こうした「実力主義」「成果主義」などと呼ばれる評価制度は外資系企業などで導入されてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や景気の低迷が始まった2020年以降、損保ジャパン、三菱ケミカルなどの大手企業でも、年功序列制度から脱却する動きが相次いでいる。不景気を受け、人件費を抑制するために人事、給与制度の見直しが進められているようだ。
今回の川崎重工業のケースでも、新型コロナの影響で航空関連の事業が低迷する中、社員の意欲を引き出して脱炭素といった新たな分野での競争力につなげる狙いがあるという。
ツイッターでは「頑張ってる人に光が照らされる時がきましたね」と好意的に捉える人がいた一方で「工業系でコレやるのはマズい。技能の伝承なんか二の次になるぞ」と警戒感を持つ人もみられた。
成果主義の課題は「それを望む人が実は少ない」ということ
人材研究所の曽和利光氏は、年功序列制度から脱却する企業が相次いでいる現状について「逆に年功序列がこれだけ長く続いた理由は、それだけメリットがあったからだと思います」と印象を語る。
「実際、人事コンサルティングをする際に、社内インタビューをしたり、社員の性格分析をしたりすると、年功的な人事制度を望む人も多いので、この流れはもしかすると社員の要望というよりは経営側の業績不振から出てきた方向性だと思います」
企業のこうした動きは「社会的にショックな出来事が起こった時に、どさくさに紛れて、やりたいことをやってしまう一種の『ショック・ドクトリン』ではないかと思います」と前置きした上で、
「大手企業はまだ余裕、体力があるのでコロナ以前にはまだ年功序列的制度が維持できていたが、それが大手でも難しくなってきたのだと思います」
と分析した。
今後、国内企業が成果主義に切り替えるにあたり、どのような点が課題になるのだろうか。曽和氏は、
「成果主義の課題は『それを望む人が実は少ない』ということに尽きます」
と指摘する。
また、成果主義は「成果を出せる優秀な人にはモチベーションアップをさせることができる」というメリットがあるが、プロセスを評価できない点がデメリットになる。一方、年功序列は従業員に安心感を与え、人材の定着にも繋がっていたが、優秀な若手にとっては不平等になってしまう。
テレワークの拡大とともに人事評価の手法が見直されているが、どちらの評価方法も一長一短ある。各企業が今後、どのような選択をするのか注目したい。