学生らによる「就活ミュージカル」が本番直前 オリジナル脚本で「多様な生き方」を肯定
学生と若手社会人らが共同で舞台を作り上げる「就活ミュージカル!!」が着々と進行中だ。東京・池袋の東京芸術劇場シアターウエストで3月18日から22日に行われる公演を前に、現在最終段階に入っている。
同プロジェクトはプロデューサーを務める会社員の関峻介さん(26)が「就活の問題点を誰もが楽しめるミュージカルで広く知ってもらいたい」と考えて企画。有志団体「就活戦線異状アリ(SSI)」を立ち上げ、その第1弾プロジェクトとして動いてきた。
約60人が参加し、3チームに分かれてトリプルキャストで演じる。舞台未経験者が半数以上だ。昨年夏から歌やダンス、演技のレッスンを行い、3回のオーディションを経て、12月に配役が決定した。
「リズムが取れてないよ!」と指導が入る
キャリコネニュースは、本番を翌週に控えた3月中旬にリハーサルの様子を取材した。3月に入ってからは東京・錦糸町のスタジオを借りて、連日朝10時から夜10時まで最後の稽古を行っている。
参加者のほとんどが学生、社会人で全員揃うことはなかなかないため、不在の人の役は他チームのキャストが代わりに演じる。この日は、プロのアドバイスを受けながら30人ほどで舞台のワンシーンを繰り返し練習していた。
「三連のリズムが取れてないよ! 自分で意識しないと直らないよ!」
演出家から厳しい声が飛ぶ。序盤、就活生のカップルが二人で歌うシーンだ。未経験者にとって、歌はやはり苦労するポイントのようで、参加者からも「練習ではできていて、みんなの前に立つと全然ダメだったりで難しい」という声が出る。
ただ参加者は、できないことも楽しんでいる様子だ。就活生役を演じる大学3年の男子学生は「こんなに感情を出して表現することは初めてだから新鮮」と語る。社会人の参加者も「音がうまく取れなくて自分の歌はカットされてしまったけど、ミュージカルを自分たちでやるというのはなかなかできない経験」と満足気だ。
彼氏にイライラしたエピソードも脚本に
今回のミュージカルは多様な登場人物の視点から就活を描いた群像劇だ。脚本は入念にリサーチした内容を盛り込んで作り上げた。
何十社受けても受からない現実、せっかく入社しても3年で退職する若者、そして就活うつの問題も脚本に取り入れられている。
参加者自身の体験も、脚本に反映されている。学生カップルが就活によってギクシャクするというエピソードには、参加者の女子大生の経験が加味されている。彼氏が3月に早々と内定を獲得したことで、2人の間に不穏な空気が漂ったという。
「自分が先に内定を取ったから『就活のことは俺に相談しろよ』なんて言うんだけど、全然就活で苦労してないくせに何が分かるのかってイライラした」
その後、自身も4月には内定をもらうことができた。今では仲良く彼氏も一緒に就活ミュージカルに参加しているということだ。
「就活批判ではない。多様な生き方があっていい」
就活に悩む若者の実態を描いた本作。ただ、就活を「批判」するものではないという。社会人1年目で、プロジェクトの中心人物のひとり、水野健太さん(24)はこう説明する。
「就活に意欲的に取り組む学生がいる一方で、不安や疑問を持つ学生もいる。でもどちらが正しいというわけじゃないんです」
水野さん自身は就活に違和感を持ち、最終的に起業したが、前向きに夢を持って就活に臨む人の気持ちも理解できるという。
「このミュージカルもラストでは就職したり、起業したり、フリーターになる人物がいたりと様々です。多様なあり方、生き方があっていい。このミュージカルが就活について考えることのきっかけになれば」
と話していた。
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