除夜の鐘も花火もダメ! 日本の風物詩が「生活騒音」とされ中止に追い込まれる時代
日本には、四季折々の楽しみがある。春はお花見。夏は花火大会。風鈴の音色が涼やかな季節でもある。秋は行楽シーズンで、そして冬は雪景色に心を打たれ、年の終わりには除夜の鐘を聞く。季節ごとにさまざまな表情がある。
それなのに最近、この楽しみに水を差す声もあるようだ。12月8日放送の「Nスタ」(TBS)で、気になる特集が放送されていた。(文:松本ミゾレ)
「窓がビビビってなるんですね、振動で」「テレビの音もかき消されるぐらい」
「大晦日の伝統行事 除夜の鐘が聞けなくなる!? 住宅地の騒音問題どこまで」と題されたこの特集。個人的に思うところが多かったので紹介したい。
京都・知恩院の除夜の鐘をつく僧侶たちの映像が流れる冒頭部分。これを見ているだけでも、郷愁を誘われるというか、日本人に生まれてきて良かったという気になってしまった。
ところが。東京・小金井市にある千手院では、2014年より除夜の鐘をつくのをやめてしまっている。それは何故か。理由は「近隣の住民さまへの配慮」だと、同ホームページは記している。
配慮とはどういうことなのだろうか。近隣住民は取材に対し、こう言う。
「窓がビビビってなるんですね、振動で」「テレビの音もかき消されるぐらい」
それぐらい我慢すればいいのに……と思わないでもないが、実はこれ結構深刻な問題のようだ。千手院は民家の密集地域にあり、除夜の鐘をつくと周囲に、ある種の騒音被害をもたらしていたのだ。
取材に応じた近隣住民の自宅は、千手院の鐘とわずか3メートルしか離れていない。これは確かに近すぎる……。でも年に一度のことなんだから、我慢すればいいのにという気もしないでもないが、ともかくこの音が原因で、裁判所での調停に発展してしまった。
運動会のピストルもダメ、それくらいどうして我慢できないの?
同様のトラブルは他にも、静岡県の大澤寺でも起きていた。近所の人に「いいかげんにしろ、いつまでやってんだコノヤロー」などとクレームを受け、十数年も鐘をついていないという。
番組では鐘をついた際の音量を測定しているが、自動車のクラクション以上の数値が出たということだ。もっとも、鐘の音を騒音を測定する機材で判定するなんて、随分無粋だなぁと思ってしまったけど。
風物詩についての「待った」の声がかかっているのはこれだけではない。特集では他にも、春のお花見の際の花見客の騒ぎ声、夏の海の家の音楽や花火の打ち上げ、秋は運動会でのスターターピストルの音が、騒音として問題となっていると伝えられた。
確かに騒ぎ声やら本来無用な音楽については、近隣の住民も「勘弁してくれよ」と思うだろうし、そこは理解できる。風物詩関係なく、ただバカ騒ぎしたいだけの人ってのも必ずいるし。
だけど花火の音やら運動会のピストル音なんてのは、「それぐらいなんで我慢できないの?」と思ってしまうのは、僕が性格が悪くて被害を訴える人の立場に立てていないからだろうか?
僕は自衛隊の駐屯地近くに住んでいるので、ヘリのローター音が耳障りに感じたこともあった。しかし、だったら対策をすれば良い話で、防音ガラスを買ってきたし、遮音性のあるカーテンやマットも使って気にならない程度に抑えている。
工夫一つで騒音は随分気にならないものになる。いたずらに「コノヤロー」なんて声を荒げて風物詩を潰さなくても、騒音から逃れる方法はいくつもあるんじゃないだろうか。
第一、日本に昔からある季節ごとの音の風流を、騒音に感じて毛嫌いするなんて勿体無いことだろうに。