ブラック企業の社名公表は「大企業のみ」のワケ 全国チェーンの「外食」「小売」が標的か | キャリコネニュース
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ブラック企業の社名公表は「大企業のみ」のワケ 全国チェーンの「外食」「小売」が標的か

的は絞られた

的は絞られた

厚生労働省は5月18日から、違法な長時間労働などを労働者にさせる「ブラック企業」について、是正勧告の段階で社名を公表する新しい取り組みを始めた。従来は労働基準法違反容疑などの書類送検が公表の基準となっていたが、一定の条件が揃えば行政指導の段階で公表できるようにする。

ただし、新基準が適用されるのは大企業のみで、中小企業はこれまで通り書類送検されないと公表されない。ネットでは「はいザルでしたー」「意味ないじゃん」など失望の声も多く聞かれているが、果たして本当に無意味なのか。(文:野吟りん)

まずは「ゼンショー」「ワタミ」がターゲットに

厚生労働省の資料によれば、都道府県労働局長による指導・公表の対象とする基準は、次の2つのいずれにも当てはまる事案とされる。

(1)「社会的に影響力の大きい企業」であること(中小企業は該当せず)
(2)「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと

しかし、日本では企業数も労働者数も中小企業の方が圧倒的に多く、ブラックな環境は中小にこそ多いということは周知の事実。「悪質な奴隷労働は中小企業で行われているんだぞ!」というように、大企業対象では効果は薄い、という見方が圧倒的に多い。

これとは反対に、今回のような基準での社名公表にも十分効果がある、という見方も少数ながらある。理由のひとつは、是正勧告を繰り返し出されていながらその実態が知られていない案件は「大企業による全国チェーンによるもの」が少なくないからだ。

ブラック企業に関心のある人であれば、上記2つの基準から「あの会社」をすぐにイメージできるだろう。すき家を運営するゼンショーの第三者委員会報告書によると、「残業代の不払い」や「労使協定の限度時間を超えた長時間労働」「休憩を付与せず働かせたこと」などにより是正勧告を受けた数は、2012年度に13件、13年度に49件となっている。

ワタミも2008年4月から13年2月までに「是正勧告24件、指導票17件」を受け、それも過労死裁判の遺族から再三の請求を経て、ようやく裁判所へ提出している。このような隠れた「ブラック労働に対する行政指導」が、今後は早めに白日にさらされることになる。

中小店舗の取り締まりは非現実的。「不公平感」への配慮も

牛丼や居酒屋以外にも、例えば全国チェーンのファミリーレストランのほか、家電量販店やドラッグストアなどの小売業でも同じような是正勧告が行われている可能性があり、「社名を公表されたくなければ本気で改善せよ」という強力なプレッシャーになることだろう。

社名公表による波及効果は、大手の方が大きいという側面もある。対象が大企業だけであっても、それなりの効果が期待できる所以だ。中小企業の立場からは、こんな書き込みもある。

「限られたマンパワーの中小企業から労働時間を奪ったら効率的な大企業しか生き残れない社会になっちゃうよ」

もうひとつの理由は、「大企業以外の取り締まりは現実的でない」というものだ。労基法に違反している中小・零細企業は数知れず、すべてをチェックすることはできない。そんな状況で特定の会社の社名を公表したら、「なぜウチだけが」「不公平だ」ということになるだろう。

NPO法人POSSE代表の今野晴貴さんも、Yahoo!個人の記事で新基準について「有意義」と評価しながらも、労基署の慢性的な職員不足を指摘。第一線の監督業務に従事するのは全国で1500~2000人ほど。東京都ですら120人程度しかおらず、「十分に違反企業を捜査することができないだろう」と述べている。

まずは問題が顕在化している全国チェーンの「外食」「小売」をターゲットに、限られた資源を使ってきちんと改善していくことが必要だ。

あわせてよみたい:ワタミ、過労死裁判でようやく「是正勧告書」提出

 

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