厚労省が「過労死防止大綱」改定案を発表 勤務間インターバルを推進、2020年までに有休取得率70%を目指す
厚生労働省は4月24日、過労死を防止するための対策をまとめた「過労死等防止大綱」の改定案を発表した。2020年までに有給休暇の取得率を70%以上にするなどの数値目標を設定したほか、勤務間インターバル制度の推進などを盛り込んだ。
現在、フルタイムで働く人のうち、月末1週間に60時間以上働く人の割合は12.1%(2017年)となっている。同省はこの割合を2020年までに5%以下にするとしている。
メンタルヘルス対策に取り組む企業を8割まで増やす
また、2016年の有給休暇取得率は49.4%に留まっており、正社員の約16%は有休を1日も取得していない。そこで有給休暇取得率を2020年までに70%以上とすることを目標とした。
勤務間インターバル制度の導入も推進する。すでに導入している企業はわずか1.4%で、導入を予定・検討している企業も5.1%に留まっている。9割以上の企業は検討すらしていないのが現状だ。
しかし同省は、インターバル制度が「働く者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要である」と指摘。欧州連合(EU)加盟国では、1日24時間につき最低連続11時間は休息時間を確保するよう義務付けていることを参考に制度の設計を行う。
職場でのメンタルヘルス対策にも取り組む。仕事や職場に関することで強い不安やストレスを感じている人の割合は59.5%(2016年)に上る。内容としては「仕事の質・量」が53.8%で最も多く、「仕事の失敗、責任の発生等」が38.5%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」が30.5%と続く。
こうした悩みを相談する先がある人は71.2%に上っているものの、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は56.6%に留まっている。同省は2022年までに、相談先がある人の割合を9割に引き上げ、対策を実施する企業を80%にまで引き上げることを目指す。
情報通信業や建設業では、取引慣行自体を見直す
大綱では、個々の企業単独での取り組みには限界があることも指摘した。例えばIT企業では、「システムトラブル等の緊急対応」や「厳しい納期」が長時間労働を引き起こしているため、「急な仕様変更」といった取引慣行自体を見直す必要がある。
建設業においても、適正な工期設定や賃金水準の確保、休日の確保など発注すやの理解と協力が欠かせない。関係者向けに作成された「適正な工期設定等のためのガイドライン」の周知・徹底等を求めていくという。
大綱は、「過労死等防止対策推進協議会委員」が作成した。委員は、労使の代表や弁護士、過労死遺族らで構成される。2015年に一度策定され、今回発表された改定案が今後閣議決定される見込みだ。