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DX企業として成長する富士通 「パーパス」に基づいた​​事業変革とは?

2019年9月に「IT企業からDX企業への転換」を宣言し、事業変革を進めている富士通株式会社。

同社の変革は、奇しくもコロナ禍と重なった。多くの企業が社員の働き方や採用活動の見直しに奔走する中で、いち早くフルリモートに対応した富士通には、コロナ禍によってどのような影響があったのか。また、現在同社が求めるのはどのような人材なのか。Employee Success本部 人材採用センター マネージャー 福谷 郁子さんにお話を聞いた。(聞き手・文 藤間紗花)

富士通の存在意義と社員の存在意義。共感し合う「パーパス」

富士通 人材採用センター マネージャー 福谷郁子さん

富士通 人材採用センター マネージャー 福谷郁子さん

ーー御社では2020年に、社員の皆様の行動の原理原則として制定されていた「Fujitsu Way」を、12年ぶりに刷新されました。これについて、詳しくご解説いただけますでしょうか。

Fujitsu Wayは「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つで構成されています。当社のパーパスは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくこと」であり、「大切にする価値観」は「パーパス」を実現していくために当社が実行すべき「挑戦」「信頼」「共感」の3つの行動の循環を示しています。これまでの「Fujitsu Way」は企業理念などの当社グループの原理原則となる考え方を示していましたが、今回「パーパス」を軸に経営方針や事業戦略の実践に向けて「Fujitsu Way」を再定義、2020年に刷新しました。

これは、2019年に現在の社長である時田が就任した際に、「IT企業からDX企業になる」という変革宣言を行ったことが大きなきっかけとなります。DX企業への変革を進めるには会社のカルチャーやビジネスモデル、求める人材も含め、あらためて当社がどのような姿を目指すのかについて示す必要があるとし、その姿を社員と共有・共感できるものとして示したのがこの「Fujitsu Way」です。

ーーなるほど、「パーパス」を中心に生まれ変わったものだったのですね。「Fujitsu Way」が刷新されてから、社員の方にはどのような変化がありましたか?

当社では「パーパス」が策定されて以降、社員一人ひとりが「自分にとっての大切な価値観」や「自身が考える自分の存在意義」、そして今後こんな業務を手掛けてみたいという目標など「自分のパーパス」を仲間と対話しながら言語化する「Purpose Carving(パーパスカービング)」という独自のプログラムを行っております。社員同士で「自分たちのパーパスは何だろう」というところを考えて共有したり、自身を振り返ったりする活動です。

これは自分たちが富士通で働く意義や、富士通が存在する意義を考えることにもつながります。新たに入社した社員からも、選考中の応募者からも当社のパーパスに共感しましたという声をよくお聞きするようになってきています。

ーー御社では社員の方々が新たなスキルを習得される「リスキリング」にも注力されていると伺いましたが、希望される社員の方も多いのでしょうか。

「Fujitsu Way」を刷新したタイミングで人事制度を全面改定しまして、そのうちの一つに、社員が自律的に教育を受け、キャリアアップ自体を自主的に選択できるという「キャリアオーナーシップ支援」という仕組みを設けました。これにより、教育プログラムが大幅に変わりました。

これまでは、例えば昇級をすると、「この役職の人はこの研修を受けなさい」という必須教育があったのですが、現在は「どの教育を受けるのも本人次第」というように、全社員がどのプログラムでも受けられる形にしています。例えば、私は今、採用の業務に従事していますが、「AIの技術を学びたい」と思えば、AI技術の教育プログラムを自主的に受けることができますし、他にも習得したいスキルや受けたい教育を自由に選べます。

また、キャリアオーナーシップ支援の仕組みの一つに「ポスティング制度」という社内の公募制度もあります。当社はグループ会社も含めグローバルにこの制度を展開していますが、事業戦略に基づいて組織やポジションをデザインしています。ポジションに対してポスティング募集があった場合、社員が自ら手を挙げることができるようにしています。この制度によって、多くの社員が異動や管理職ポジションにチャレンジしています。実際に私たちの上司も元々営業でキャリアを積みポスティング制度を活用して人事に異動しています。
ご紹介した制度はごく一部ですが、このような制度を通じて富士通社員がリスキリングと自律的なキャリアを歩むことに取り組んでいます。

新卒採用・キャリア採用数は同じ比率以上を目標

スタイリッシュなインテリアや観葉植物などを取り入れたオフィス空間

スタイリッシュなインテリアや観葉植物などを取り入れたオフィス空間

ーー先ほど、パーパスとのマッチ度の高い方が多く富士通への入社を希望しているとお話されていましたが、やはり「富士通に入社したい」という強い思いを持っている人材を求められているのでしょうか?

当社としては、「富士通への情熱を持っているかどうか」を最重要視しているわけではありません。むしろ、当社のほうが「この人にはぜひ入社してほしい」と声をかけさせていただくことも多数でていると考えています。

これまでは、面接の際に応募者に対して「富士通を志望した理由を教えてください」とお聞きしてきましたが、今では我々採用センターから面接官に対して「富士通に興味を持ってくださった方に自社の魅力やビジョンをアピールしてください」とお願いしていたりします。

ーー現在、御社の新卒採用者とキャリア採用者の比率はどのくらいですか?

2023年度のキャリア採用は計画数を定めずに800名以上としてさらに拡充、2024年度の新卒採用は800名程度と公表しています。これまで、当社は新卒の方を多く採用していたのですが、今年度は目標としているのは新卒採用と同じ比率以上にキャリア採用を増やしていくことです。

ーーキャリア採用の割合を増やすために、現在どのような活動をされていますか?

数年前に行ったポテンシャル採用を今年も特定の部署で行いました。スキルや経験だけでなく、本人が持つ素養など、今後どのように活躍していただけそうな人材であるかという観点も踏まえて採用するものですね。当社では新人研修や職種別研修など、こちらで用意した基礎的な教育を受けていただいた後に、配属となります。

キャリア採用というと即戦力への期待が大きいので、こういった採用はなかなかハードルが高かったのですが、現在は職場がより多くの人材を必要としていますし、今回も優秀なポテンシャル人材に多く入社いただいたことから、引き続き積極的に活用したいと言ってくれる部署が増えてきています。今後も即戦力となる人材の採用と並行して、ポテンシャル採用も徐々に増やしていく予定です。

コロナ禍がなくとも、フルリモートは実現していた

社内に併設された焼き立てパンやドリンクなどを提供するカフェテリア

社内に併設された焼き立てパンやドリンクなどを提供するカフェテリア

ーーコロナ禍以降、さまざまな企業が働き方における変化を余儀なくされましたが、御社ではどのような変化がありましたか?

そうですね。確かに、コロナ禍の2020年に全社員がリモートワークに切り替わったのですが、もともと我々はリモートワーク実施向け準備していたので、今の働き方はコロナ禍が訪れずとも実現していたのではないかと思っています。

というのも、東京・汐留にある富士通本社はオリンピック会場の近くでもありましたので、オリンピック開催が決定した後「本社に通う社員は、おそらくオリンピック期間中は出社が難しくなるだろう」と考えて、リモートワークの準備を少しずつ進めていました。具体的には、各部署で週1〜2回リモートワークのテストを行ったり、システム部門がネットワークの増強を進めたりしていました。

とはいえ、コロナ禍でリモートワークへの切り替えが急速に進んだことは間違いないです。想定以上の社員が急にリモートワークに切り替えたので増強が追いつかずネットワークが遅くなる日もありましたが、大きな混乱はなく、比較的スムーズに完了したと感じています。

ーー現在は、採用活動においてもオンラインが主体となっています。採用活動のオンライン化に関しては、コロナ禍に切り替わったのでしょうか?

これまでは、例えば入社希望者を集めたオリエンテーションなども、対面で行っていました。その中で、オンラインでの参加を希望する一部の入社者のみがWeb会議サービスを使って参加できるような形にも対応していましたが、コロナ禍で急速に進めることになりました。

コロナが終息したらまた元の形へ戻すのではなく、DX企業として今後も採用プロセスをよりデジタル化していきたいと考えています。

【プロフィール】
福谷 郁子(ふくたに・いくこ)
富士通株式会社 Employee Success本部 人材採用センター マネージャー
1999年富士通株式会社入社、株式会社富士通総研へ出向。流通業の企業様向けコンサルタント、経営企画業務・キャリア採用業務に従事。2018年 現所属に異動 キャリア採用担当

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