サービスの成長とシステムの変革を。 唯一無二の経歴を持つグループマネージャーの矜持 | キャリコネニュース
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サービスの成長とシステムの変革を。 唯一無二の経歴を持つグループマネージャーの矜持

▲銀髪が吉田のトレードマーク

▲銀髪が吉田のトレードマーク

2019年4月に、VR内覧システム「ROOV(ルーブ)」をローンチしたスタイルポート。今回は、VR元年と呼ばれる2016年のROOV構想段階から、エンジニアとしてその根幹を担い続けているプロダクトグループGMの吉田 巧自身のこれまでとこれから、そしてスタイルポートで描く未来をお伝えします。【talentbookで読む】

違うのが当たり前と受け入れた上で、普遍的な価値を追求したい

スタイルポートは、2017年10月に創業した、不動産テックと呼ばれる業界のスタートアップ企業だ。

吉田 「アナログな商習慣が根強く残る不動産業界で、 ITを使い地理的・時間的制約を解放することで、不動産をできるだけ現物に近く、よりリッチな形で確認してもらえる内覧機能を確立していこうとしています」

吉田は2016年、現在のスタイルポートの前身時代に、「ROOVみたいなもの」が可能なのかを検証する段階からプロジェクトにジョインした。2019年現在はROOVに関連するITプロダクトの開発指揮や機能提案、UIデザインなどに携わっている。

吉田はオーストラリア、シドニーで生まれ、以降点々と海外移住し、人生の半分を日本以外で過ごしてきた。初めて話した言語は日本語でも英語でもなかったという。親の都合に合わせ、生活環境も友だちも変わる。海外にいても日本にいても、どの環境でもアウトサイダーだった。

しかし、そんな新しい環境になじまなければいけない状況に晒され続けながらも、何かが変わったり、知っていたつもりのことが違うことになったりすると、興奮やおもしろさを感じたという。

吉田 「変化があることが好きなんだと思います。多種多様な人や環境、社会生活、カルチャーショックから新しい発見があったんですけど、その一方で違いが見えれば見えるほど、違わないところがあることに気づいたんです。違うことと同じこと。それが両方あるのがおもしろいなと思います」

世界中で同じ商品がヒットすることもあれば、企業はヒットさせようとしても思惑通りにはいかないこともある。同じものだからみんな使うのではなく、特定の価値観にフィットしているから同じものが使われるのだ。

吉田 「そういうことを考える仕事だとかものづくりができるとおもしろいし、違うのが当たり前なのを受け入れた上で、普遍的な価値を追求したいっていう想いがあります」

インプットがアウトプットにつながらないことに、フラストレーションを覚えた

▲シドニーに住んでいたころ

▲シドニーに住んでいたころ

吉田は、オーディオマニアだった祖父、父親の影響で、幼いころからヘッドフォンやスピーカーといったガジェットに親しみ、自然と機械や電化製品のインダストリアルデザイナーを志していた。

中学生のころからは、趣味としてパソコン上でモーショングラフィックの作成を始め、自分が描いた絵やデザインの提案を発表する場として、他社が提供するブログサービスではなく自作のWebサイトを作成した。Webサイトはパソコンで書いたコードがすぐにWeb上で結果として表れ、(理論上は)世界中の人がすぐに見ることができる。自分のインプットとすぐに直結するアウトプットにおもしろさを感じ、学業と並行し続けていた。

イギリスで全英4位に数えられる国立大学のデザイン科に入学してからは、当時携帯電話世界シェア1位だったNOKIAにインターンとして入社。ブランド力のある大企業で、組織での働き方や、どのように何百万台もの製品を製造・設計するのかを見ることができた。

貴重な経験の一方で、大資本を元手に工場で大量生産される想定で設計するインダストリアルデザインでは、駆け出しのデザイナーができることはイメージ画像段階のデザインまでと知る。そういった自分のインプットがアウトプットにつながりにくいことに、フラストレーションを覚えたという。

そうした中で、行われたのがiPhoneの発表だった。

吉田 「衝撃的だったんですよ。この会社が優先しているものは根本的に違うなって。自分がおもしろがって触ってきたデジタル的なところと、学校まで行って習ってきた、やろうとしていた物理的なデザインの両方が融合している商品でした。かつ大量生産前提のもので、ものすごいこだわりと共につくられていて」

デジタルな経験とモノのデザインへの興味を蓄積させていた吉田の中で、このふたつがつながったという。

世界中でみんなが携帯電話を持ち始め、日本ではガラケーが、ウォークマンやデジカメなど独自の機能をつけて進化を遂げていたこのころ。NOKIA社内でハイエンドからローエンドまで多種多様な機種に触っていたこともあり、吉田自身の中でなんとなく携帯電話の未来像ができあがっていた、その最中の出来事だった。

吉田 「あれはすごいタイミングでした。世界一の携帯会社で働いているときに、その携帯会社を数年後には見る影もないほどに追いやりかけることになる、 iPhoneの登場を目の当たりにできたんです」

インターンが終了し、就職は、英語で働ける場所をヨーロッパ中で探した。ひたすらメールで履歴書と、自分の作品を載せた自作ホームページのリンクを送り、快い返事をくれたイタリアの企業に迷わず就職した。決め手は、イギリス以外のヨーロッパをもう少し見てみたいと思う中で第1希望の国だっただけの理由ではあったが、結果的に、その企業での経験が吉田の職種の方向性を大きく決定づけていく。

自分でコードを書いて、実際に動いたら楽しい

▲札幌のBULBオフィスにて

▲札幌のBULBオフィスにて

世界中でデジタルの重要度がどんどん増していく中、「インダストリアルデザイナーは何をしていくのか?」「仕事は減るのか?」「仕事の内容が変わるのか?」そういった興味関心ともつながり、吉田自身の方向性はデジタル化の波に乗っていった。

イタリアで就職した会社は、もともと志していたインダストリアルデザインではなく、ユーザー・エクスペリエンス(UX)のコンサルティング会社だった。

テレビやショップ、サービス、特殊な現場で使用されるソフトのUIと対象はさまざまだったが、結果的に多かったのはWeb系の案件。実働するプロトタイプの制作は、エンジニアを雇うコストがかかるためまったくできない日々。コンサルタントであったとしても、提案をするにあたり動くものをつくりたかった吉田は、再びフラストレーションを覚えていく。

吉田 「半分はイメージ通りだけど、半分は思ってたより限定的だなあって。でも僕の一番の目的の、イタリアに住むっていう目的は達成できたので良かったですけどね」

世界レベルの名だたる大企業のクライアントたちを目の当たりにしたことで、「動いて触れるもの」をつくる技術を少しずつ磨き、パソコンの画面上でクリックすると、提案のデザインをクライアントに触ってもらうことができるプロトタイプを、自身でつくるようになっていた。

吉田 「そんなの紙の提案だけで終わっちゃダメでしょって、一生懸命つくって共有しました。プレッシャーからでしたけどね」

そうしてデザインと実装をある程度両方できるようになったころ、登録していたLinkedInにメールが届き、UIのデザインと実装の技術を生かすことができる札幌のITベンチャー企業、BULBに入社した。その後、冒頭の通りBULBの技術支援先だったスタイルポートの「ROOVのようなもの」のプロジェクトにほぼフルタイムで関わる状態になったことから、スタイルポートにジョインした。

ひとりではできなくてもチームで達成するおもしろさ、やりがいを感じている

▲社員総会でのグループごとのワークショップで笑顔

▲社員総会でのグループごとのワークショップで笑顔

現在の吉田は、プロダクトマネージャーに近い。具体的にはプロダクトそのものの方向性を関係先から拾い上げ、すり合わせし、プロダクトがどういう形を取るべきなのか総合的な方向性を決めている。そこから具体的な仕様や機能に落とし込み、場合によっては自ら手を動かし、基礎的なデザインや設計まで行っている。

吉田 「以前の各役割ひとりのような状態から、少し大きくなった組織で ROOVをつくる状況に変化したのに加えて、内覧サービスだけじゃなくなってきた辺りから、『これは、全体の整合性を取れる図をわかっていないとただのバラバラな開発になってしまいそうだな』っていう感覚が芽生えて。それと合わせてここ 1、 2年は、視座を上げて、全体像の意識をするようにしています」

ROOVを中心とした展開や、どのような市場に入り新たな価値を提供していくのか、といった事業計画を自分なりに理解しチームメンバーのスキルも踏まえ、開発の優先順位を決めていく。単に内覧サービスに機能を追加するアップグレードだけで良かったこれまでと違い、大きな構造転換を含めて考えなければいけない。

吉田 「まだ僕から周りの人に、プロダクト観を丸ごと任せられる状態になっていないんですね。誰がやるの?っていうと、今は僕しかいない状態なので、それを分担したいです。その考えは、マネージャーポジションで入っていただいた方たちにちょっとずつ、共有し始めているところです」

これと並行し、プロダクトや、プロダクト同士の関係性、位置づけが、どのグループにジョインした人でもすぐにわかるよう、情報や開発環境を整備する動きもチームメンバーと一体となって進めている。そうすることで、理解が早く深まり、業務遂行の効率化も図れると考えているからだ。

また、リモートワーカーが多く、拠点が全国3カ所、東京オフィスの中でも部屋が分かれていることもあり、社内コミュニケーションは全社的にSlackを使用し、テレビ会議システムを常時接続している。吉田自身がリモート環境であることから、とくに「動く」ことを意識し、自分の考えや存在感を遠くにいるメンバーとも共有するようにしているという。

吉田 「ちょっとしたあいさつとか、 1分で終わるような世間話が常にあった方が、問題解決しやすかったり、新しい発見につながったり、予期しない良い効果がたくさん生まれると思っています」

吉田は今後、自身が手を動かさなくてもモノづくりを実行していくための、バランス感覚やディレクションのノウハウをつかむことに挑戦していきたいと考えている。

吉田 「もちろん、つくりたい、手を動かしたい自分もいるんです。でも、自分ひとりではできなかったことを、チームでやることで達成できるおもしろさややりがいを確かに感じているので、手を動かしすぎないバランス取りは勉強中です。
まだまだ ROOVは始まったばかりで、頑張るのは当たり前。気づいたらオーバーワークする方が多いと思うので、適度に緩く、倒れないようにって感じですかね」

顧客へ感動を与えるレベルのサービス体験に向けた改善、パートナーとの新しいアライアンス、新規事業へのチャレンジ。サービスの成長とシステムの大変革に、プロダクトグループは今日も取り組んでいる。

株式会社スタイルポート

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