は見て盗め」が必ずしも間違っていない理由 先輩の助言より「やっていること」に注目してみよう

様々な社会人教育の手法が編み出され、いろいろな研修会社が提供しています。元々はOJT(On the job training:仕事を通じた訓練)主体であった日本企業も、必要に応じて職場を離れたOff-JT(Off the job training:オフサイトでの研修やワークショップなどでの訓練)をうまく使いこなすようになっています。

しかしそれでも人が育つのは、結局は実際の仕事を通じてです。「仕事自体で学ぶ」と言った方がよいかもしれません。どんな仕事にアサインされ、そこでどんな経験をして何を学び取るのか。これが成長できるかどうかのカギです。(文:人材研究所代表・曽和利光)

経験を学びに変える「リフレーミング」のワナ

上司の助言はアテにならない?

上司の助言はアテにならない?

仕事を学びの場とするのに重要な要素は、仕事自体で得た経験や知識の「リフレーミング」です。まじめに仕事をしていれば日々様々な情報が入ってきますが、それを新たな枠組みを作って整理したり、情報を再構成して深い意味を読み取ったりすることを指します。

同じような仕事を同じような業務量で行っていても、成長する人としない人の違いは、頭の中に入って来た情報をきちんとリフレーミングし、「学び」にできるかどうかにかかっています。単に「ああいうことがあった」という生の経験のままで記憶するだけでなく、他にも応用の効くような「こういう場面ではこういう風にすればよい」という原理・原則に置き換えることができるかどうかということです。

その一方で、仕事経験から適切な意味を読み取れればよいのですが、なかなかそうはいきません。意味づけがおかしくて間違った原理・原則を身に付けることになってしまったら、せっかくの良い経験も台無しです。

よくあるのは「過度の一般化」という認知の誤謬。たった数件の事象にたまたま生じた共通点を、原理・原則だと誤解してしまうというものです。経験が少ない人であれば、自分の経験が普遍的なものか、偶然の産物か分かるわけがありません。そこで上司や先輩に、その「仕事経験の意味」を尋ねることになるわけです。

上司が教えてくれることは、結構間違っている

一般的に、こういうときに懇切丁寧に言葉を尽くして教えてくれるのが、良い上司と言われています。当たり前ですが、聞いた方も感謝することでしょう。反対に、

「こうすればいいんじゃない?」
「後はやり方見といてよ」

と、言葉少なに(そして、たいていぶっきらぼうに)しか説明してくれない上司は、「ちゃんと教えてくれない」マネジャーとして適格性を疑われたりするものです。

しかし私は、後者の方が実は良い場合もあるのではないかと思っています。というのも、上司がいろいろ教えてくれることは、結構な割合で「間違っている」からです。

別に上司が嘘を言っているということではありません。実は上司自身もそのことに気づいていない、分からないのです。自分がなぜできているのかを完璧に理解している上司は、結構少ないものです。そんな間違ったことを教えられて一生懸命やっても、成果はもちろん出ません。

なぜそんなことが起こるかと言えば、プロは「それが自然にできてしまう」からです。例えば日本語が話せる我々でも、日本語の文法をきちんと説明できる人は少数です。たまに言語明瞭に説明してくれる人もいますが、そこにもまた落し穴があります。言語明瞭=分かっているではなく、単に「そう思い込んでいる」だけのことも多いものです。

人は「言っていること」と「やっていること」が違うもの

では、どうすればよいのか。上司のありがたい助言は、とりあえず受け止めておきながらも、それはいったん横に置いておいて、目標としている人たちが日々の仕事で「実際に何をやっているのか」をじっくりと観察することです。

朝から晩まで、一度じっくり見てみてください。時間の使い方、PCや手帳などのツールの使い方、コミュニケーションの取り方、情報収集の仕方、判断のスタイル等々。何が仕事の秘訣で、何が単なる趣味(つまり本質的にはどちらでもよいもの)か分からないときには、とりあえず「完コピ」(完全コピー)してみることをお勧めします。

人によっては就業後の過ごし方や服装まで完全にコピーする人もいますが、それも面白いと思います。そうすると人間というものは「言っていること」と「やっていること」がずいぶん違うことに気づくはずです。

「じっくり深く考えろ」と言っている人が、実際にはものすごい短時間で次々と判断を行ってスピードを重視していたり、「クオリティにこだわれ」と言っている人が、完璧な未完成よりも不完全な完成を重視していたりというようなことです。

つまり、上司や先輩は「仕事の秘訣」など教えてはくれません。それは意地悪なのではなく、なかなか難しいことだからです。先人たちが「仕事は盗むもの」と言っていることは、このような背景があるのではないでしょうか。

あわせて読みたい:曽和利光の「働きやすい職場とは何か」

 

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