「賃金支払いは1分単位」で議論紛糾 「トイレに行っても減給が筋」の主張が炎上する事態に
このニュースに対しては、ある社会保険労務士が3月17日の朝に「違和感」をまとめたブログを公開。「悪質な労基法違反は改めさせて当然」としつつ、
「1分単位で残業代を支払うなら、トイレに行っても減給が筋」
「1分単位の残業代は職場の交流も奪う」
「労働協約を結んだ高校生は成長の機会を失った」
などと協定に否定的な内容だったことから、読者から「割と本気で社労士が日本の会社を弱くしているのではないかと思い始めてきた」「社労士って労働者を鬱にさせたりトイレいかせたがらなかったりクズばっかなん?」などと批判が殺到し、炎上する事態となった。
筆者は「一部誤解を与える表現があった」として、同日夕方に大幅に書き換えを行ったが、読者の中には「誰も誤解していない」として、釈明を求める声もある。
労働時間を月単位で切り捨てや切り上げすることは、給与計算の事務の煩雑さを回避するために実務上認められているものの、1分単位で給与を支払うことは労基法上の大前提である。高校生の主張に誤ったところはない。
しかし今回の報道に「違和感」を抱いているのは、この社労士だけではないようだ。ネットには、同じように批判する書き込みが散見される。
「大した仕事もしてないくせに小さいやつだ」
「こいつは社会に出て先輩に完璧に嫌われますね」
「権利の主張も行き過ぎれば、面倒な人間を雇わなくなる」
識者が指摘「定時にあがれば『変なもの』を計算せずに済む」
このような批判に対し、労働協約の締結にかかわったブラックバイトユニオンの坂倉昇平氏は、ツイッターで憤慨している。
「彼のおかげで従業員70名に未払い賃金500万円が払われてる。500万円を盗んだ企業ではなく、取り返した学生を叩く大人が多いようじゃあ日本からブラック企業なんてなくならないはずだわ」
高校生も会見で、労基法違反が平然と行われている現状に対する不満があったと語り、弁護士ドットコムがコメントを記事に取り上げている。
「『労働基準法なんて知らねーよ』みたいな、そういう会社が多すぎるのが腹立たしい。きちんと働いて、きちんとお金をもらうという、ちゃんとしたものが成り立っていない社会に僕は出ないといけないのか、という苛立ちがあった」
とはいえ、1分単位の時間外労働を管理することなど割に合わないという考えもあるだろう。ITシステムで実現しやすくなったとはいえ、どこか違和感を抱くのも無理はない。
この点について、労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏は自らのブログで「労働時間がちゃんと区切りのいい単位をはみ出さないようにしておけば、1分単位の時間外労働なんていう変なものを計算しなくて済む」と指摘。「定時(所定時間)」で仕事を終わらせればよいとの考えを示している。
「残業は月35時間ほどで、ほぼ定時に退社」のおかしさ
時を同じくして、ネットにはある企業の求人広告らしきものが、さらしあげに遭っている。そこには「定時退社可能」「残業はほぼなし」とあるものの、説明文には「残業は月35時間ほどで、ほぼ定時に退社」と書かれているのだ。これを見た若い人たちからは、呆れる声が飛んでいる。
「ふむ。つまり毎日2時間程度の残業じゃ定時扱いということですね?」
「社畜あるあるwww」「ニホンゴイミワカリマセーン」
このような「定時」や「残業」に対する根本的な認識のズレが、今回の労働協約報道に対する筋違いの批判につながっているのかもしれない。
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