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人にやさしい「働きやすい職場」をつくるために――同僚の「プライベート」に思いを馳せてみよう

近年、「期間限定契約社員」や「地域限定社員」「時間限定社員」「リモート社員」など、様々な雇用形態が増えています。これ自体は良い傾向だと思うのですが、多様性が摩擦を生んでしまうのが人間というものです。

自分と異なる雇用条件で働く人は、いろいろな点で考え方や行動が異なるので、日々妬みや蔑み、怒りや苛立ちなどネガティブな感情が芽生えがちです。マイナス効果が大きすぎると、せっかくの多様化のメリットがなくなってしまいます。この「壁」は、どのように乗り越えればよいのでしょうか。(文:人材研究所代表・曽和利光)

お互いの重い事情を「自分の勝手」と勘違い

人はみな「それぞれの事情」を抱えながら生きている

人はみな「それぞれの事情」を抱えながら生きている

雇用形態や働き方を、昔ながらの「正社員」とは違うものにしようとする動機は、現在の日本においては企業の事情だけでなく、従業員のプライベートにおける何らかの事情が関係していることが多いものです。

例えば、不妊や育児など子どもがらみの問題、自身や家族の健康、配偶者や恋人との関係、親の介護や病気の看病、長男や一人っ子で親から地元に残ることを強く要望されている……といった理由です。

ただ、これらのプライベートの事情には重いものもあったりして、誰もが公にしているわけではありません。なので、表面的には「自分の勝手」で今の雇用形態を選んでいるように見えることが多いでしょう。

そして、不条理なことですが、どうしても「勝手にやった」ことの方が、「仕方なくやるしかなかった」ことよりも風当たりは強いものです。例えば、トラブル対応で職場がパニックになり猫の手も借りたい状況の中で、時短勤務の人が「お先に失礼します」と帰ってしまったら、イラッとしてしまう人も仕方がないのではないでしょうか。

しかし、「なぜこの人が時短で帰らなければならないのか」というプライベートの重い事情を職場の人が知ったら、おそらくこの人には同情や共感が集まり、もっと働きやすくなるだろうなあ……と人事の立場で思ったことはよくあります。

カラオケでは「人は皆悲しみを抱えて」と歌っているのに

人事を担当していると、極めて多くの人がプライベートで何らかの問題を抱えていて、それを特に明かすわけでもなく、表面的には平然と生きていることに驚きや尊敬の念を抱きます。こんなに大変なことがあるのに、みんなよく頑張っているなあとしか思えません。

しかし人は他人の同情や共感を集めるよりも、わざわざ自分の重いプライベート事情を明かす方がもっと強いストレスになるからと黙っているわけです。さらにそういう人々同士は、実は目の前の人も似たような悩みを抱えているにもかかわらず、「自分だけが大変」と思っていたりします。

カラオケに行けば「人は皆一人では生きていけない」とか「人は皆悲しみを抱えている」と歌っているくせに、なぜか職場の仲間はそういう人ではないと思っているのは不思議です。ある種の心理的バイアスだと思いますが、辛い目に遭うと、ある種の特別意識、誤解を恐れず言うと選民意識のようなものが補償作用として生じるからかもしれません。

よくカウンセリングで「あなたの状況は特別なものではない」と言ってはいけない、それは全く慰めなどにならず、「だから我慢して当たり前ということ?」と反発を受けても仕方がない、ということに似ています。

ですから、同僚に対して妬みや蔑みを覚えたり、怒りや苛立ちなどネガティブな感情が芽生えたり、あるいはそういう雰囲気が職場に広がったりしたら、画期的な解決にはなりえないとは思うのですが、まずは職場の仲間の人生に想像力を働かせて欲しいと思います。

「その問題は自分にも起こり得る」という認識も重要

その同僚は、なぜこういう働き方をしているのか、どんな制約条件があるのか、何を目指しているのか――。ゲスな噂好きがするような詮索をしろ、ということではありません。事実を掴む必要はなく「何かあるのだろうな」と思えるだけで、相手に優しくなれるのではないかということです。

組織で起こる問題のほとんどは、誤解からくるものです。何か自分にデメリットのあることが起こったときに、そこに勝手に悪意を想像するのではなく、「どうすることもできない、何か事情があるのであろう」と思うことで、心は落ち着いていくはずです。

さらに言えば、職場の同僚に起こっている(と思われる)様々な問題は、自分にも容易に起こり得るものだという認識も重要だと思います。何ら特別なことではなく。親がいる人は親の、家族がいる人は家族の問題に巻き込まれることはよくあることです。

独身であればあったで、男女の問題に巻き込まれたり、逆に孤独感への対処が必要だったり、様々な問題があります。もっと言えば、家族がいる人はいなくなる可能性、いない人はできる可能性、どんな可能性でもあるわけです。

そして、最後には人はいつか死んでしまいます。病んでいる人も健康な人も皆同じです。人を慮れる職場は素敵です。「行きつく先は皆同じだ」と思うことができれば、もっと人にやさしくなることができ、職場は過ごしやすい働きやすい場になるのではないでしょうか。

あわせて読みたい:曽和利光の「働きやすい職場とは何か」

 

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