秋田県「人口100万人割れ」の衝撃 課題は働く場所の確保「職がなければ県外に出るしかない」
地方の過疎化が叫ばれて久しい。4月21日には秋田県の人口が初めて100万人を下回ったと発表され、話題になっていた。同県は4年前から人口減少率1位を記録しており、100万人を下回るのは時間の問題と言われてきたこともあってか、ネットでは驚きや悲しみの声と共に、「さもありなん」と納得している様子も見られる。
「若年層の県外流出」が深刻、進学で県外に出た若者が帰ってこない
ネットでは発表を受け、「仕事がないからしょうがない」といった声が相次いだ。「いくら住みやすく、ご飯が美味しくても、職がなければ県外に出るしかないってのが現状」というのだ。
「秋田県仕事ないから人減ってくんだよ?まともに子育てできる水準の給料もらえてるのなんてインフラか金融か公務員だけでは?って感じ」
と、やはり就労先の少なさや賃金の低さを指摘する声が多い。
NHKが今月18日・19日に秋田県内在住者を対象に実施したアンケートでも、行政に期待する政策上位3つは「働く場の増加」(65.2%)、「産業の活性化」(39.4%)、「結婚支援・少子化対策の推進」(31.3%)だった。賃金についても、厚生労働省の都道府県別現金給与総額で秋田県は全国ワースト4位であり、こちらも課題のようだ。
こうした認識は、県庁も同じだ。あきた未来創造部あきた未来戦略課の担当者は、人口減少の歯止めの鍵を握るのは雇用の拡大と受け止め、
「人口減少が続く主な原因は、若年層の流出が続いていることです。働く場所が無いと、進学で県外に出た若者が帰ってきません」
と話す。同部署は、これまで県庁内で様々な部署が断片的に担当していた業務を集約し、よりスムーズな政策の実行を目指して今年4月1日に新設された。
4月に県知事選があったため、今年度の具体的な計画はまだ決定していないというが、「若者にとって魅力的な仕事というのは、将来性があり、長く続けられる仕事」という考えに基づき、「県内で成長が見込まれる5つの分野(航空、自動車、新エネルギー、医療福祉関連機器の生産、情報産業)に注力し、雇用の受け皿を増やしたい」と、雇用の創出に意欲的だ。
「義務教育環境の充実ぶり」に魅力を感じて秋田県に移住する人も
しかし秋田県、総人口は減っているものの、移住者は年々増加しているらしい。秋田移住定住総合支援センターに登録された移住者数は、2013年度は8世帯30人だったが、2015年度に58世帯123人、昨年度には137世帯293人にのぼったという。担当者は増加の要因を
「東京に相談窓口を設けたり、私たちも相談に出向いたりしたので、そういうところがきっかけになったのでしょうか」
と推測している。移住してきた世代は30代が最も多く、子育て世帯と起業希望者の2つが主な層だという。
「子育て世帯は、秋田の義務教育環境の充実ぶりに魅力を感じて、起業希望者は、一緒に起業したい相手やコミュニティが県内にいるから、といった理由で移住を決めるようです」
県が開いた移住希望者向けセミナーでは、既に県内に移住した人に秋田の暮らしの魅力を語ってもらい、具体的なイメージを持ってもらえるよう工夫したそうだ。今後は増えてきた移住者をサポートするために、移住者同士の交流の場を作る案も出ているという。
「貨幣経済以外の、人との繋がりなどに豊かさを見出し、気に入る若い人たちが多いみたいですね」と担当者は話す。
ネットでは
「これ都市圏以外の地方は軒並み他人事じゃねえんだよなぁ」
との声もある。どの自治体も子育てや福祉の充実、雇用の拡大によって人口を増やそうと奮闘しているが、成果が出ているのは、兵庫県明石市や千葉県流山市など一部に限られる。同様の政策を他の自治体で実行してもうまくいくとは限らないが、他に手立てがないのならやらないよりずっといい。自治体の機能が崩壊する前に、なんとか過疎化を緩和させたいものである。