中村教授が「お祈り」される 日亜のコメントにネット「本物の慇懃無礼を見た」
青色発行ダイオードの実用化でノーベル物理学賞の受賞が決定したカリフォルニア大の中村修二教授が、発明の対価をめぐって争った日亜化学工業に関係改善を申し込んだところ、断られたあげく「お祈り」されてしまった。
報道によると、中村氏は3日の会見で、「過去のことは忘れて関係を改善したい」「けんかしたまま死にたくない」と発言。「日亜がLEDで世界をリードしたからこそノーベル賞に繋がった」とし、小川英治社長や部下らに「感謝したい」と語った。ここで日亜側が関係改善に応じれば大団円、といったところだが、そうはいかなかった。
酷い別れ方をした「元カノ」に擦り寄られた感じ?
日亜は翌4日に中村氏への返答を発表。「(中村氏が)歴代社長と会社に対する深い感謝を公の場で述べられておれ、弊社としては、それで十分」とした上で、具体的な関係改善については実質的に断った形だ。
「中村教授が、貴重な時間を弊社への挨拶などに費やすことなく、今回の賞・章に恥じないよう専心、研究に打ち込まれ、物理学に大きく貢献する成果を生みだされるようお祈りしております」
相手に気を遣った丁寧な文面ではあるが、今後も仲直りはしなくていい、ということのようにも読める。これがネットで話題となったが、意外にも日亜の肩を持つ意見が多く、断るのは当然だとする見方が多いようだ。
「酷い別れ方した元カノに擦り寄ってこられたみたいな感じ」
「めんどくさい人には関わりたくないってのが本音でしょう」
中村氏はノーベル賞受賞発表直後に会見を開き、「ここまで自分を突き動かしてきたのは怒り」など、日亜への批判を滲ませるような言動を繰り返していた。これだけ言われたのだから、日亜としては「いまさら」ということなのだろう。
溝埋まらず中村氏落胆「非常に残念だ」
ただ、いくら関わりたくないとはいえ日亜の対応は「大人げない」という声も。文末の「お祈り」も就職活動の不採用通知でよく見かける形式のため、
「本物の慇懃無礼を見た」「まるでテンプレート」
という見方があった。もっとも日亜の対応は想定の範囲内、とも言える。10月、中村氏の受賞が発表されたときにも、こんなコメントを発表している。
「日本人が受賞したことは大変喜ばしいことです。とりわけ受賞理由が、中村氏を含む多くの日亜化学社員と企業努力によって実現した青色LEDであることは、誇らしいことです」
受賞は中村氏だけでなく、日亜社員の努力あってのもの、という内容だ。このときは、会社が「器が小さい」などと批判を浴びたが、現役社員が実態を明かすブログを発表するなど、ネットユーザーの心象も変わってきたようだ。
今回またこうした文面を用意してくるということは、日亜側に深いわだかまりがあるということだろう。中村氏は訴訟以降、日亜と接触できない状況だというが、回答を受けた5日、「非常に残念だ。あの返事だとこれ以上の進展がない」と発言している。なんとか関係改善する道はないものだろうか。
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