アジア最後の宝箱・ラオス 「ASEAN成長の屋台骨」として発展遂げるか
カンボジアやタイ、ミャンマー、中国やベトナムに囲まれたラオスは、2008年度にはNYタイムズが「世界で行くべき国」第1位に選ぶほど注目されており、観光客も多い。日本人観光客は「どこのアジアも結構発展してきているから、発展していない所となると最後がラオスかもしれない」と語る。
2014年10月27日放送の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、今後発展が予想され、人件費の安さから世界中から企業が進出し始めているラオスを紹介。そこには、成長を阻んできたベトナム戦争の爪痕と、発展を助ける日本人たちの姿もあった。
いちはやく進出したミドリ安全「ラオス人は素直」
日本からはニコンやトヨタの関連会社などが進出しているが、6年前にいち早く進出したのは安全靴の「ミドリ安全」だ。約600人のラオス人従業員を指揮する工場長の遠藤隆さんは、ラオス人の気質をこう評した。
「素直で、変に反発しない。言われたことは必ずやってくれる」
女性従業員のひとりは、工場長のことを「お父さんみたい。いい人です」と笑顔で話す。日本人との相性はいいようだが、ゴミを好き勝手なところに捨てたり、仕事中のおしゃべり、昼休みが終わっても休憩していたりするなど、日本人には当たり前のルールが通用しない。
ラオスは社会主義ということもあり、もともと競争意識が低い。それを変え、日本の企業文化を理解してもらおうと、経験によって制服の色を変えるなど様々な対策をしている。青い制服は3カ月未満の見習い、オレンジは正社員で、緑はライン責任者。その効果でやる気のある社員も出てきて、ライン責任者が見習いに熱心に指導している場面も見られた。
この工場には、いま日本企業の視察が相次いでいるという。遠藤工場長は「1月から今日までで53件くらい視察に来ている」と明かした。
アジアのビジネスマンたちは、ラオスの人たちを「宝箱に座っている人たち」と呼んでいる。宝とは、メコン川流域の肥沃な土地や鉱物資源、ダムの建設による水力発電などが挙げられる。だが、その宝が出るのを阻んでいるものが、1960年に起きたベトナム戦争だ。
ダムを最初に作ったのは「カリスマ日本人」
ベトナムに隣接するラオスは、国境付近におびただしい数の不発弾が残っており、40年以上経ったいまでも爆弾による事故が絶えない。
不発弾の処理には、日本の爆弾処理専門NGO「JMAS(ジェームズ)」が協力し、毎日処理を行っている。JMASラオス事務所代表、關 廣明さんは支援する意義を「まずは被害者を少なくするのが第一。開発も妨げられているので、支援して発展させてあげたい」と語る。
漢方薬のトップメーカー・ツムラは、不発弾処理の終わった東京ドーム150個分の土地に、漢方薬の材料であるショウガの農場をつくる予定だ。ツムラ現地法人の神保智一社長は、「この地域を生薬の一大産地にしたい」と目的のひとつを語る。
ツムラは9年前に進出しており、すでにあるショウガ農場では200人もの農家の人たちがあつまり、大きな雇用も生まれていた。
国土の約8割が山岳地帯というラオスは、その地形を利用したダム(水力発電)によって、自国で必要な電力以上の発電を可能にしている。タイとベトナムに売電し、「東南アジアのバッテリー」とも呼ばれている。
そのダムを最初につくったのが、世界からダムのカリスマと呼ばれた日本工営の初代社長、久保田豊氏だ。間組や日立製作所も参加しての一大プロジェクトだったが、当時のラオスは内戦中で、建設現場の近くに反政府ゲリラの基地があり、工事は過酷を極めたという。そのダムは40年以上経った今も活躍し、20基にまで増えた。
水力発電の出力は「原発20基分」
番組ナビゲーターの後藤康浩氏(日本経済新聞社編集委員)は、今後80基まで増やす予定のダムの発電能力が「ASEAN成長の屋台骨」になると未来予測した。すべて完成すると発電能力は2000万KW。原発20基分の電力がまかなえる。
しかもそれは環境を大きく破壊しない形のエネルギーだ。電力不足で停電が絶えないベトナムやカンボジア、ミャンマーをはじめ、ASEANを支える特殊な役割を担う可能性もある。
内戦中にもかかわらず命がけで「ラオスのため」にダム建設を行った先人たちや、毎日地道な不発弾処理を行う日本人たちがいたことに驚いた。そういう人たちの存在があればこそ、工場長が「お父さんみたい」と言われる良好な関係が築けているのだと感じた。(ライター:okei)
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