部下が辞めない!メンバーの内発的動機付けを可能にする「サークル型組織」の作り方【前編】
前回の記事で部下が急に辞めるといった状況を回避するためには、多様化する部下の思いに対応したオーダーメイドマネジメントが必要であり、そのカギは内発的動機付けにあるといった話をしてまいりました。
そして、内発的動機付けを可能にする組織として『サークル型組織』が今後求められることをお伝えさせていただきました。今回と次回は2回に分けて、その『サークル型組織』をどのように作っていくのかについて説明してまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
サークル型組織には、チームの皆が惹きつけられる組織の目的が必要
「目的」と「目標」の違いはなんでしょうか。目的は「的(まと)」であり目標は「標(しるべ)」です。目的とは目標の先にあるものになります。
皆さんの組織には経営理念がありますか?
経営理念に裏付けられたビジョンはありますか?
ビジョンに繋がる行動指針はありますか?
上記すべてはそろっていないものの、何かしら形になったものがあるのではないかと思います。多くの場合、経営理念が目的、ビジョンが目標になっていきます。そして、もう一つ質問です。その形になっているものは、部下の皆さんに浸透しているでしょうか?
この浸透しているといったことがポイントです。お題目のように並べられているだけでは従業員の内発的動機付けには繋がっていきません。従業員の内発的動機付けに繋げていくためには、組織の目的と目標を身近に感じて仕事をしていく必要があります。そして、身近に感じていただくためにはもう一つの工夫が必要です。
組織の目的、目標を身近に感じるために、2~3年後の組織の「ありたい姿」を作る
目的を達成するために、組織の将来のありたい姿として目標があります。その目標に対して従業員が内発的に動機付けされればいいのですが、組織に掲げられている目的や目標は従業員からすると遠すぎて、なかなか自分事化することが出来ません。
人間の脳はあまりに遠い未来のビジョンに動機付けされません。遠すぎてそのビジョンを頭の中に鮮明に描くことが出来ないからです。逆にそのありたい姿を視覚情報や音情報、その際に感じる感情を伴って頭の中に鮮明に描くことが出来ると、動機付けされていきます。なので遠すぎない2~3年後くらいを見据えた組織のありたい姿を考え、従業員に浸透させていく必要があります。
私はそのありたい姿を「組織のみんながワクワクする遠すぎず近すぎない組織のありたい姿」と定義しています。そのようなありたい姿は以下のようなステップで従業員を巻き込みながら作っていくことが浸透に繋がります。
組織の方向性に「自分の声が反映されている」と部下が感じることが重要
まずは管理職自身でこの5つのステップを行って、ある程度の方向性を決めます。そしてミーティングの場を用意し、できれば部下全員と5つのステップそれぞれについて話し合って決めていきます。
STEP1
「我々の商品やサービスは、誰のどんな思いを叶えていくのか?」
自分たちの商品やサービスを喜んでくれる顧客に優先順位をつけるとしたら、一番上になるのはどんな顧客でしょうか。
STEP2
「お客さんが抱えている真の課題は何ですか?本人すら気付かないものは?」
目に見える課題ではなく奥にある本当の課題は何でしょうか。ニーズと読み替えることも可能です。
STEP3 「他の組織に負けない、自組織の強みや特徴は何か?」
自組織らしさといったコンセプトを考えていきます。
STEP4
「上記のコンセプトを届けるために、どんな行動を起こしていくのか?」
自分たちのチームらしさを実現する行動はどのようなものでしょうか。
STEP5
「これらの組織活動を通して、お客さんからのどんな声を望みますか?」
自分たちはどのような価値を提供し、どのような声に喜びを感じるでしょうか。
そして、この5つの質問から出てきたキーワードを抽出し、部下と一緒に自組織の2~3年後のありたい姿(中期ビジョン)を作成していくのです。
その上で、管理職の皆様が発表した「ありたい姿」に、部下の声が反映されていると部下それぞれが思うことが大切です。自分の声が反映されている「ありたい姿」だと思えば部下のモチベーションは向上していくからです。
以上、今回はサークル型組織の中心である組織の目的に動機付けされるための流れ「目的→目標→ありたい姿(中期の目標)」を説明させていただきました。次回は部下それぞれが尊重されていることを感じる為の工夫を解説してまいります。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。