誰もが美人・イケメンに! 顔写真加工アプリ「フェイスチューン」を開発したイスラエルのITベンチャー「ライトリックス」インタビュー | キャリコネニュース
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誰もが美人・イケメンに! 顔写真加工アプリ「フェイスチューン」を開発したイスラエルのITベンチャー「ライトリックス」インタビュー

現在、第二のシリコンバレーと呼ばれるほど、中東のイスラエルには多くのハイテク・スタートアップ企業があります。その中の一つ、モバイル用肖像編集アプリ「Facetune(フェイスチューン)」で大成功をおさめている、創業2年目のLightricks(ライトリックス)社の創設者の一人、イタイ・ツィドン氏にインタビューしてみました。

スタートアップ企業のほとんどが商業都市テルアビブ周辺に集まっているのに対し、ライトリックス社は静かな首都エルサレムにオフィスを構え、創設者5人も見るからに学者的外観の異色なハイテク企業です。大学教授の父の仕事の関係で米国とイスラエルのほか欧州数か所でも育った経験を持つツィドン氏は、目下グローバルな視野を持って自社の経営を行っています。(聞き手:夢野響子@イスラエル在住)

世界一売れてる有料アプリは「ダウンロード200万回」

ライトリックス社長のイタイ・ツィドン氏

ライトリックス社長のイタイ・ツィドン氏

夢野:フェイスチューン、大変な売れ行きだと聞きましたが。
ツィドン:はい、おかげさまで。

夢野:これはモバイルで撮った顔写真を自分で編集できるんですね。
ツィドン:雑誌のグラビア写真レベルに、誰でも思い通りに編集できます。フェイスチューンは2014年夏の時点で200万回ダウンロードされ、今世界で最も売れている有料モバイルアプリの一つと言われています。iOS版は日本語を含む12か国語に対応し、世界100か国以上で有料アプリのナンバーワンにランク付けされました。Android版も今年7月の発売からわずか1週間で、世界113か国でP&Vアプリのナンバーワンになりました。

夢野:BBCやニューヨークタイムズ、ハフィントン・ポストなどのメディアでも素晴らしいレビューを受けていますが、なぜこのアプリを作ろうと思われたんですか。
ツィドン:今モバイルの使用が大半を占めていて、一番手ごろで何か楽しい物をということで発案しました。誰でもウェブ上の自分のプロフィール写真をよく見せたいと思っていますからね。
フェイスチューンを使えば、歯や肌の美白効果、なめらか効果のほか、ちょっと細めに形を変えたり、筋肉の盛り上がりを強調することも簡単にできます。シミやニキビ、ほくろを他の肌の色に合わせることも、色合いを調整したり照明の当て方を変えたりもできます。もちろん赤目補正、ぼかし、フレームの追加などもOKです。

夢野:これはソーシャルメディア普及の影響が大きいということですか。
ツィドン:ええ、ソーシャルメディアは非常に写真中心ですから。人々は写真を共有し、オンラインで多くの人に初めて出会います。写真の多くはスマホで撮られていて、普通のカメラより精度が劣っているので、このアプリはそれを補うのです。

オフィスはイスラエル、社長は米国。東京にも出張

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フェイスチューンによる加工前(左)と加工後(編集部作成)

夢野:ところで、会社ができてまだ1年半、どのように創設されたのですか。
ツィドン:僕はエルサレムの最高裁に法務書記として勤めていました。法務書記とは、法学部を出た弁護士の研修課程で、裁判官のために働き、裁判所の法的な仕事をアシストする法律の専門家のことです。それぞれの裁判官には毎年2人の法務書記が付きます。
その最高裁の建物が、ヘブライ大学のキャンパスの近くにあったんです。そこでGoogleやAdobe、Microsoftのリサーチの経験を持ち、コンピュータサイエンスの博士号を目指している4人と出会いました。それで意気投合して、この会社を始めたんです。もともと僕は、最高裁での仕事の先には米国の大学への進学も視野にあったんですが、スタートアップにも興味を持ち始めていて。まあ、そういうことで4人のうちの3人は博士号をドロップアウトせざるをえなかったんですけど。

夢野:博士号断念について、後悔なさっている方はいませんか。
ツィドン:後悔ですか。いや、ないです。これだけ事業がうまくいってるので、やりがいがありますから。

夢野:現在オフィスはエルサレムで、ツィドンさんだけがニューヨークに住んでいらっしゃるそうですが、どうしてですか。
ツィドン:僕はニューヨークからライトリックス社の経営を担当しています。もちろんオフィスとは毎日話をしてますけど。これから世界的な会社に育てていきたいので、アメリカから経営することにしました。
イスラエルに拠点をおくことにはそれなりの利点はあるのですが、世界的にソフトウェアを販売するには、ビジネスの中心地に足場を置かないといけません。アメリカは大きな市場で、僕たちがよく理解している取り組みやすい市場です。また僕たちは必要に応じて、欧州やアジアにも頻繁に行っています。これまでで一番エキサイティングだったのは、今年の初めに行った東京への旅でした。

最初は「どうせ成功するはずはない」と思われていた

プログラミングをする男性

プログラミングをする男性

夢野:スタートアップというと、数多く起業するものの、最初の1年でダメになってしまうケースが多いのが実情と言われています。その原因には、技術はあっても企業としての経営基盤があまりないということが挙げられますが、その点、経営のことまでしっかり考えていらっしゃるのは頼もしいですね。これからシリコンバレーに進出もあり得ますか。
ツィドン:うーん、まだです。今のところ僕は東海岸にとどまってます。

夢野:エルサレムのオフィスの写真を見せていただいたんですが、イスラエルの会社はみんな仕事中足を机の上に乗せている、わけではありませんよね。
ツィドン:(笑)いや、それはないですけど、やはり彼らはコンピュータ開発という仕事柄、かなり長時間集中して働いているので、こういうシーンも許されると思います。

夢野:何かライトリックス社らしいエピソードがあったら、教えてください。
ツィドン:たくさんありますけど、僕たちは2013年に設立してから、18か月で従業員も18人まで増えました。現在まで外部資金ゼロで、純利益だけで運営してきました。最初は名もないし、資金援助も受けずに(イスラエルでは国が積極的にスタートアップ企業を資金援助しているにもかかわらず)どうせ成功するはずはないと周りから見られていました。
でもフェイスチューンは、2013年のApp Storeベストを含め、Apple、GoogleやMicrosoftに何度も特集されていますし、iOSアプリには数千以上のレビューが寄せられ、米国での平均ユーザー評価(5点満点中)4.8を維持しています。
誰も僕たちが成功すると信じていなくても、僕たちはここまでやってきた。それが「周囲にどう見られようとも、現実に挑戦して自分の道を切り開いていく」という一番イスラエル的な、僕ららしい姿勢だと思います。

日本の「ライン」とは補完的関係

オフィスで働くスタッフたち

オフィスで働くスタッフたち

夢野:それでは、この先の展望は。次の製品開発もお考えですか。
ツィドン:はい、いろいろ考えています。まだそれがモバイルアプリになるかどうかはわかりませんが、今はモバイルが何と言っても主流です。日本は今モバイルソフトの使用率で米国を抜いて、世界一位になりました。だから日本市場には断然興味を持っています。ただ日本では日本独特のやり方が守られていると聞いていますので、それも勉強したいと思っています。

夢野:日本ではLINE(ライン)が主流ですが、ご存知ですか。
ツィドン:はい、もちろん知っています。ラインは情熱をもったチームに作り出された驚くべき製品だと思います。ラインはソーシャルネットワーク/メッセージのカテゴリーの製品ですので、フェイスチューンとは相互補完的といえるでしょう。
コミュニケーションのプラットフォームとして、ラインのユーザーはFacebookのユーザーとよく似ています。ラインは人と人とをつなげるビジネスをしています。僕たちは人々の創造性を可能にするビジネスですから、コミュニケーションの分野とは一緒にやっていけると思いますよ。

(インタビューを終えて)
ライトリックス社は、Facebookのモバイルユーザー取得の事例研究や、Facebook F8カンファレンスでも紹介されています。フェイスチューンは、AppleやGoogleのApp Store/Google Playに何度も紹介され、Best New Apps、Photography 101、Photography Eessentials、Best of 2013などのコレクションにも登場しました。Microsoftは今年の初めバルセロナで開かれたモバイル世界コングレスで、Windows Phone用のフェイスチューンを紹介しました。
ツィドン氏の言う「周囲が何と言おうと、自分の信じたことを追及する」という姿勢は、イスラエルでは子供のころから培われていることです。新しい試みに対して、他人は最初理解しなくても、「3日続ければ、みんなそれをあなたのやり方だと受け入れるだろう」ということわざがあるくらいです。
既存のものに挑戦しなければ、進歩は生まれません。それがイスラエルにこれだけ多くのスタートアップが生まれている要因の一つと言えるでしょう。(夢野響子)

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