幸福感を決めるのは学歴より収入より「自己決定」 「進学や就職を自己決定すると満足度高くなり、幸福感も高まる」
神戸大学と同志社大学の研究者チームは8月28日、幸福感に関する調査結果を発表した。調査は今年2月、インターネットで実施。全国の20歳~69歳の男女93万人に調査票を配布し、有効回答数は約2万件だった。
世帯年収、学歴、自己決定度、健康、人間関係の5つが幸福感にどう影響しているかを分析した結果、健康と人間関係に次いで、自己決定度が幸福感に影響を与えていることがわかった。学歴は幸福感に影響を与えていなかった。研究チームは
「自分で人生の選択をすることが、選んだ行動の動機付けと満足度を高める、それが幸福感を高めることにつながるのであろう」
とコメントしている。
自己決定する人は大学や職業等のミスマッチの可能性が少ない
自己決定度は、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」の自己決定に関する質問から作成した。これらの質問で、「自分で希望を決めた」と回答した人ほど不安感が低く、前向き思考な傾向があった。
研究チームは論文の中で、
「自己決定をする人は、大学や職業等のミスマッチの可能性は少なく、たとえ失敗しとしても、自らが別の選択肢を試みることが可能であり、予め、それを用意しておくことも可能であることが不安感を低くしていると考えられる」
と分析している。
世帯年収も幸福感に影響を与えてはいるものの、自己決定度より影響は小さく、年収増加率ほどには主観的幸福感が増えないこともわかった。幸福感の増加率は1100万円で頭打ちとなった。
中年期は仕事のストレス、子供の教育負担などで幸福感減少 海外と同じ傾向
年代別に見ると、35~49歳で幸福感が下がっている。中年層で幸福度が下がる現象は海外の調査でも見られていて、イギリスでは男女ともに44歳前後、アメリカでは女性が40歳前後、男性は50歳前後で下がっている。
日本では英米より若い30代で幸福度が下がり、50代以降で最も高くなっている。この理由について、研究チームメンバーの西村和雄氏(神戸大学特任教授・数理経済学)は、「海外の調査結果との比較では、微妙な違いが絶対的なものかは1回の調査ではわかりません。海外の研究結果との違いよりも、海外の研究結果との類似点に意味があると思います」と述べた上で、「個人的な考え」として、
「中年期に、仕事のストレス、子供の教育などの負担が重荷になって幸福度が下がると思いますが、日本は年功序列で、若い人の給料が低いため、それを速めているのではないでしょうか。50代以降は、退職するまでは収入も高い一方、子育てが終わり、自分が何かを始めることが可能な時期だからということではないでしょうか」
と述べていた。