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シニア層の積極採用で若手講師もスキルアップ!?人材確保に苦戦していた学習塾「浜学園」の新たな取り組みとは

第4回ホワイトアワードで「ダイバーシティ&インクルージョン」を受賞

第4回ホワイトアワードで「ダイバーシティ&インクルージョン」を受賞

2019年3月、浜学園が「ホワイト企業アワード」(JWS/日本次世代企業普及機構 主催)で「ダイバーシティ&インクルージョン」を受賞した。

浜学園は、1959年に創立した、中学受験を目的とする小学生向けの学習塾。大学生のアルバイト確保に苦戦するなか、その打開策として、「60歳以降のシニア層を積極的に採用したこと」が今回の受賞につながった。なぜ浜学園はシニア層の活用に目を付けたのだろうか。人事部担当部長の國友弘さんに話を聞いた。

少子高齢化の影響で人材確保に苦戦。そんな状況を打破する施策とは

ーー受賞に至った理由を教えてください。

当社は関西において、「最難関中学受験に強い塾」として認知されていますが、学習塾業界は当社に限らず大学生アルバイトの比率が高く、年間を通じて採用が必要です。また、業界の特徴として優秀な学生が多く、他社からの引合いも強いため人材が流出してしまうこともあります。さらに、勤務時間が午後からという理由により、若年層の定着率が他業種と比較しても低いことが問題点です。

当社では講師を授業や教材作成の専門職とし、それ以外の事務・軽作業については講師以外の職員が分業にて行っているビジネスモデルとなっており、他社と比較し人手が必要です。

近年、少子高齢化の影響により若年層のアルバイトの採用確保が難しくなっており、採用費の増加が著しくなっていました。この様な状況を打破するため、若年層だけでなく人生経験豊かなシニア層を採用することを検討しました。

シニア層の付加価値として、若年層にはない人生経験に基づいた生徒・保護者対応も可能になることを想定し、ホワイト化の柱として、シニア層に当社内で活躍の場を設ける戦略を立てました。近年当社では他塾と連携の上、社団法人関西教育機構を設立し、今回の取組を塾業界全体で盛り上げる仕組みにしたいという強い思いもありました。

ーー具体的な取り組みをご紹介ください。

当社では、講師以外の職種にも多数の大学生アルバイトを雇っています。その職種の中で、軽作業及び生徒対応アルバイトを60歳以降のシニア層に依頼することを採用活動のスタートとして行いました。結果として、教師経験者や、会社社長・役員経験者等、人生経験豊富な方々を採用することができました。

学習塾は、勉強だけではなく生徒さんが安全に学べる環境づくりも必要です。生徒対応についても自身の子育て経験を活かして、子供同士による喧嘩等のトラブル対応や、保護者様との対応についても安心して任せることができました。シニアスタッフは大学生とは違い、社会人経験を経たことによる責任感もあり、急な欠勤等のトラブルも少なく、また仕事の勘所を掴むのが早いという特長があります。

例えば、シニアスタッフのスキルが存分に発揮されたのが、模試の試験監督業務です。模試の場では、生徒さんの意識をテストに集中させることが必要ですが、そのためには試験監督としてただ生徒の様子を見るだけではなく、教室全体を管理するスキルも必要となります。

シニアスタッフはこのような業務も安心して任せることができました。このように、シニア層の活躍の場を広げることが採用難の時代にもマッチしており、試験的に導入したシニアの方々の活躍によって当社の最重要課題としてシニア採用に本格的に取り組むこととなりました。

シニア層に活躍の場を!成功に導くための採用ポイントは

ーーこうした取り組みを行う際に気を付けたポイントはありますか?

各種施策を浸透化する際に、当社で特に心掛けている点は、最初の対象者の選定に気を付けることです。新しい試みを行う際は、導入時に失敗すると「やっぱり駄目だ」という空気が蔓延しやすいと思われます。

例えば、当社で初の育児休業取得者は、社内で多くの者から信頼される人物が取得してくれたことにより、その後の社内の育児休業取得者が増加する契機となりました。このことを成功事例として持っていたため、シニア採用についても初期メンバーについては、過去の経歴及び人物を見ながら信頼できる方を採用しました。

この初期メンバーが、次の採用説明会等でも自分たちの言葉で、採用応募者に対して自らの言葉で仕事について語ってくれることで、その話を聞いた優秀な人材の採用につながる好循環を作り出すことに成功しました。

今回のシニア層採用の取り組みは慎重に始めましたが、様々な経験を持った優秀な人材を確保できたという良い結果につながりました。採用者数を最優先することにせず、まずは次につながる仕組みとなるように注力した結果が、次々と良い方達を採用する流れを生み出せました。

ーー上記の取り組みを導入してから、成果があがるまでに苦労したポイントはありますか?

シニアの方々は若年層と比べ、以前のキャリアで多様な経歴を持った方が多く、以前勤められた会社では管理職として活躍された方からも多数の応募がありました。優秀な方々が多数集まった中で、どのような採用基準を設けることが適切かを、社内でも何度か議論をすることとなりました。

面接の場では、当社の教育に対する考えをお話し、生徒対応や教育方針に賛同いただける方を中心に採用することとしたため、優れた経歴をお持ちの方や能力の高い方であったとしても、当社の教育方針や理念に少しでも賛同いただけなかった方は、残念ながら採用を見送ることとなりました。結果としては、当社の理念に賛同いただける方が集まっていただけたと思います。

ーーこれまでの取り組みによって、社内・社外から感じられた効果はありますか?

シニア層採用に当たり、当初社員からは「自分よりも年齢の高い人をどのように育成すればよいかわからない」という声が、数多くあがりました。年齢によるギャップや、前職ではこうだったという意見をシニアスタッフからもいただくこともありましたが、人事が既存の社員とシニアスタッフの間に入りお互いの意見調整を行うことで制度の定着を図ることができました。

また、初期メンバーを厳選したことにより、2回目以降の採用にも積極的にシニアスタッフ自身が関わってくれることとなりました。初期メンバーが以降に採用されたシニアスタッフに対して自発的に指導を行う等、自立的な組織運営を行うことができました。

また当初シニアスタッフは、生徒や保護者対応を行う部署に限定して配属していましたが、採用回数を経るごとにその他の部署でも採用することを試み、システム部門において当該業務経験のあるスタッフを採用しました。結果として、そのシニアスタッフはシステム部門の中でも中心的な役割を担う程に貢献度が高く、現在では役職者として社員転換を行い、現在では既存社員の指導に当っています。

雇用期間に年齢制限を設けるべきかーー今後の課題

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ーー今後の課題・これから先目指す「取り組み」をお教えください。

シニアスタッフの体力・気力が続く限りは勤務を継続できるようにしていますが、雇用期間に年齢制限を設けるかが今後の課題です。高年齢者のため健康面でのリスクを考慮した上での検討事項となります。現在では年齢ではなく人物重視での採用となっていますが、体力面を判断できる採用基準を作り上げることが今後必要になる可能性があります。ただ、今働いているほとんどのシニアスタッフは、自身の子育て等の人生経験を活かして縦横無尽の活躍をして頂いており、個別対応で解決できる課題であるとも考えております。

今回の取り組みは、結果としてシニアスタッフがビジネスマナーを若手に教える等、プラスの働きを生み出しています。採用難の時代の中で、当社のビジネスモデルは通常の会社と比較し勤務時間が遅い等のデメリットもあります。しかしながら、働きたい方のやりがいが持てる職場に変え、福利厚生の強化等従業員が働きやすい環境づくりをさらに行っていくことにより授業員の定着と採用強化を行ってまいります。

※本記事は、受賞当時(2018年3月)のインタビューをもとに作成しています
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