「新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、看護職の仕事を辞めたいと思ったことがあるか」という質問に対して、計42.9%が「たびたびあった」(15.6%)または「ときどきあった」(27.3%)と答えた。
さらに「看護職の仕事を続ける自信がなくなったことがあるか」という質問に対しては、計42.3%が「たびたびあった」(12.3%)または「ときどきあった」(30.0%)が回答した。4割強の人が看護職の仕事を続ける自信を失う経験をしていた。
また、人口あたりの感染者が多い地域と相対的に少ない地域で、看護職の精神健康の平均値に統計的な有意差はなかった。
リリースでは、
「本研究の結果は、新型コロナウイルス感染症流行下における看護職の精神健康ケアの必要性に警鐘を鳴らすものです」
と訴えている。
現場の精神ケアは「すでに限界に達しているのでは」
調査を実施した同大学大学院、医学系研究科の朝倉京子教授は、昨年5月および12月にも宮城県内の看護職を対象に別の調査を実施。新型コロナウイルス患者を担当している、担当していないにかかわらず、看護職の精神健康が悪化していたという。
離職意向を調べた今回の調査でも、同様の傾向がみられた。朝倉教授は、
「『悪い予感が当たった』というのが本当のところです」
と印象を語る。
その上で「政策・施策を考えるのは私たちの専門領域ではない」としながらも、
「医療現場、とくにコロナ患者を受け入れている医療現場では、昨年のかなり早い時期から、看護職の精神的ケアに関する取りくみを行っている病院が多くあるそうです。その一方で、看護職の精神健康が改善しない状況においては、その看護職に通常よりも多めの有給休暇の取得等を促し、十分な休養を与えることが必要だと思います」
と話す。だが、多くの病院では看護職が元々、必要最少人数しかおらず、その中で新型コロナウイルスの対応をしなければならなくなった。こうした背景から、業務が過重になり、人手が不足し、積極的な有給取得などを促すことは難しい現状にあると捉えているという。
「おそらく医療現場はできることは既に実施しているが、分かっていても実施できないことも多くあり、現場で行う看護職の精神的ケアに関してはすでに限界に達しているのではないかと推測しています」
と現場の窮状を慮っている。
今回の自由回答でも「看護職も人間である」「社会は我々を犠牲にしている」「国から医療者への給付金があったが、それは一時的な対応に過ぎず、根本的な解決を目指す政策がないので、現場の我々の辛さは一向に変わらない」といった声が寄せられたという。朝倉教授は、
「感染者を減らすための積極的な政策に乏しく、一方でGo Toなど感染症を拡大しかねない政策が打たれることに、看護職の視点からは納得ができないのだと思います。医療体制を抜本的に変革する政策を打ち出すか、そうでなければ感染者を減らす積極的な政策がないと、現場の看護職はもたないと感じます」
と語り、今後の研究については「少しでも看護職のリアリティを社会に伝える仕事を続けていきたいと思っています」とコメントした。