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大自然からの恵みで失業生活をしのぐことを試みた男

地方の中小企業に勤務していた男性が、突然仕事を失ったのは5年前のことだ。

「ある日の勤務中に突然社員が集められて倒産することが告げられました。その前から、経営がヤバいのはわかっていて退職する社員も多かったのですが、逃げ遅れました」

会社都合での失職とあって、失業保険はすぐに受給できた。しかし、なかなかピッタリ合う仕事は見つからない。時間だけが過ぎて行く中で、男性は思わぬ手段に打って出る。

「失業保険も終わってしまう。仕事も見つからない。いよいよ詰んだなと思いつつ、近所の河原を散歩していて思いついたんです。そうだ、自然の植物や生き物を獲って暮らせば、当分生きられるんじゃないか、と」

住んでるのは家賃4万円のアパート。所有しているクルマは軽4。友達も少ないのでスマホは最低料金という倹約生活。失業保険もあまり使わずに貯金できていたという男性は、地方ならではの「自然の恵み」に可能性を見出した。

「食費を減らせるし、売ったりすればさらに貯金が目減りしなくなって心に余裕ができるんじゃないかと思ったんです。最初は、図書館で借りた本を参考に食べられる植物も探していたんですが、そこで川には意外に生き物が多いことに気づいたんです」

まず男性が試みたのは、「害獣の捕獲」だった。あまり知られていないが、農作物を荒らす動物を捕獲すると、農水省からの助成金がもらえるのである。

「河原には、ヌートリアやタヌキがよく出没しているのを見ていたのですが、なんと一頭捕獲すると1000円貰えるんです。でも、全然捕まりません。虫取り網を被せて押さえつければ簡単だと思ったんですが、無理でした。おまけに、見つけて近づこうとすると猛獣みたいに威嚇してくるので危険だと思ってやめました」

そこで、次に男性が考えたのは「釣り」である。

「近所の川には、ふなやすっぽんがたくさんいました。おまけに、うなぎも獲れるといいます。自分の父親が子供の頃は、それらを売って小遣い稼ぎをしていたという話を思い出して、さっそく試してみることにしたんです」

まずは試しにと、すっぽん釣りを試して見た男性は、たちまち3匹ほどを釣り上げた。

「これを、どうやって販売しようかと考えながら引き上げようとしていると、突然声をかけられました<遊漁券をお持ちですか?>と」

たいていの河川では、範囲や魚の種類を指定して漁業権が設定されている。一般の人が釣りを楽しむ場合には<遊漁券>が必要だ。近所の小川程度でも漁業権があるとは思わなかった男性は、あやうく「密漁者」になるところに。

「知らないではすまされないと怒られましたが、そのかわり色々と知識を得ることができました。つまり、漁業権の設定されていないところでは釣ったものを販売しても構わないわけですよね」

たいていの河川で、漁業権が存在しないのは下流のエリア。男性の場合もそうであった。

「すっぽんは高値になることはわかりましたが、下流ではほとんど獲れませんでした。そのかわり、ウナギは2日に一匹程度は釣れていました」

ちなみに、購入してくれるのはどういったところなのか?

「料理屋を何軒か回ると、確実に買って貰えました。すっぽんが一匹3000円程度。鰻がもっとも高い時で5000円。ただし、安定して釣れるわけじゃないし、いつも買って貰えるわけではないので、ずっと続けるのは難しいと感じましたね」

結局、秋も深まった頃に男性は、この狩猟採集生活をやめることにした。

「決して『儲かった』わけじゃないけれど、どんな状況でもサバイバルできる自身はつきましたね」

ちなみに、男性は今、再就職したスーパーで鮮魚担当になっているそうだ。人生、どんな経験が生きるかわからないものだ。

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