職場環境は「上司の考え方」で変わる 無理を通せば悪循環が止まらない
ホテルは24時間365日、休みなく動く業界ですが、社員全員が常に休みなく働いているわけではありません。二交代もしくは三交代のシフト制で勤務しています。
とはいえ、事業所は24時間常に開いており、誰かしら働いている環境なので、残業をしようと思えばいくらでもできる職場環境です。そのため、支配人がどのような人かによって、労働環境が大きく変わってきます。(文:ユズモト)
最初の支配人は「さっさと帰ろう!」が口癖
私が入社後に配属された最初の事業所から、別の事業所に転勤したときのこと。新しく赴任したホテルの労働環境が、前の職場とあまりにも違いすぎて衝撃を受けました。
以前いた事業所は残業のほとんどないところで、支配人は「さっさと帰ろう!」というのが口癖でした。定時になると、いそいそと次のシフトの人に引き継ぎを始め、帰る用意を始めます。残って仕事をしていると、
「それ明日でいいよ!」「他の人に引き継いで帰りな!」
と声をかけてくれたので、常に割とすんなり帰れました。社員やアルバイトのシフトの希望を尊重し、どうしても休みたい日には休ませてくれました。
そんな職場で働いていた私は、「うちのホテルはとても働きやすいな」と思っていました。しかし転勤が決まり、別の事業所で働き始めたとき、それは全ての事業所にあてはまることではないということを思い知らされたのです。
転勤先の支配人は「私生活よりも仕事を優先させて当然」という考えを持つ人でした。始業時間より早く来て、終業時間より遅く帰るのは当たり前。社員が仕事を済ませて定時に帰ろうとすると、「え、もう帰るの?」と小言を言います。
ずっと前から希望休を出していても、「人が足りていないから」という理由でその日に容赦なくシフトに入れられる。社員だけでなく、パートやアルバイトにも希望しない日の勤務をさせたり、残業させたりしている光景もしばしば見られました。
ダラダラ残業強いる上司が招いた「悪循環」
こんな職場に転勤してしまってからは、その日の仕事が終わっていても「何だか帰りにくいなあ…」と、何となく事務所に居座るのが日課になりました。転勤前とは室数も従業員数もほぼ同じホテルでしたが、残業時間だけが大幅に増えたのです。
それでも職場の全員がそんな感じで働いていたので、残業を嫌がる私が甘いのかなと思っていたある時、パートさんが何名か立て続けに退職することになったのです。
理由はそれぞれ「家庭の事情」など当たり障りのないものでしたが、本当のところは「帰りにくい環境が嫌だったんじゃないかな」と私は思っています。これをきっかけに、そのホテルの労働環境はどんどん悪化していきました。
「(1) 上司が無理な職場環境を作り出す→(2)嫌気がさしたパート・アルバイトが辞める→(3)社員の負担が増える→(4)残業が増える→(5)それでも手の届かないことが発生し、パート・アルバイトに負担がかかる→(6)また辞める→…」
という負の連鎖ができあがっていきました。そして、最初は「何となくダラダラ残業をしていた」のが、いつの間にか「残業をしないと回らないから残業する」という状況になってしまったのです。
その後、状況が改善する前に、私はこの事業所を離れることになったので、この事業所がどうなったのかはよく知りません。ただ、職場を離れられることになったときは、心から「良かった…」と思ってしまったのでした。
いまでは自分も「早く帰ってね!」が口癖に
この2つの対照的な職場での勤務経験を経て、私は「職場の環境というのは、同じ会社の中であっても、上の人の考え方次第でガラリと変わるものだ」ということを実感したのでした。そして「無意味に残業をしていても、いいことがない」ということも。
また、この経験から「自分も後輩をさっさと帰らせてあげられる先輩になろう」と決意した私は、いまでは会社の後輩から「『早く帰ってね』が口癖ですよね!」といじられるほど、退社時間を気にする人になっています。
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