大企業の財務諸表から待遇を探る「これだけもらえる優良企業」シリーズ。今回は、大手航空会社の日本航空(JAL)を取り上げます。
JAL社員の平均年収は839.3万円
まずは、JALの常勤社員の平均年間給与と従業員数、平均年齢と平均勤続年数の推移を見てみます。
- 2018年3月期:866.7万円/12,127人(40.1歳・15.2年)
- 2019年3月期:827.5万円/12,750人(39.9歳・15.0年)
- 2020年3月期:839.3万円/13,541人(39.3歳・14.5年)
2020年3月期の平均年間給与は839.3万円。2期前と比べると27万円あまり減っていますが、40歳前後でこの金額だとすれば高給の部類といえるでしょう。
一方、従業員数が1割以上増えており、平均年齢がやや下がっています。なお、このデータにはグループ会社は含まれておらず、JAL単体のものです。
ライバルのANAグループは持株会社制なので、有価証券報告書にはANAホールディングスの社員185人の平均年間給与(736.5万円)しか書かれておらず、中核事業を担う全日本空輸の社員の給与水準は分かりませんでした。
JALの場合は、上場しているのが日本航空なので、本体(単体)13,541人の従業員の平均年間給与がそのまま記されています。ちなみに、グループ全体(連結)に占める単体従業員の割合は38.0%と高めです。
JALパイロットの平均年収は2000万円超
JALの有価証券報告書には、参考情報として子会社等を含むグループ全体の平均年間給与も記されています。やはりJAL本体の水準とはやや差があります。
- 2018年3月期:702.1万円/33,038人
- 2019年3月期:712.6万円/34,003人
- 2020年3月期:668.4万円/35,653人
この2期間で、従業員数は約8%増え、平均年間給与は約5%減っています。有報には職種別の平均年間給与も記されており、2020年3月期の金額は以下の通りです。
- 地上社員:566.7万円
- 運航乗務員:2022.5万円
- 客室乗務員:515.1万円
運航乗務員(パイロット)の給与が2000万円を超えているのが目を引きます。他の職種は500万円台と差があり、平均だけで「航空会社社員の給与は非常に高い」と一概にはいえないことが分かります。
2010年に1月に経営破綻し、経営再建の末、2012年9月に東証に再上場したJALですが、2003年3月期の地上社員の平均年間給与は999.7万円。再建後に経営体質が大きく変わっていることがうかがえます。
「ニューノーマル」への適応が経営課題に
最後に、JALグループの今後の見通しについてまとめてみましょう。
2021年3月期第1四半期決算は、売上収益が前年同期比で78.1%減で、純損失937億円の赤字に転落。通期の連結業績予想は未定で、「手元流動性確保を最優先にしなければならない状況」という理由で中間配当も見送られています。
2020年夏のボーナスは、会長と社長はゼロでその他の役員も7割カット。社員は例年の半分の水準まで減らしました。冬のボーナスについては未発表ですが、ライバルのANAは支給なし、月額給与の減額にまで着手しており、JALも歩調を合わせるかもしれません。
JALの予測によると、国内旅客需要は7月から戻り始め、年度末までには前期比9割ほどに達する回復シナリオが描けています。しかし国際旅客は9月以降に戻り始めるものの、年度末には前期比50%程度の回復にとどまり、通期の旅客収入は全体で前期の35~45%程度という見通しを立てています。
そんな中、JALでは「ニューノーマル」の事業環境を踏まえた新しい中期経営計画を20年度末までに発表することを目指すとしています。コスト構造改革やモバイル化による非接触の推進のほか、事業のリスク体制強化として「航空需要への依存度の低い事業の育成」「事業の選択と集中」といった項目があげられています。
採用活動は基本的に停滞すると見られますが、ニューノーマルに対応した業務やサービスのデジタル化、既存の資源を有効活用した非航空分野での収益化は喫緊の経営課題であり、ピンポイントでの即戦力人材を望んでいるのではないでしょうか。