SF作家の「中学になったらラノベなんか読むな」が文脈外れて盛り上がる 「俺TUEEE!」ばかり読んでたらダメなのか
ドナルド・トランプ大統領が就任早々、移民・難民の入国制限をして国際的に物議を醸す中、SF作家の野尻抱介さんが投稿したツイートが話題だ。
野尻さんは、1月29日、多様性が失われるなかで万が一サブカルチャーが弾圧されるようなことがあれば徹底抗戦しなければならないという旨のつぶやきを投稿。しかしネット上では、そうした文脈から離れて、ラノベ批判が盛り上がることとなった。
「権力がラノベを奪いに来たら、徹底抗戦しなければならない」
野尻さんは、トランプ大統領の移民政策に批判的なツイートを数件リツイートした後、政治情勢とサブカルチャーについて次のようにつぶやいた。
「こんな時勢にあってこそ、私たちオタクはサブカルを守って守って守り抜かねばなりません。サブカルは坑道のカナリアです」
多様性が失われつつある中で、サブカルチャーが弾圧の標的にされる可能性があるということだろう。そうした中では、自らの嗜好にかかわらず、権力の弾圧に抗う必要があると訴えた。
「私は『中学になったらラノベなんか読むな、大人の本を読め。大人の本で本物の教養やセックスや暴力や愛や人生を学べ』と思ってるので、中高生に迎合したラノベなど消えてなくなれと思ってるんだけど――」
「そうは思っていても、ラノベを消すか残すかを決めるのは読者以外であってはならないと確言する。権力がラノベを奪いに来たら、徹底抗戦しなければならない」
しかし、こうした文脈を離れて、「中学になったらラノベなんか読むな」という部分ばかりが注目を浴びてしまうことになった。
「最近のラノベは異世界転生俺ツェーハーレムアニメ向きのオンパレ」
幸か不幸かツイッター上では賛同の声が多数上がることとなった。ラノベは「レベルが低い」と言わんばかりだ。
「ラノベしか読んでない人は馬鹿しかいない」
「ラノベや同人小説ばかり読むようになったら、よりにもよってセンター試験前に『解釈違い』で現国の点数が半減した」
ラノベを巡っては以前から文章が稚拙な作品が多い、などと言われていたが、最近は物語がワンパターンになっている、という指摘も出ていた。
「最近のラノベは異世界転生俺ツェーハーレムアニメ向きのオンパレ」
「『俺様強えぇェェェェ!!』みたいなのが多いですからのぉ…」
読者が主人公に自己を投影し、万能感を得られるような作品に偏っているというのだ。また、ラノベそのものは否定しないが、そればかりでは成長しないのではないかという人も。
「『世代に迎合』してるものばかりだと、語彙は増えないだろうな」
「中学生向きだからこそ、それは、中学生の身分相応、分かる範囲の相応分のないようでしかない。そこに背伸びはなく、そんなののみを読んでたらだめだという」
もっとも、それでもラノベは一大市場を築いているわけで、中には優れた作品もあるだろう。そもそもジャンル分け自体にどこまで意味があるのかも疑問だ。ツイッターでも、ラノベを擁護する人がいた。
「それは昭和の頃からラノベではない、マンガや小説でも言われ続けていることではw裾野が広がれば、また斬新なのもふえる余地があるのではないか、と思いまする」
もともと野尻さんは、「自分の好き嫌いにかかわらず弾圧には抵抗しなければ」という旨の文脈で発言していたが、結果として、ラノベの是非について喧々諤々の議論が盛り上がることとなってしまった。野尻さん自身「最初のほうだけ読んで噴き上がっちゃいかん」と釘を刺していたのだが……。