長時間労働の反省から「ノー残業の化粧品会社」を起業 業務改善は「すべて社員の提案で」
3月1日の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)は、ノー残業を実現しながら売上をアップさせている化粧品会社「ランクアップ」の企業戦略に迫った。東京・銀座本社を午後5時に訪れた大浜キャスターが、社員がほとんど残っていないことに驚くと、社長の岩崎裕美子氏は自信たっぷりにこう言い切った。
「私たちの会社は、残業しないで売り上げを上げる会社なので!」
定時帰りなのに「不平不満が蔓延」した頃も
同社は30~50代に人気の化粧品ブランド「マナラ」を展開し、去年の売上高は75億円。創業以来10年間、右肩上がりで成長を続けている。社員42人のうち40人が女性で、半数以上が母親。社長も1児の母であり、残業をなくして母親が働きやすい職場を作っている。
2014年には、東京都主催の「ワークライフバランス2014育児・介護部門」にも認定された。しかし会社設立前、広告会社で取締役を務めていた岩崎さんは、終電まで働く長時間労働が当たり前。当時、こんな思いを抱いたことを振り返る。
「自分がいずれ結婚して出産したら、早く帰らなければいけなくなる。もし出産して早く帰るなら、私の居場所はもうないと思った」
会社に働きかけても改善されなかったことから、岩崎さんは独立し、2005年に同社を設立。女性がずっと働ける職場を目指した。
ノー残業にこだわり、社内メールは「お疲れ様です」を省いて用件のみ。社内資料はパワーボイント禁止、エクセルへの着色も禁止し、ワードで10分で作るようになった。会議のスケジュールは、空きがあれば社長であっても社員が勝手に予定を入れられる。
業務の無駄を省く工夫は、すべて社員のアイデアだ。社員が「改善提案書」を提出すると、採否にかかわらず1件あたり500円を支給。去年1年間で600件の提案があった。ただし最初はノルマもない「ホワイト労働」なのに、なぜか不平不満が蔓延していたという。
社員の評価や顧客対応にエネルギー注ぐ
売上好調、残業ほぼゼロ。それなのに社内が暗くなってしまったのはなぜか。それは社長が自らの目指すところも伝えず、ただ仕事を与えていただけだったから。社員が企画を出しても改良して社長の企画にしてしまうなど、社員の気持ちを考えていなかった。
上から言われるだけでなく、社員1人1人が納得する必要があったのだ。このあたりの詳しい理由は、ダイヤモンドオンラインに岩崎社長が連載していた「ほぼみんな定時退社で伸びる会社」にも書かれている。この中には当時、研修中に「会社は私たちをまったく認めてくれていない」と泣き出す女性社員がいたことも書かれている。
このような反省から、社員を作業員のようにさせず、一人ひとりの提案で会社が変わることを証明してきた。新入社員が出した提案書にも、手放しで賛辞を贈る。不評だったら変えることもできるのであり、「とりあえずやってみる」ことが重要なのだ。
エネルギーを掛けるところと掛けないところの、メリハリが利いている。業務の効率化は徹底しているものの、客からの要望やクレームハガキなど顧客対応には時間を惜しまない。岩崎社長は、こう断言する。
「誰がやっても同じ成果が出る作業は、簡素化やアウトソーシングした方がいいが、お客様からの意見は私たちにとって財産なので、すべて読みます」
「ほとんどが女性」の会社にもメリットあるのでは
「あれもダメ、これもムダ」と言われる環境では、社内の雰囲気はギスギスしてくるのではないかと思ったが、そうではなかった。言ったことが否定されず、一定の評価が得られるという安心感もまた、会社が好調な理由なのだろう。
女性の多い職場は、派閥などができてマネジメントしにくいという意見も聞く。しかしこの会社が男性社会の古い慣習に捉われず、他人の意見を取り入れながら成長できたのは、女性社長のもと、ほとんどの社員が女性という点も成功の要因になったのではと感じた。(ライター:okei)
あわせてよみたい:「男:女=49:1くらいがいい」と感じる女性社員