都内で1人暮らしをするためには月額25万円が必要、という試算が依然ネット上で話題だ。キャリコネニュースが記事を掲載すると、5ちゃんねるでは「そんなに給料もらってない」と嘆く声がある一方、
「赤羽で手取り月12万家賃6万で生活してたけど」
「月15万もかかってないんですが」
という声が相次いだ。挙句の果てには、我慢すれば生活できてしまった自負があるからか、手取りの少なさを嘆く声に対して「生活レベルを落とせば大丈夫」と主張する人までいる。
「極貧根性が日本の賃金を下げてる」という指摘も
そこで議論になったのが、調査で示されている「普通の生活」が果たして本当に”普通”なのか、という点だ。同調査を実施した東京春闘共闘会議が12月18日に発表した資料では、典型的な25歳単身者のモデルを
・勤務先は新宿
・家電は量販店の最低価格帯のもの
・朝晩は家でしっかりと食べ、昼食は、男性はコンビニなどでお弁当を買い、女性は昼食代を節約するために月の半分は弁当を持参
・休日は家で休養していることが多い
などと定義付けている。外食せず、休日も家から出ないのだから慎ましい生活といっても間違いないだろう。しかし、ネットではこれに対して「算出モデルがぜいたく」「何食ってんの」などといった批判が噴出。こうした声へのカウンターとして、
「チキンレースじゃないんだから、もっと貧乏でも暮らしていけた自慢はもう流行らないんじゃないの?(中略)修行僧なの?」
「お前らの極貧根性が日本の賃金を下げてんだよ」
という声も寄せらていた。
同会議の白滝誠事務局長は、若者が都内で暮らすためにギリギリの生活を受け入れざるを得ない現状を「ゆがんでいると感じた」と話す。ネット上の反応については
「『まあ、こんなもんだ』と諦めている若者がいるのは現実でしょうね」
と印象を語る。確かに、今回の調査では「ギリギリ」の生活ではなく、あくまで25歳単身者の「普通」を想定した。ヒアリングなどを通じて度合いを調整し、前述の定義のほかに、友人や恋人との交際費やプレゼント代、年1~2回分の旅費など含めたという。
「ギリギリの生活ができないこともないが……」
白滝さんは「確かに突き詰めれば、ギリギリの生活ができないこともない」と認める。一方、
「でも25歳といえば、これから結婚や出産を控えている人も多い。そんな人たちにギリギリの生活を強いるような社会では、あまりにも将来に展望が持てないのではないか」
と見解を述べた。働き方が多様化している昨今、パートやアルバイト、派遣社員といった人もいる。非正規雇用では、正社員とは異なり、大幅な昇給が望めないことも珍しくない。その上で、白滝さんは「年金などの不安も相当あると思う」と若者の心境を推し量った。
同団体は今後、調査結果を受けて、最低賃金アップなどを目指して運動を展開するが、現状改善については「いろいろな角度から議論が必要だと思う」という。
「やっぱり負担になるのは家賃。例えば、新宿区では単身世帯向けに住宅手当を助成しているが、枠はたったの30人分しかない。今後はこうした取り組みを広げていきたい」(白滝さん)
と意気込みを語った。
最賃1500円を求めるデモ、渋谷周辺で実施予定
最低賃金1500円を訴える若者グループ「エキタス」は、調査結果を受けて
「『普通の生活』を送るにはぜんぜん足りないくらいの控えめな数字だということが、はっきりと示されたことはとてもよかったと思います」
とコメントした。「生活水準を下げれば……」という意見が散見されることに対しては「我慢比べはやめませんか?」と訴える。お互いに水準を下げ合えば、「ギリギリ」が「普通」になってしまうこともあるとした上で、
「足を引っ張り合って我慢する社会よりも、みんなが余裕をもって『普通の生活』を送ることができる社会のほうが絶対にいい」
と主張する。同グループは22日、渋谷駅周辺で「最低賃金上げろデモ」を実施するとしている。
「参加する人が多いほど、デモが政治を動かす力は強いものになります。ぜひみなさんのデモへの参加をお待ちしています」
と呼び掛けている。