20代中国人に聞く「ココが変だよ日本の会社」(後編) 「まずは日本」でなく最初から世界をねらうべきだ
日本企業で働く若き中国人に話を聞く「ココが変だよ日本の会社」の第3回は、日本が国際競争力を上げるために何をすればいいかについて尋ねた。これまでは日本市場にある程度の勢いがあったので、「まずは日本」という発想が主流だった。
しかし日本でうまくいったものが、世界でうまくいくとは限らない。参加者たちは「最初から世界をねらうべきだ」と指摘。社内のルールも、まずは日本流に従うべきという考え方に異論を投げかけている。
会社は本当に「新しい風」を求めているのか
――日本の会社は、外国人社員に何を求めてるんだと思う?
D 私はまだ研修中だけど、会社は外国人社員に「新しい風を吹かせてください」って言っています。
B それ、研修のときだけだから! 本当に新しい風吹かせようとすると「内部告発」(離席の回数を上司に密告されるなど。前編参照)される。入るときには人事部とかに、「自分の国の長所を生かして」って言われたんだけどね……。
A そう! 新しい風を吹かせようとすると目立つ。会社のシステムが日本のシステムだから、意味がないのかな。
C 会社は日本人の社員が当たり前に思っていることに、日本人とは違う「外国人の考え方」みたいなものを入れるのを期待して入社させたのかもしれない。でも私たちがやると「それは違うんだよ」「こういうのが当たり前だよ」って返される。期待されたとしても、日本人は自分たちのやり方が正しいと思ってるから、「それは間違ってるよ。まずは日本のやり方でやってみな」ってなるんだよね。
A 「ここは日本だから」って言われるね。人事部の思いが会社に広がっていないんだよね。
B 人事部は採って終わり。もちろん日本にいるから日本のルールに従わないと、っていう認識は持っているけど、もっと許容度を上げてくれてもいいと思うよね。当初の話と違うんじゃないっていうのはよくある。
社員食堂にはインド人が食べられるメニューがない
――社内のグローバル環境の整備って進んでないの?
A~D 進んでいない。
C 私は社に1人だけ(の外国人)だしね。
B 人だけ採って、社内の環境が整備されてないんだよ。社内用のポータルサイトとか、日本語と英語ってあるんだけど、英語の方を見てみると一部の内容しか翻訳されていなかったり。Eラーニングとかの勉強システムにも、英語の資料だけ用意されていなかったり。
A 社内用システムが翻訳されていないのは、あるある!
D 私の会社、インド人が多いけど(社員)食堂に食べられるものがないかも。
B うちの会社もないかな。言ったら準備してくれるのかもしれないけど。前、インド人のインターンを担当したら、その子がベジタリアンっていうのもあるけど、サラダしか食べていなかった。
A 採った後、放ったらかしって感じだよね。人事部と現場の意思伝達が出来てない。
――グローバル化を進めるためにはどうすればいいと思う?
C 公用語を英語にするのは一例だと思う。社内が日本語のままで、外から入ってくる人も日本語を喋っていたら何も変わらないかなって。自分たちから何か変えないといけない部分もあるんじゃないのかな。すべての業界でベストではないと思うけどね。
D 承認までを短くする。中国は結構若い頃から意思決定ができるんですよ。日本は意思決定までのプロセスが長いですよね。
「日本だけの考え方」を捨てて欲しい。保守的すぎる
B 私は言語の問題とかではなくて、社員の意識が大事だと思う。仕事では同じ扱いするけど、飲み会だけ除外されたりってあるし。でも自分が外国人を受け入れる立場だったら、同じことをやってしまうかもしれない。中国人だけで固まってしまうとか。文句っていうよりは、こういうことが起こってしまっているって言いたいかな。
A 注意喚起したいよね。すごく気にしているってわけではないけど、受け入れる側に問題があるって意識がないから。意識しないとそもそも解決できないんじゃないかなって懸念があるよ。
――日本が国際競争力を上げるためにできることってあるかな?
B 企業には日本だけのやり方を捨てて欲しい。みんな保守的すぎる。
A 確かに。まず日本市場を確保してから外に出る、ってなってるよね。
B そういう考え方ってダメだよね。日本でうまく行ったからって世界で通用するというロジックは成立しないと思うし。逆に日本でうまくいったのに、海外でうまく行かなかった例が多いんじゃないかな。もし世界で通用したいなら、「まずは日本」という考え方を捨ててもらいたい。逆に外国人が、ここ(日本)でビジネスをするのは難しいかも。考え方とか審査の水準が全然違うから。よくそれで外国人の上司と日本人の上司が議論してる。すべてにおいて「日本ルール」があるんだよね。
ここで出世は難しいけれど「もう日本で幸せボケしてるかも」
C あと、日本で働いても、外国人はあまり高い役職には就けなそうだよね。
B 外国人の出世は難しいよね。外部から採った人が役職高い場合はあるけど、下からどんどん昇進していく外国人って見たことがないな。
――やっぱり外国人が日本で働くのって苦労しそうだよね。将来のキャリアプランってどう考えてる? やっぱり中国に戻るのかな?
C 中国にはチャンスが多いし、給与も上がりやすいし、昇進もしやすい。今中国に帰って2年経過するのと、日本に留まって2年経過するのだったら中国の方が給料は上がると思う。でも、まだ日本にいたいかな。どこかのタイミングでは帰るかもしれないけどね。
A しばらくは日本にいるなあ。転職は当たり前の業界だから、会社は変わるかもしれないけどね。
B 私も今のところ戻るつもりはないですね。日本に残って仕事をするか、また違う国に行くかも。
D そこまで考えてないですけど、Bさんと同じで、日本から他の国に行くことはあるかもしれないです。
――みんな会社では色々あっても日本に残るんだね。それはどうして?
B 日本の生活環境が好きだからかな。もう日本人化してる、って思うことあるよね。
C そうそう!中国から戻ってきたときに、成田空港のトイレに入ってホッとしたよ! 感覚とか考え方も日本人寄りになっている。中国にいると、もっと疲れるんだよね。中国で営業やるなら、お酒飲めないと受注もらえないし。もっと複雑。日本の方がシンプルかも。
A 働くにあたって多少疲れはするけど、それは日本の卓越した生活環境で癒されてる。
D 私も環境が好きです。日本は幸せボケしているっていうか……。
C あと、ちゃんと中国で働いたことないもんね、私たち。中国で働く方がもっと大変かもしれないよね。
あわせてよみたい:20代中国人に聞く「ココが変だよ日本の会社」(中編)