ヤマハら「音楽教育を守る会」、JASRAC提訴へ 「教室での指導に演奏権が及ぶか司法判断を仰ぐ」
ヤマハなどで組織する「音楽教育を守る会」は6月20日、JASRACが示した音楽教室での著作権徴収の意向に対し、音楽教室側に著作権使用料の支払い義務が無いことを確認する訴訟を東京地裁に起こした。
守る会は「音楽教室での指導は演奏ではない」との主張崩さず
JASRACはかねてより、ヤマハなどが運営する音楽教室が営利目的だと指摘し、また、教室での指導に演奏権が行使されると主張。著作権使用料の支払いを求めていた。
これに対し「守る会」側は、「教室での指導は教育目的」「指導は不特定多数に聞かせるためではないため、演奏権は発生しない」と反発。3月には、JASRACが示した使用料規定案に対し「音楽教室における著作物の利用は、著作権法第22条に規定する演奏権はおよばず、JASRACには徴収権限がないため文化庁への届出はしないでいただきたい」と書面で回答していた。
しかし、JASRAC側は6月7日、守る会のこの回答を「見解を述べているに過ぎない」として、文化庁に対し使用料規定を届け出た。
守る会は今回の提訴にあたり声明を発表。「音楽教室での演奏には、著作権法に定める演奏権(法第22条)が及ばない」理由として以下の3点を挙げている。
・「公衆」に対する演奏ではないこと
・「聞かせることを目的とした」演奏ではないこと
・著作権法上の立法目的(法第1条)にもそぐわないこと
これらの理由は、守る会がこれまで表明してきたことと同じで、真新しいものではない。しかし、今回の訴訟によって、争点だった演奏権の解釈に関し、初めて司法の解釈が明らかになる。そのため、注目度は高くなりそうだ。
「日本の音楽文化の発展を阻害する問題に団結して立ち向かっていく」
守る会は5月30日の総会に出席、または議決権行使書を提出した270社中265社の賛成により提訴を決定。原告団は、うち249社で結成されている。
守る会は訴訟にあたり、
「当会は、今回の訴訟提起は単なる法解釈の問題ではなく、民間の音楽教育が日本の音楽文化の振興に果たしてきた役割をあらためて問う契機になるものと考えています。日本の音楽教育ならびに将来の音楽文化の発展を阻害する問題に団結して立ち向かってまいります」
とコメント。また、
「料率の交渉なら相談に応じるとするJASRACのコメントが報道されていますが、当会の主張はあくまでも『音楽教室での指導には著作権法に定める演奏権は及ばず、JASRACに徴収権限は無い』ことであり、料率交渉に応じるのではなく、音楽教室での指導に演奏権が及ぶかどうかについて司法判断を仰ぐことにしたものです」
と、訴訟の目的を表明している。