女性がハズレの部署に異動になったのは、いまから5年ほど前のこと。それまでの部署は、和気藹々と仕事できる部署だった。しかし新しい職場は、同じ市役所にあるとは思えないほど、まったく雰囲気が違った。
「当たりを引いた時には、業務を学べる優しい先輩もいたし無駄な残業も少なく、飲み会も節度がありました。ハズレのほうは同じ役所なのにすべてが真逆だったんです」
その部署では、同僚たちが仕事をサボりまくるだけではなく、セクハラ・パワハラも横行していたという。
「職場内で動きやすくするために履いている靴があるんですがそれを履いていると『生意気だ』といわれたり、私だけ送別会に呼ばれなかったこともありました。出席した飲み会の席ではセクハラや頭を強く叩かれたこともあります」
実は、女性には「目の敵にされた理由」がある。それは、荒廃した部署の中でも、それまで通り公務員として当たり前に仕事をこなしていた、ということだった。
「女性の先輩と仕事の件でぶつかったことがあり、その後から悪口をいわれたり、書類がなかなか回ってこなかったこともありました。その先輩は感情的な人で、翌日になっても隣の席の男性の先輩に『あいつ嫌い』と私の悪口をいったり……。隣の男性の職員に話しているつもりでしょうが、こちらとしては丸わかりでしたけど。送別会の件は、その延長線での出来事ですね。私のほうを指でさして、送別会に呼ぶ?呼ばないといってるのも、聞こえてました」
わざと聞こえるように言ったのだろうか……。もはや陰湿ないじめである。
「お茶会もメルカリも上司が公用で外出している時にやるんです。上司にいっても『仕方ないねぇー。ああいう人なんだよ』と諦めてる様子でした。上司もうまく統率できておらず、部下たちは少し上司を舐めてる様子でした」
この勤務時間中のお茶会には、他部署の職員も参加していたというから、サボり体質は部署外にも波及してしまっているようだ。
もちろん女性は、こうした先輩からのパワハラや、飲み会でのセクハラを人事のハラスメント対策部署に報告した。しかし、やたら時間をかけたうえ、事実関係の調査もされないまま、有耶無耶になってしまったという。
「その年は相談者が多かったようで、結果が出たのは1年後くらいになりました。対応の中身も疑問符が頭に浮かぶ内容でした。ハラスメントって事実をきちんと確認しなきゃいけないと思うんですが、第三者への聞き取りもなく、事実確認の調査すらされなかったんです」
ハラスメントの報告があるのにもかかわらず、あえて聞き取り調査をしないというのは、担当者も「そんなの見たくない、聞きたくない」と言っているのに等しい。もしかしたら、同じようなことがありすぎて、いちいち処分や対処をできないレベルになっているのかもしれない。
そんないい加減な部署ゆえ、対外的な応対がイマイチなのはお察しの通り。サービスを受けにきた市民を激怒させることも、ままあったそうだ。
女性はこうして「ハズレ」の環境でも、以前の上司や他部署の先輩に相談を重ねて環境改善を図ろうとしていたのだが、ついに心が折れてしまったそうだ。現在は休職して、回復につとめているという。
「とりあえず体の回復に努めています。勤務中には、眠れなかったりして夜中にいきなり失禁したことも2回ありました。心療内科の医師にも、ここまで酷いパワハラセクハラは初めてだといわれました」
真面目な人が損をするなんて、とんでもない……。今後も同じ職場で仕事を続けるつもりかを訪ねたところ、女性からはこんな返答があった。
「なんともいえないのですが、公務員として長く働くことは厳しいのかなと思っています。人事の対応にしても、疑問がありますから。医師の言葉から考えると公務員じゃなくても良いかなぁとか考えたりしますね」
当たり前に仕事をこなそうとした女性が馬鹿を見る現実に憤りを感じてしまった。