「コミュ障」でも面接に受かるには? ギリギリ許される方法はこれだ!
人前に出ると極度に緊張し、うまくコミュニケーションが取れない……。そんな悩みを持つ人もいるでしょう。「コミュ障」の人が採用面接で思ったような対応ができないと、人生を左右しかねません。面接の場で許されるギリギリの方法について、人材研究所代表・曽和利光氏がアドバイスします。
コミュニケーションが苦手な人のことを、「コミュ障」と呼ぶことが若者を中心に定着しています。実際の障害の有無とは別の俗称ですが、日本人は対人緊張度の高い人が多く、コミュ障を自称する人もたくさんいます。
かなり訓練したのでいまでこそ何とかなっていますが、実は私もコミュ障でした。人と話がちゃんとできない。話をきちんと聞けない。言いたいことが伝わらない。人といるととても緊張してしまう等々。今でも家庭では話が通じないと、妻にいつも怒られています。
そういう人は、なべて面接など大の苦手ではないでしょうか。各種研究で分かっているように、面接はさほど精度の高い選考ではありません。しかし現状では選考における面接の比重は高く、面接が苦手なだけで世に出ていけない人がいるおそれもあります。
これはおかしなことだと思いますが、この慣習をすぐに変えることは難しく、応募者側で対策を考えざるを得ません。そこで今回は「コミュ障」の人たちが面接を突破するためにどうすればよいのか、考えてみたいと思います。(文:人材研究所代表・曽和利光)
まずは落ち着くこと
最初に必要なことは「いかに緊張せずに場に臨むか」ということです。いくつかの方法がありますが、一番効くのは「なんでもゆっくり」です。
呼吸をするのもゆっくり深呼吸。しゃべる速さもゆっくり、イスに座るのもゆっくり、立ち上がるのもゆっくり。そしてできるだけ動かない。手はおひざ。まるで太極拳でもやっているかのごとく、なんでもゆっくりと行動すれば、自然と気持ちは落ち着いてくるものです。
応募者がゆっくり事を進めることは、面接官にとってもありがたいことです。というのも、面接官は面接官で、質問を矢継ぎ早に繰り出すのは大変なことで、ゆっくり話してくれれば、次の質問をゆっくり考えることができて、いい質問につながります。
逆に、応募者が立板に水で話してしまうと、面接官が次の質問を考える間もなく終わってしまい、焦った面接官は「好きな食べ物はなんですか」など変な質問をしてしまうかもしれません。面接官も緊張しているのです。
それでも緊張してしまったら、「緊張してしまいました」と素直に言いましょう。緊張を宣言することで、自らの緊張を和らげる効果があると言われていますし、面接官もきっとケアしてくれるでしょう。
言いたいことを書いておく
面接で必ずこれだけは伝えたいということを、きちんと紙に書いておくのも有効です。ポイントやキーワードだけでよいので、手帳などに書いておきましょう。
最初に面接官に「お伝えしたいことを伝え逃さないように、メモを見てもよいでしょうか」と断って、目の前に手帳を広げて、面接官からの質問に答えても問題ありません。
なぜキーワードだけでよいかというと、文章にすると緊張すればどうしてもそれに頼ってしまい、結果、その文章を棒読みするという悪印象の行動をとってしまうからです。
コミュニケーションにおいては、当意即妙であることは大事なポイントです。用意してきたことを答えるのではなく、その場で聞かれたことに的確に答えるかで評価されます。用意してきたことが、その場で聞かれた質問にぴったりであればよいのですが、そんなことはなかなかありません。ですから、キーワードにしておくくらいがちょうどよいのです。
即興が無理ならプレゼン
キーワードだけでは心細く、即興で話をするのは無理という方は、やや違和感を持たれるのを覚悟で、相手に見せるためのプレゼン用の書類やシートをオリジナルで作ってもよいでしょう。会社が課す書類ではなく、自分で自分の伝えたいことをまとめる自己紹介書類のようなものです。
「すみません。まとめてきたものがあるのですが、そちらを使って自己紹介してもよいでしょうか」と断ってから、書類を渡して、それに基づいてお話をするというのであれば、ギリギリ「あり」ではないかと思います。
プレゼンシートを作るだけでもやや奇異なので、ふつうに文章を書くのがよいと思います。しかし、長文は相手に「圧」を与えるので、簡潔に箇条書きでまとめましょう。面接中に長文はなかなか読めませんから、面接中にこちらから勝手に出す書類は簡潔さが重要です。
もちろん、話下手なのかなとは思われますが、口がうまくないとダメな仕事でなければ、そう思われたからといって、即合否につながるわけではありません。問題は中身です。
真顔でふつうにしていればよい
「コミュ障」の方は緊張を隠そうとするあまり、ひきつった笑顔になってしまうことも多いです。しかし、それは完全な逆効果です。たまに、おばあちゃんが死んだ話をするような時にも笑顔でするような人が面接ではいますが、当然ながらそこは「悲しそうな顔」が正解ですよね。面接ではどうでしょうか。
面接は、どれだけ面接官がフランクな場にしようとしたとしても、基本的には人生の大きな岐路であり、人が人を評価するシリアスな場です。ですから、面接においては、別に笑う必要などありません。緊張していますという感じで、真顔でいればいいのです。それをマイナスに思う人はいません。
ただ、人によっては真顔ではなく、仏頂面で怒っているような印象を与える表情になってしまう人がたまにいます。自分で鏡を見て確認してください。怒っているような表情はマイナスです。面接官も人の子なので、怒られたら腹が立ちます。ですから、そうなっていないかだけ注意しましょう。でも、真顔で大丈夫です。
礼儀だけはしっかりと
最後に、礼儀だけはしっかりしておきましょう。柔軟性の高いコミュニケーションが取れないのであれば、逆に格式張ったコミュニケーションを取ればよいと思います。
冒頭の挨拶でも気の利いたことが言えないのであれば、「本日は大変お忙しいところ、私のためにお時間を頂戴しまして、誠にありがとうございます」とかっちりしたことを言えばよいですし、話の途中で頭が真っ白になってしまったら、
「大変、失礼しました。緊張のあまり頭が真っ白になって、考えていたことを忘れてしまいました。もう一度、ご質問をいただけませんでしょうか」
などと言う。お辞儀もきっちりと、ホテルマンのように深々とすればよいですし(どちらがよいかは趣味の問題です)、一人称も「僕」とかではなく「わたくし」などにしておけばよいのではないでしょうか。
どうせ緊張して硬くなるのです。それなら徹頭徹尾硬めで行けば、「この人は硬いけど、きっちりした人だし、真剣さが伝わってくる」となるのではないでしょうか。
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/