買取再販1位を誇る株式会社カチタス コロナ禍を逆手に取ったシェア拡大と、コミュニケーションを重視した人材採用 | キャリコネニュース - Page 2
おかげさまで6周年 メルマガ読者数
65万人以上!

買取再販1位を誇る株式会社カチタス コロナ禍を逆手に取ったシェア拡大と、コミュニケーションを重視した人材採用

「空き家」と聞くと家主がいなくなったまま放置され続ける、いわゆる「空き家問題」が頭に浮かぶ。しかし最近では所有者から買い取った空き家にリフォームを施しあらたな買い手へと販売する「再販事業」に注目が集まっている。このシステムには、売り手は仲介売却よりも手間や時間を費やさずに物件を売却でき、買い手は新築物件よりも安価に購入できるというメリットがある。

不動産買取再販戸数で第1位を誇る株式会社カチタスは、コロナ禍でも売り上げを伸ばし続けている。同社にはコロナ禍による影響はなかったのだろうか? そして急速に組織が成長する中で、現在どのような人材が求められているのだろうか? 人事総務部 人材開発課 課長の小林千紗さんにお話を伺った。(聞き手・文 藤間紗花)

地域への理解と買取再販のノウハウが、他者との差別化に

株式会社カチタス 人事総務部 人材開発課 課長の小林千紗さん

株式会社カチタス 人事総務部 人材開発課 課長の小林千紗さん

――「中古住宅を買取業者に売りたい」と考えても、戸建ての場合、築年数の古さや物件の状態によっては、買取を断られる場合も多いと聞きます。御社では、他社では受け入れの難しい物件も受け入れているケースが多いと伺いましたが、なぜそういった物件も取り扱うことができるのでしょう?

当社では空き家を中心に買い取りを行っておりまして、仕入れている物件のうち8割が空き家なのですが、他社で空き家の物件を買い取れない事情というのは、2軸に分かれるのではないかと考えています。まず1つは、物件のあるエリア。そしてもう1つは物件の古さです。当社には、その2つを解決する要素があります。

まず、エリアに関してお話しします。当社は、人口5万〜30万人ほどの都市を中心に、全国に120店舗展開しています。そのため、地方採用にかなり力を入れており、それぞれ地域についてよく理解している、地元の新卒者を中心に採用しています。地域のことをよく知っている人間が、それまで自社で培ってきた情報と合わせながら積極的に営業活動をしているという点が、他社との差別化に繋がっていると思います。

そして、古い物件についてです。築年数の古い木造の一戸建て住宅の多くは、雨漏りやシロアリなどの被害がかなり見られます。さらに、マンションとは違い、間取りもそれぞれ大きく異なりますし、建築した業者さんもバラバラで、固有差がとても大きいのです。そういった固有差を埋めていくためには、経験と知識が不可欠ですが、当社は1990年代後半から買取再販事業を行っていますから、これまで培ってきたノウハウがあります。それをうまく活用しながら古い家を再生できているという点が、当社ならではの強みだと考えています。

――最近まで人が住んでいた物件ではなく、長く空き家となっていた物件が圧倒的に多いのですね。売り手の方には、もともと空き家を所有していた方よりも、相続された方が多いのでしょうか?

親族から相続されたという方が多いですね。例えば、売り手の方は東京にお住まいなのですが地元は秋田で、秋田にある両親の家を売りたいというケースなど、空き家のある地域に売り手の方がお住まいでない場合も多いです

当社は全国に店舗を展開しているので、「ではお話を伺ったり、手続きを行ったりするのは東京で、物件のチェックは秋田のスタッフが行います」というように、遠隔で柔軟に対応できるので、売り手の方の負担が少ないという点も魅力になっていると思います。

コロナ禍が追い風に。高まる地方戸建てのニーズ

古い家屋がリフォームされた例

古い家屋がリフォームされた例

――コロナ禍以降、木材の輸入価格がつり上がるなど物価が高騰し、住宅業界に多大な影響を与えています。御社では、コロナ禍によってどのような変化がありましたか?

当社では、買取した物件をリフォームしてから再販しているのですが、リフォーム工事の場合、新築と比べると、使用する木材の量は7分の1程度で済みます。もちろん価格高騰の影響を受けた部分はありますが、新築事業ほどではないということは言えるかなと思います。

コロナ禍での変化で言いますと、もともと都心に住んでいた方がリモートワークに切り替わったことをきっかけに移住するというケースが増え、都心の狭い賃貸住宅から地方の広い戸建てに住み替えたいという方がとても多くなりました。コロナ禍以前よりも地方の戸建て住宅のニーズが高まったことは、当社にとっては追い風になったと感じています。

――コロナ禍以降、むしろ買い手が増えていたのですね。売り手にも何か変化はあったのでしょうか?

コロナ禍の最初の方は、病原体自体がどんなものかわかりませんでしたし、漠然とした不安を誰もが抱えていましたよね。そういった時期には、やはり物件を売り控える方が多かったです。弊社が住宅を買い取らせていただく際には直接お家を見させていただくことになりますので「感染が怖いから、今は見に来ないでもらいたい」とお断りされる状況が続きました。

物件を購入したい方の中には「すぐに引っ越したい」という方も多く、即時性のニーズがあったのですが、売主様側には大急ぎで売らなければならないご事情というのはあまりありませんから、「もう少し落ち着いてからにしようかな」というお考えの方が大勢いらっしゃいました。

ですが、ワクチンが普及し、徐々にコロナによる規制などが緩和されていくと、そういった売主様も「そろそろ売らないと」とお考えになり、スムーズにやりとりさせていただけるようになりました。当社がコロナ禍による打撃を受けたのは、本当に最初の方だけだったと思います。

求めるのはコミュニケーションに欠かせない要素を持つ人材

社内研修の様子

社内研修の様子

――地方で新しい社員を獲得する際には、どのような採用活動をされていますか?

当社では中途・新卒ともに採用しておりますが、とくに新卒採用に重きを置いています。獲得の仕方については、いわゆるナビサイトへの掲載、合同説明会などの地方イベントへの出展やオンラインイベントの開催、そして地方の人材紹介会社さんからのご紹介という3つの手法を用いています。

地域に根付いた方を採用したいと考えておりますので、地方国公立の学生さんで、その土地で就業したいと考えている方ですとか、今は違うエリアにいるけれど卒業後は地元に戻って就職したいという方ですとか、そういった方とマッチングするケースが多いです。

その中でも最近増えたなと感じるのは、例えば地域未来学科や地域創生学部などといった、地方創生に関することを専門に学び、興味を持っている学生さんです。当社の事業には空き家を再生することで、それぞれの地域の空き家問題を解決できるという側面もありますので、「地域に貢献したい」と考える学生さんに関心を持っていただけているのかなと思います。

――御社ではほとんどの場合、買取、リフォーム、販売といった一連の流れを、1人の社員の方が一貫して担当されていると伺いました。売り手、買い手、そしてリフォームを担当する工務店など、対人での密なコミュニケーションが必要となると思いますが、その上で、御社が求めるのはどのような人材ですか?

当社では求める人材について、「オープン・アクティブ・タフ・クレバー」という4つの要素に落とし込んでいます。

いろんな立場の人と関わるからこそ、その人に配慮したコミュニケーションが取れる可愛げも必要ですし、一方で、必要に応じて相手と交渉しなければならないこともありますから、信頼を築くためにも「相手の望んでいることは何か」を汲み取る賢さも必要になります。

タフという要素は、ストレス耐性が強いというよりも、例えば工務店さんとのやり取りの際に「ここはもう少し工事を追加してほしい」などはっきりと事業のこだわりを伝えるシーンがいくつか発生します。物件のクオリティにこだわってお客様に良いものを届けるために、必要な時は意見をしっかりと主張できるタフさが欲しいと考えています。

――「オープン・アクティブ・タフ・クレバー」という要素を持ち合わせた人材かどうか、採用の段階でどのように判断されているのでしょうか。

求職者の方には、SPI試験を受けていただいているのですが、その適正診断の能力検査の結果だけでなく性格検査の結果も細部までチェックし判断しています。試験の通過率は半分で通過された方には、その後個人面接をお願いしています。

個人面接は1人につき50分ほどお時間をいただいているので、質問に対する答えだけでなく、話しているときのリアクションや、その場の雰囲気のつくり方など、コミュニケーションの全体を通して、当社とのフィット感を拝見させていただいています。

――面接でのコミュニケーションも重視されるということですね。面接は対面で行われているのでしょうか?

当社はもともと地方の国公立大学からの新卒者をメインターゲットとしておりましたので、コロナ禍前から、オンラインでのビデオ面接は行っていました。

正直にお話すると、コロナ禍となったばかりの頃は、他社よりむしろ採用活動はしやすい状況でした。他社がオンラインへの切り替えに苦戦する中で、当社は初めからオンラインに対応していたので、「オンラインで就活したい」と考えている多くの方々が応募してくださいました。現在は他社もオンラインに対応している分、その頃よりも多少学生の興味が分散してしまっている感触はありますね。

新卒採用者の低離職率の理由。店舗ごとのチーム感が要

――新卒採用に力を入れているとのことですが、全体採用のうち、中途採用も割合はどのくらいですか?

当社では現在、新卒者を年間100人程度採用しているのですが、中途採用は15人程度です。

中途採用に関しては、当社としてはやはり即戦力となる人材を求めていますし、求職者の方はキャリアアップや年収アップを目指しているはずですので、できるだけ早く店長というポストに就いていただけるように、例えば異業種でマネジメント経験をお持ちの方ですとか、不動産そのものの経験はなくても営業職で結果を出していた方ですとか、そういったスキル面や経験を重視しています。

――全体のバランスで見ても圧倒的に新卒採用が多いようですが、積極的に新卒者を採用しているのはどうしてなのでしょう?

実はカチタスが新卒採用を本格的に始めたのは2013年ごろと比較的最近なのですが、結果的に新卒採用は生産性がかなり高いことがわかりました。組織が大きくなっていく上で、潜入感なくこの事業に飛び込んで成長してくれる人材というのは重要ですし、新卒で入社した社員の離職率がとても低いことも、当社としては嬉しい驚きでした。

当社では、1つの店舗に3〜6人程度のスタッフを配置しているのですが、その少人数制が店舗ごとにチーム感をもたらし、雰囲気を良くしていることも、低離職率の理由のひとつだと考えています。

1人1人が物件を比較してつくっていくので、例えば店長が経験豊富で、アドバイスが上手な人物ですと、その店舗に並ぶ商品そのもののクオリティも上がり、スタッフのモチベーションも上がります。1人の働きによって店舗の業績が大きく変わり、チームが育っていくという面で、やりがいを感じる社員は多いです。これからも、エネルギッシュな人材に良い風を流し込んで欲しいと考えています。

【プロフィール】
小林千紗(こばやし・ちさ)
株式会社カチタス 人事総務部 人材開発課 課長
東京都出身。2014年1月にカチタスに採用担当として中途入社。前職はIT企業で技術職に従事。現在は人材開発課の課長として中途・新卒採用のマネジメントに従事。仕事で大事にしていることは「楽しく真剣に、謙虚に」。

関連記事

アーカイブ