もしかして発達障害?―「強いこだわり」に「異常な記憶力」、息子の障害に気づいた瞬間
私が彼を出産したのは、23歳のとき。専門学校を卒業し、幼稚園に就職した年に結婚。それから数年後に授かった待望の赤ちゃんでした。
その翌年には娘を出産し、年子のママに。そして彼が2歳、彼女が1歳のとき、シングルマザーへと転身したのでした。
2児との共同生活は想像を絶する目まぐるしさだったものの、日に日に人間らしくなっていく成長ぶりを見て感動。ただ、ちょうどそのころ、息子の様子にちょっとした違和感を覚えるようになりました。まるで犬みたいに、鼻をモキュモキュと動かすんです。
親の離婚という環境の変化に対し、幼いなりに受けた精神的ダメージがチックとなって表れているんだろうと、しばらく様子をみていましたが、なかなか治まりません。注意深く見ていくと、他にも様々な場面で「おや?」と感じることがありました。以下ほんの一例を。
■とにかく寝ない。お昼寝必須の年齢にもかかわらず、スタミナ切れで行き倒れるまで寝たがらない。連日寝かしつけに1時間以上を要し、ようやく寝たからと添い寝を離れると、わずかな振動や物音で目を覚ます。
■ミニカーや電車など、彼の所有物を棚に並べる順番が決まっていて、少し触っただけですぐに気づく。
■自分なりのルールがはっきりしている。例えば「ピンクは妹の色」だったらしく、ピンクの物はすべて妹のおもちゃ箱へ。哺乳瓶も妹が使っている姿をみた瞬間から一切咥えなくなり、渡すと妹の口へ差し込んで「哺乳瓶は赤ちゃんが使うモノ」と訴えたことも。まだ言葉もしゃべれない1歳児だったのに。
■興味がある物事には驚異の記憶力を発揮。恐竜、昆虫、電車は全種、ほぼ一度で特徴と名前を憶えました。階段上に設置したベビーゲートの複雑な開け方もすぐに覚え、購入直後に無用の長物となったことも……。
■何かに関心を持ったら、即行動。常に全力フル稼働している感じ。没頭しているあいだは何時間でも集中できる。
これ、もしや……。そう思ったのは、専門学校で得た知識と、たまたま幼稚園で発達障害のあるお子さんを受け持ったことがあったから。とはいえまだ2歳。ただの成長過程かもしれないので、心づもりだけはして見守ることにしました。
小学校では「ユニークな子」と受け入れられたけど……
幼稚園や小学校など集団生活を迎えるころには、「息子は発達障害かもしれない」という疑念が確信に変わっていきます。
■一度にたくさんの情報を処理しきれず、話が長いと理解できない。
■特定のひらがなは小学校中学年になっても鏡文字。
■一日の出来事を事細かく話し、要点をまとめられない。
■遠足が雨で延期など、楽しみにしていた予定が狂うと泣いて怒ってもう大変。
といった一般的によくいわれる症状はコンプリート。そのうえで、洋服のタグはすべて切る、味覚・嗅覚・触覚・聴覚が超人的、こだわりが強いなど、彼なりの特性も発揮するように。チックの症状も場所や出方が移り変わりながら続いていました。
ただ、チャイムを合図に授業と休憩が入れ替わるシステムは彼に合っていたらしく、授業中は座っていられたようです。また、ゆるキャラっぽい顔と性格がマッチしたのか周囲にも「ユニークな子」として受け入れてもらえ、友だちに揉まれながら年相応の男の子らしさも少しずつ身につけていきました。
そうして友だちとの関わりが増えると当然トラブルもつきもので、彼自身も感情のコントロールに苦しむことが増えていきます。私ひとりの対応に限界を感じて専門医を訪れたのは、小学校4年生のこと。そこで先述の診断が下ったのです。
症状は千差万別で、性格とボーダレスなところもあるので「こんなパターンもあるんだよ」という程度ながら、お子さんやご自身に対しモヤモヤを抱えているかたの参考になれば幸いです。