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上から押さえつける教育が上手くいかない理由 スパルタ式と自主性尊重の教育の違いから考える

上から押さえつける教育が上手くいかない理由

上から押さえつける教育が上手くいかない理由

昨今、夏の甲子園大会では、どこが強い、あの選手はどうという話題と合わせて「炎天下での連投」など昔では当たり前だった光景が問題視されることが増えました。

もちろんそれは「選手のことを思って」の警鐘であることには間違いないですが、ではあの上から押さえ込み、囲い込みまくってたスパルタ教育は選手のことを思っていなかったのか?と思うと何かが引っかかるのです。

金八先生やスクールウォーズの滝沢監督が選手のことを思っていなかったのなら、もうあの時から「それっておかしいんじゃないの?」という論調はあったはず。ではなぜ、今この時代にあの熱苦しい愛のスパルタ教育が受け入れられなくなってきたのか?そしてその教育がどうしてうまくいかなくなってきたのか?を考えてみたいと思います。(文:ちばつかさ)

スパルタ式で育てられると「罰が怖いから行動する」になる

スパルタ教育は古代ギリシアの都市スパルタが語源になっています。屈強さで知られるスパルタ軍では尋常ではない厳しい訓練が行われていたと言われています。おそらく、命をかけての戦いの時に「楽しくやろー」「やりたいことやろー」なんて言っていられないわけです。笑っている間に剣で切られたら終わり。厳しく教育するからこそ、極度の緊張感を保ちながら戦いに臨めるのです。

その教育は軍国主義の時代には大いに役立ったのでしょう。1つの命、国家という命を守るためには極度の緊張感の中で戦わなければいけない。瞬発的に成果をあげたのであればスパルタ教育が重宝されるのにも少しだけ納得がいきます。

でも、日本では戦争が終わり高度経済成長期へと突入しました。その過程で国を守るためのスパルタから、「子どものためを思うからこそ」というスパルタへと変わったのかもしれません。ただスポーツは元々娯楽が起源。楽しむために作られたスポーツにはそもそもスパルタ式が必要ないはずなのです。

『人を伸ばす力』で知られる心理学者エドワード・L・デシは、人が何かをする”きっかけ”となる動機には、誰かに言われて行う外発的動機と、自らやろうとする内発的動機の2種類があると言います。過去に重宝されたスパルタ教育は外発的動機付け。最近注目される自主性を尊重する教育は内発的動機付けの教育として分けられるかもしれません。

では、この2つの正反対の教育を受けた人はそれぞれどう成長するのでしょうか。懲罰的で厳しいスパルタ教育は人を外発的に動機付け押さえ込みます。押さえ込み囲い込まれた人間は、厳しさの中で”渋々と”行動します。また、報酬などのきっかけも外発的な動機になり「ムチで叩かれるから行動する」「報酬をもらえるから行動する」と考えるようになります。ケツを叩かれるのを恐れたり、目の前の人参に食いつくために人はスパルタ教育に耐えるのです。

一方、内発的動機付けで動く人間というのは、自分の内面から起こる「やりたい!」「こうなりたい!」という動機で動きます。自分で行動するからどんなことにも自ら耐えようとし、内発的な動機が発動している間はずっと行動が続きます。

果たして何事も平和になってきた現代日本にとって、どちらの動機付けの教育が役立つのか?と言うと、時代の流れに沿って考えるとスパルタ教育が当てはまりづらくなっているのはなんとなく感じることです。

ケツを叩かれなくなった後も走り続けられるのか

この1つの構図が現実的に存在します。テレビ番組でも取り上げられた、自主性を重んじる東福岡高校ラグビー部対スパルタ教育を貫く筑紫高校ラグビー部の対決。19年連続で東福岡が県大会で優勝し花園へと進んでいます。ただ、それでもスパルタの筑紫高校も毎回決勝に上がるような強豪校です。

そう考えると、スパルタも自主性もどちらも結果を出しているのです。厳しい指導を受けたボクシング亀田三兄弟も、自主的に成長する大谷翔平選手も結果を出している。だからこそ今の時代でもスパルタが根強く残っているのかもしれません。

では、なぜ結果が出ているのにスパルタ教育は右肩下がりで人気がなくなってきているのか? その答えは結果の先にあるかもしれません。つまり、押さえ込みから解放された時、囲い込みから解き放たれた時、ケツをムチで叩かれなくなった後どう走るのか?という問題です。

自主性を重んじ、押さえ込まない指導や教育は内発的動機を発動させそれが長く続く。それに比べてスパルタ式では、ケツを叩かれなくなってしまうとそこでもう走れなくなることがあるのです。

教育や指導法に確固とした「正解」はないのかもしれません。でも、どれでも選べるのなら自らすすんでスパルタを選ぶ人はいないはずです。教育や指導法の過渡期である今。そして命の危険を感じられなくなった今の時代、長続きのしない外発的に動機付けられるスパルタ指導は徐々に衰退していくのかもしれませんね。

筆者近影

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【筆者プロフィール】ちばつかさ

柔道整復師、メンタルケア心理士、元プロ野球独立リーガー。東京と福井で投げ銭制の接骨院「小道のほぐし接骨院」を経営しのべ10万人近くの体と心と向き合う。野球経験を活かし都内で”野球を教えない”野球レッスンも運営。【公式サイト】

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