福島市に設置されたヤノベケンジ氏のサン・チャイルド、海外メディアも報道 市長は「まちづくりにプラスと判断した」声明発表 | キャリコネニュース
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福島市に設置されたヤノベケンジ氏のサン・チャイルド、海外メディアも報道 市長は「まちづくりにプラスと判断した」声明発表

福島県福島市のJR福島駅近くに設置された、現代美術家のヤノベケンジさんの作品「サン・チャイルド」が依然物議を醸している。

胸に「000」と表示されたガイガーカウンターのついた防護服を着た子どもが、ヘルメットを脱ぎ、空を見上げるこの作品は、原発事故からの復興と未来への希望を表現しているというが、市民からは「放射線がゼロなどありえない」「福島は防護服が必要なのだと誤解させる」といった声が相次いでいる。

海外からは「これほどまでに悪いPRもないよね」という声も

ヤノベケンジ氏のサイトに掲載されているサン・チャイルドの画像をキャプチャ。

ヤノベケンジ氏のサイトに掲載されているサン・チャイルドの画像をキャプチャ。

BBCガーディアンジャパンタイムズなどの海外メディアも、一連の騒動を報じている。BBCのフェイスブックには「これほどまでに悪いPRもないよね」という声が寄せられている。英語圏の掲示板redditでは、作品そのものへの「不気味だ」という声や「胸の部分が本物の線量計だったら格好良かったのにね」というコメントがあった。

8月10日に作者のヤノベさんは謝罪声明を発表。福島市長の木幡浩氏も13日、市の公式サイトで声明を発表したが、騒動は収まっていない。

木幡市長は、市のサイトに掲載した声明で、サン・チャイルドの設置は、「精力的に復興への活動をされているかたから作者ヤノベケンジ氏の寄贈の意向を聞き受け、福島市において受入れを決め、最終的には一般社団法人ふくしま未来研究会様からご寄贈いただいた」と説明。その上で、

「私は、現代アートの愛好家ではありませんが、空を見上げ立ち上がるその姿には、困難に立ち向かう力強さと希望を感じます。また、右手に持つ小さな太陽は次世代のエネルギー問題が解決される『希望』を象徴しており、これらは福島復興の姿と重なり、私たちを励ましてくれるものと思いました」

と自身の思いを語った。「『防護服』のようなものを着ていたり、『カウンター』のデザインがゼロであることは、あくまで『原子力災害からの安全』の象徴であって、風評等に与える影響は限定的」と、大きな批判が出ることは想定外だったようだ。

市長「県内イベントでの実績や集客力を考えると、市民にも受け入れられると思った」

サン・チャイルドは、2011年の東日本大震災をきっかけにこれまで3体作られた。福島市の教育文化複合施設「こむこむ」に設置されたのはこのうちの1体だ。ヤノベさんが6歳から暮らしていた大阪府茨木市の、阪急電鉄南茨木駅前にも1体展示されている。

また、2012年に福島空港で開催された「福島現代美術ビエンナーレ」では、同作品が、他の作家の作品と一緒に展示されたこともある。その時は大きな批判が出なかっただけでなく、イベント終了後も2013年3月まで空港に置かれるなど、むしろ好意的な反応があったとも言える。

ネットではこうした背景を受け、「空港のときには批判がでなかったのに今回はなぜなのか」という意見もある。市長も声明の中で「福島空港等での実績や近年の現代アートの集客力等を考慮すれば、市民の皆様にも受け入れていただけ、子どもたちやまちづくりにプラスになるものと判断した」とも言っていた。

ただ、空港は市内からのアクセスも悪く、多くの市民にとって非日常の場所だ。反面、JR福島駅は市の中心部にあって人通りも多い。展示場所になった「こむこむ」は、施設内の図書館や自習室を利用する児童・生徒、大人のほか、合築されているNHK福島放送局の食堂の利用者など、多くの市民の日常にある。

震災から7年経ち、原発事故や震災を巡る様々な言説に苦しんだ記憶も薄くなり、日常を取り戻し穏やかに生活している中で、原発事故や震災を思い起こさせる巨大なオブジェが突如現れ恒久的に設置されるとなれば、市民が複雑な心境になるのも無理はない。

木幡市長は作品の今後の扱いについて、「市民の声を聞いた上で検討したい」と述べるに留まっている。

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