田舎から東京に引っ越して後悔したこと「夏が暑すぎ」「満員電車のストレスが想像以上にヤバイ。イライラしやすくなった」
常々思うことがある。東京に生まれ育った人間の、なんと恵まれていることか。
地方も地方、クソ地方の生まれの僕にしてみれば、東京はまさに花の都。その都にはチャンスが溢れている。良い学校、良い就職先、何をするにも地方にいるより、数万倍のチャンスがある。
たまにこういう話を東京育ちの奴にすると「いや、言うほど良くねえっすよ」とか返されるが、バカ言っちゃいけない。本当に何もない、虚無の世界から上京する人間にとっては、東京ほど成功の鍵が転がっている土地はない!
ただ悲しいことに、田舎の人間が都会に夢見て上京しても、何かと後悔することは多いようだ。(文:松本ミゾレ)
「臭い。人が冷たい。うるさい。ゴキブリ。治安が悪い。色々と値段が高い。特に駐車場」
先日、2ちゃんねるに「東京に引っ越してきて後悔したこと」というスレッドが立った。スレには実に多くの田舎出身者たちが、東京で直面した困難について書き込んでいる。いくつか、田舎者目線で琴線に触れたものを紹介してみたい。
「満員電車のストレスが想像以上にヤバい。かなりイライラしやすくなった」
「臭い。人が冷たい。うるさい。ゴキブリ。治安が悪い。色々と値段が高い。特に駐車場」
「夏が暑すぎ」
「田舎 耳を澄ませば 自然の息吹が聴こえる 都会 耳を澄ませば 隣のイビキが聴こえる」
とまあ、こんな具合である。
僕は九州・宮崎の出身であるので、満員電車に初めて遭遇したときは肝を潰した。それなのに都会の人間は、毎日この満員電車に乗って家と職場を行き来しているのだから、その精神的な強さには圧倒されたものだ。
それと、夏が暑すぎるという意見にも賛同できる。こちとら南国の宮崎出身であるため、暑さにはある程度耐性があると自負していたが、都会の灼熱のコンクリートジャングルに迷い込んで、ほとほと自分はせいぜい温室育ちなのだと理解した。あんなに東京の夏が暑いとは思わなかった。みんなよく平気な顔をしていられるものだ。
あ、そうそう。明らかに東京はゴキブリとネズミが多い。これもまた、東京という都市に嫌悪感を抱いてしまう原因になっている。地下は整備され温かく、飲食店の数も田舎の比ではないので、彼らにとってみれば東京は理想郷なのだろう。
毎日が祭りのような東京の環境、田舎出身者のキャパシティでは受け止めきれない?
先ほど紹介した書き込みの中に「人が冷たい」の一文があった。これについては個人的には誤解だと思う。というのも、東京には結局地方出身者も大勢暮らしているので、道に迷ったとして誰かに頼っても、話しかけた相手が元田舎者であるので明確な回答を得られないパターンが、経験上多かったからだ。
まだスマホのGPS機能もなかった2005年頃、僕は都内に住んでいたが、道に迷うのはしょっちゅうであった。そしてまた、往来する人々に目的地までの道のりを聞くのも日常の一コマだった。
このとき、明確な回答ができない人に対して、意地の悪い僕は都度「地方出身者ですか」と聞いていたんだけど、やっぱりそういう人は元々田舎の育ちで地理に明るくなかったのだ。だから都会の人が冷たいというのは誤解で、都会に住んでいる田舎者が結構多いというだけのことなんだと思っている。
まあそれを差し引いても、田舎者には都会の暮らしって本当に別世界だ。なんせ夜は真っ暗な帳が下りるのが当然の環境から上京した者にとって、東京の夜はまさに極彩色。昼夜問わず街には人が出歩いている。こんなのは田舎で言うところの、年に一度の祭りのような喧騒だ。
その喧騒が365日いつでも再現されているというのは、やっぱり田舎育ちのキャパシティでは対応しきれない部分があるのである。
僕なんかも、住んでいたマンションの向かいの中国マッサージのネオンが眩しくて、遮光カーテンを買うまでの1ヶ月ほどろくろく眠れなかったし。じゃあ閑静な住宅街に住めば解決するぞと言われても、そんな銭はねえし。
田舎で生まれ育った人間には、結局のところ、田舎の環境こそが一番”水が合う”ということだろう。僕らは死ぬまでシティボーイにはなれないのだ。