男女差別の議論はなぜややこしくなる? 「差別を主張する人と男女区別を主張する人で前提ズレ」北条かやが指摘
東京医科大学の問題を始め、男女差別の議論が活発に行われている昨今。ただ、中には「差別ではなくて区別だ」と男女差別に対して男女区別を主張する声も少なくなく、議論が混乱しがちだ。
そんな中、8月31日に放送された『モーニングCROSS』(MX系)に、コラムニストの北条かやさんが出演し、男女差別と男女区別の違いについて語った。(文:石川祐介)
「女性医師が増えすぎると現場が困る」と違う議論になる
まず北条さんは「東京医大の問題に関して、男性・女性差別をもうちょっと広く考えてみたいんですけど」と前置きし、「よく『差別じゃなくて区別だよ』っていう言い方があるんですね。差別派と区別派のすれ違いっていうのが起きがち」と指摘。
「まず『差別だ』と言う人は、男女をそもそも同じカテゴリーに入れる前提として考えるんですね。なので、同じカテゴリーに男女がいるのに、受験生として平等なのに、『扱いが不当だ』ということを差別派は言っている」
「一方、区別派というのは、東京医大の問題に関して言うと『男性医師と女性医師の役割が違うのだから、女性医師が増えすぎると男性医師の役割を果たすべき男性医師がいなくなってしまうので、女性受験生を落とそうとか3浪以上の男子受験生を差別しようっていうのは仕方ないよね。それは区別だから』っていう論法なんですよね」
差別派と区別派の主張の違いを解説し、差別派と区別派は前提がズレているため、議論が噛み合わないケースが多々あると話す。
「区別派の方にツッコまれると、男女の差をいちいち検証する必要が出てくる」
北條さんは昔からジェンダー問題について言及していたが、「区別派の人と全く議論が噛み合わないどころか、負けることが多いなっていうのがよくある」と区別派に論破されることも少なくないと話し、その原因について
「区別派の方は『男と女はそもそも役割が違う』という大前提に立っているので、こちらが『男女は同じカテゴリーに入る』って言うと、『じゃあ男女って全く差がないってことですか?』っていう議論に持ち込まれるんですよ。(男女の差を)区別派の方にツッコまれると、男女の差をいちいち検証する必要が出てくる」
と分析。性差はどう見ても存在する。それは差別派も当然認めなければいけないため、 “男女区別”を一度は容認せざるをえない。区別派はそこにツッコミを入れ、議論を優位に展開しようとするのだろう。
「本来は男女差別の解消とか、男性差別も含めての性による不当な扱いを無くそうっていう考えだったのに、いつの間にか男女の性差があるかどうかっていう問題に」
男女差別の問題の解決策を議論したいのに、性差の有無に論点がすり替わってしまうという。男女差別を巡る議論を有意義なものにするためには、まず差別と区別の定義を明確にし、前提の齟齬がないようにするのが大切のようだ。