「制御できるはずなのに、身体が勝手にゲームをしてしまう」 若者世代の健康を蝕むネット依存症の悲惨な実態
9月13日放送のNHK総合「おはよう日本」に国立病院機構、久里浜医療センター(神奈川県)で依存症の診療を行う樋口進医師(院長)が出演。若者のネット依存が「健康や成長に悪影響を及ぼす恐れがある」と警告し、こう語りました。
「重症のアルコール依存症と薬物依存症に引けをとらないくらい、依存の状況がひどい」
樋口医師は、若い世代がネット依存症に陥ると、「睡眠時にでる成長ホルモンの出かたが悪くなる可能性があり、全般的に体の発育が遅れる」と、その危険性を指摘。ネット依存症の基準として以下の項目をあげていました。
・インターネット使用のコントロールができない
・インターネットが生活の中心になっている
・(健康面で)明らかな問題が起きている
ただ、ネット依存症を診断するガイドラインはまだなく、現在、樋口医師らはWHO(世界保健機構)と相談しながら作っているとのこと。世界的にも大きな問題となっているようです。
ネット依存症を克服した大学生のBさん(23歳)が、番組で経験を語りました。多い時では1日14時間パソコンの前にいる状態が、2年間続いたそうです。当時の体重は48キロで、成人男性としては極端に痩せています。病院で身体検査をすると、どの数値も40歳~50歳代と言われました。食事もとらずにネットゲームを続け、栄養状態が極端に悪くなってしまったのです。
スマホやゲーム機を自分の部屋に持ち込ませないことも大事
原因はやはり精神的なところにあるようです。大学へ入学して東京で一人暮らしを始めたBさんは、慣れない生活と心を許せる友人がいない中、リアルの世界よりもネットゲーム上のチームが自分の居場所として大きくなっていったと言います。
「自分自身で制御できるはずなのに、体が勝手に動いてゲームをしてしまう」
その後、家族のすすめから病院で診断を受け、身体検査やカウンセリングによって自分の現状を把握することができました。自身でおかしいと気付き、治そうと努力する気持ちが持てたのも、彼を思いやる家族の存在が大きかったことでしょう。
樋口医師は、依存の治療で一番大事なことは「本人が変えなければいけないと思って行動し始めるまで、サポートしていくこと」だといいます。重症になれば病院での治療が必須のようですが、そもそもBさんをとり巻く人間関係がうまくいって、大学生活自体が楽しければ、極端なネット中心の生活にはならなかったかもしれません。
また、家庭内での予防策としてスマホやゲーム機器を自分の部屋に持ち込んで使うと依存が進むため、「使う場所をみんなの共有スペースだけにする」との助言もしていました。これを思春期の子どもに強いるにはなかなか難しく、それができれば依存症は増えていないのでは…と唸ってしまいます。
先日別の番組で、「お父さんが帰ってきてもずっとスマホをやっている」と12歳の男の子が不満を漏らしていました。親がずっと使っていれば説得力もないので、家族みんなが使用時間を抑え、家族の時間を大切にする必要があるのでしょう。