20代中国人に聞く「ココが変だよ日本の会社」(中編) なぜ私たちだけが「協調性がない」と言われるの?
「ココが変だよ日本の会社」前編では、中国人の若手社会人が日本で働く理由と、日本企業への違和感を取り上げた。続く中編でも引き続き、日本で働くうえで気になることについて様々な角度から語ってもらった。
外国人が多い職場では、日本人に近い東洋人と、見かけで大きく異なる西洋人とでは扱いが違うことが気になるようだ。厳しすぎる割に責任を果たさない上下関係や、行き過ぎた顧客第一主義についても首を傾げている。
「ガンダム」や「スラムダンク」が好きで日本に興味持つ
――話を聞いていて思うけど、みんな本当に日本語上手だよね。そもそも日本語を勉強しよう、来日しようと思ったきっかけって何?
A 中国に(普通の大学試験と別に)外国語系大学に入れるプログラムがあって、高倍率だけど受かったんだよね。専門を5か国語から選ぶことになって、親にはフランス語を勧められたんだけど、当時「(機動戦士)ガンダム」が好きだったこともあって日本語を選択したんだ。でも大学に行ってみると、4年生なのにカタコトしか日本語を話せない人がいて、話せている先輩に話を聞いたら1年間の留学経験者だっていうから「自分も行きたい」と思った。
B 中国の大学での専攻は日本語ではなかったんだけど、日本の大学との(複数の学位が取得できる)「ダブルディグリープログラム」があって。その担当が自分の論文指導の先生だったこともあって、興味が湧いて学部時代に一度留学したよ。プログラム自体は英語だったのもあって当時はあまり日本語を話せなくて、そのとき日本語を勉強し始めたんだ。
C アニメ、特に「スラムダンク」が好きなこともあって、大学で日本語専攻だったんだ。子どもの頃から(中国のテレビで)アニメがやっていたから日本語に馴染みもあったし。英語が好きだったから、もう一つ言語が出来たら世界は広がるのかなって思ったのも理由。それで、大学3年生のときに1週間、大阪にホームステイしたんだけど、みんな優しくて笑顔であいさつしてくれて。今まで日本に持っていた「堅そう」「歴史認識のズレがある」っていうイメージが変わって留学したいと思うようになった。
D 大学で日本語専攻だったんだけど、理由は日本語学部の寮がキレイだったから(笑)。来日のきっかけは、中国で大学3年生のときにインターンをしたときに「もっと世界を見たい」って思ったことかな。卒業後に留学するって決めて、色んな先輩から話を聞いたら「日本は治安が良い」って。費用もなんとかなりそうだったし。それで来日して、語学学校に半年通った後に大学院に行くことにしたんだ。
ハンコを押した人がちゃんと読んでいない不思議
――みんな結構勉強してるんだね。さっき、トイレの回数を数えられるって言ってたけど、ほかに何かおかしいところってあった?
C 上下関係が厳しいよね。それによるダブルスタンダードが、うちの会社はあるかも。打ち合わせが長引いて、次の予定に遅れたりするとき、すごい怒られる。でもその上司はバンバン(遅刻を)やってる。自分が待っていたときもいっぱいあるのに、そういうのがすごい嫌だなって思う。
B 自分が若手のときにそういう目に遭ったからって、下をいじめないで欲しいよね。
D あと、一つのことやるのにたくさんの人の承認が必要。いっぱいハンコを押さないといけないよね。紙信仰っていうか。
B ハンコを押した人が、必ずしも読んだとは限らないんだよね。後々問題があったら、結局責任を負うのは最初に書類を作った自分になる。「なんでそういう風に間違えたの?」って、でも「じゃあ読んだ人は何してたの?」って。私が押して、上司が押してって続いて行って、最後に部長のとこで引っかかって私のところに戻ってくる。で、もう一回作り直し。
A うちの会社はその点はマシかもしれないけど、効率の面でいえば確かに悪いな。例えば有休申請のシステムがあるのに活用されてない。システム上で申請しても確認していないから、総務部まで降りていって口頭でお願いしないとやってくれない。IT企業なのにね。日本企業は効率悪いのかも。
お客さんに「間違ってますよ」と言えないのはおかしい
C あと、日本って「お客さん第一主義」だよね。中国の場合はもう少し平等で、お客さんが間違っているのであれば「間違ってますよ」っていう風にやりとりできる。でも日本だと、先方の間違いでも「私たちの説明不足でした」って風に謝らないといけない。社内の人にお願いするときも謝っているから、基本毎日謝っているなぁ。
A 確かに。謝ることって多いね。
C あとは、やっぱりマナーかな。もう慣れたけど、お客さんを訪問後、絶対当日中にお礼のメールを出さなきゃいけないこと。最初分からなかったから怒られたよ。中国で半年インターンをしたことあるんだけど、中国ではそういうのは特にないんだよね。
それから去年、年賀状書くとき、3日間それぞれ3時間くらいかけて150枚の年賀状を書いたよ。それは自分が印刷の締切を過ぎちゃったから手書きっていう理由もあるんだけど(笑)。本当に礼儀正しくて、ていねいに仕事をしているからこその仕事量だけど、コア業務で本当に大事なことって半分くらいしかないんじゃないかな、って思っちゃう。年賀状は日本の文化だからしようがないとは思うんだけどね……。
西洋人が強く言うと「自己主張が強い」で通るのに
――外国人ということで、何か扱いが違うと思ったことってある?
B 敬語を間違えても怒られないってことはあるかも。先輩に厳しく言われることもあるけど、アドバイス的な感じ。
C え、敬語で怒られないのいいなあ! 私は基本、日本人扱い。かえって外国人扱いしてもらいたいときがあるかもしれない。仕事が営業だからだけど、コミュニケーション能力が求められて「今の言い方だとあなたの『申し訳ない』って気持ちが伝わらない」とか指摘をされる。日本人でもできてないところまで要求されることがあって、そういうとき、ちょっとイラッとするかも。
B でも、そのときのニーズによって日本人扱いや外国人扱いで分かれることはあるかも。
A そうだね! 採用のときそうだった。人事部の人はすごい海外志向強くて、「外国人採るんだ」って意気込んでて、外国人に「日本語全然喋れなくていいんですよ」って言うんだよ。だから同期に日本語カタコトな人とかいるんだけど、配属先の部署の人にはそういう思考がないから日本人扱いになって、「この人なんで日本語喋れないの? 外国人だとしてもコード書くのに日本語必要だし、ここ間違ってるんだけど」ってなる。それならそもそも、外国人採らなきゃいいじゃん、話が違うんだけどって思う。すごくムカついた。
B あと、外国人でも国籍によって扱いが違うっていうのがあるかも。西洋人が強く言うと「自己主張が強い」で通るけど、中国人が言うと「協調性がない」って言われる。
A 西洋人だと「そういう文化だから察してあげてね」っていう雰囲気があるっていうか。
C 中国人って、日本人と顔が似てるからかな。ヨーロッパの人には「外国人だからね」って優しくなったりするよね。ちょっとズルく思うときもある。
あわせてよみたい:20代中国人に聞く「ココが変だよ日本の会社」(後編)