「首肩のマッサージで11日間入院」「骨折で全治1か月」 消費者庁が整体やカイロの利用に注意を喚起
肩こりや腰痛に悩まされたときに、「整体」や「カイロプラクティック」を利用する人も多いのではないだろうか。しかしこうしたサービスを受け、骨折したり脱臼したりする人は後を絶たない。消費者庁は、5月26日「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」という文書を発表した。
マッサージや整体といったサービスには、国家資格を持った人が行うものと、国家資格を持たなくても行えるものがある。「あん摩マッサージ指圧」と「柔道整復」は、国家資格に合格した人しか施術を行うことができない。しかし「整体」や「マッサージ」の中には、こうした資格を持たない人が施術を行っていることも少なくない。
消費者庁は、資格制度のない「マッサージ」「整体」「リラクゼーションマッサージ」などを対象に事故の報告件数を集計。2009年から2017年のおよそ9年間に、少なくとも1483件の事故が起こったという。
1か月以上の治療期間が必要な事故が240件、骨折も122件
そのうち、1か月以上の治療期間が必要な事故が240件と全体の16%を占めた。治療期間が1週間から1か月必要だったものも全体の18%に上った。
施術の内容ごとに事故の発生件数を見ていくと、整体で467件、リラクゼーションマッサージで251件、カイロプラクティックで221件だった。特に治療期間が1か月以上となる事故は、整体とカイロプラクティックで多く発生していた。
症状の内訳としては、「神経・脊髄の損傷」が290件で最も多く、「擦過傷・挫傷・打撲傷」が229件で2番目に多かった。「骨折」も122件起こっていた。男女比では、女性が約8割を占めている。
同文書では、事故の事例も紹介されている。「リンパマッサージ」を受けた20代の女性は、
「強力マッサージをうたっているので、施術中の痛みはそんなものだと思っていたが、ろっ骨を骨折しており全治1か月かかった」
という。
また「首と肩の『格安マッサージ』」を受けた30代の女性も「翌日に、おう吐と首から肩にかけての激痛が出た。病院で髄液が漏れていることが判明し、11日間入院した」。
「疾病がある方は施術を受ける前に医師に相談しましょう」
金銭関係のトラブルも起こっている。腰痛で整体院に行った50代の女性は、施術後に症状が悪化。
「施術者に伝えると、施術者に伝えると、好転反応なのでしばらく続けるように言われたが、数回目の施術後、骨盤の痛みがよりひどくなった。会員になりプリペイドカードも購入したが、返金してほしい」
と訴えている。
カイロプラクティックを受けた30代の女性は、肩から指先にかけてしびれるようになり、病院で「尺骨神経まひと診断された。手術をしたもののいまだに完治していないという。補償を受けたいが、「診断した医師が(カイロプラクティックのせいで神経まひになったという)因果関係をはっきり言いきれず、保険補償が受けられない」と嘆く。
消費者庁は、対策として「疾病がある方は施術を受ける前に医師に相談しましょう」と呼びかけている。「疾病(例えば:心疾患、けい椎脊索狭さく症、骨粗しょう症など)がある方は、症状によっては、施術によって症状がひどくなってしまう場合もあ(る)」という。
また症状が悪化しても、施術者から回復する過程の「好転反応」と言われ、治療の継続を勧められることがある。しかし症状が悪化した場合には、治療を中断し医師に相談した方がよいという。