いざ入社してみると、事務員は女性の他に1人しかおらず、パートタイムで不在がち。社長や他のスタッフは現場に出ているため、分からないことがあっても聞ける相手がいなかった。
さらに、会社から命じられたのは事務とはかけ離れた業務だった。
「『どんな資材を扱ってるかの勉強のために、先輩が教えるからついて行って』と作業着(自前)にヘルメットを被って、一緒に重い資材を運搬したり、気分が悪くなるほどの塗装作業を朝から晩までさせられる等が続いて疲労困憊」
「勉強のため」と言われれば、新人は拒否しにくい。それを見越しての指示だろうが、1日中現場仕事をさせるとは、やり過ぎだ。
慣れない肉体労働で疲れ果てる上に、現場では他社の作業員から「やる気がない」「指示待ちしてないで動いて」と叱責される始末。本来の業務である事務仕事は一向に覚えられず、まともに教えてもらえる環境でもなかった。
結局、女性は退職した。募集内容と実際の業務が大きく乖離していれば、社員が定着しないのも当然だろう。
「これじゃ、話が違いすぎるし、人が育たないのも納得と思った会社でした」
と、うんざりした様子で当時を振り返った。


