「ガイアの夜明け」再びブラック企業特集が話題に 「アリさんマークの引越社」が出した和解案は「自転車で営業職しろ」
そもそも、同社社員・小栗健さん(仮名・36歳)が、2015年に訴えを起こした理由は、労働環境の劣悪さだ。月の総労働時間が342.8時間、残業147時間という長時間労働なのに給料は27万円余り。帰って寝るだけの疲労困憊状態で、事故を起こすと48万円の弁償金を負わされた。会社が加入しているはずの保険の説明など一切なかった。
「借金がどんどん膨らんでいって、辞められない状況になる。『アリ地獄』と呼ばれています」
疑問を持った小栗さんは、労働組合プレカリアートユニオンに加入して賃金未払いなどを訴えた。実は同社を訴える元従業員たちは各地に40人以上いるという。そんな中、小栗さんは突然シュレッダー係に任命される。営業職で関東1位の成績であるにも関わらず、たった2回の遅刻が異動の理由だ。その後懲戒解雇となるも、裁判所に訴えると解雇は撤回された。
だが、前回の放送から1年、小栗さんはまだシュレッダー係のままだった。給料は営業だったころの半分だが、他の従業員たちのためにも、会社を変えたい思いで頑張っていたのだ。
不当人事についての裁判では、「いつまでこれを続けるんですか。弁解する余地はあまりない」という裁判長の厳しい指摘もあり、会社から和解案が示された。ところが書類には、「3月から営業専任職として勤務する」という文言のほかに、
「勤務時間中の移動は、公共交通機関及び自転車を使用する」
という但し書きがあった。引越社の営業は、客の家へ見積もりを取りに行き、大量のダンボールを運ばなくてはならない。それを、社用車を使わずバスや自転車でやれというのだ。本当にただの嫌がらせである。
「経営者はいつか滅びること間違いない」
失望した小栗さんは和解案を拒否したが、今年5月、裁判所の奨めもあり一部和解が成立した。
「異動は社会的相当性を欠くものであったことを認め、謝罪する」
として、6月から営業専任職として復職するとともに、車の使用も認められている。小栗さんは、「すごくワクワクしています。ようやく戻れるのと…お客さんと早く会って話したいですね」と語っており、これが「涙出るよ。会社の宝じゃん」など、ツイッターでも評判になっていた。
「こんなに正義と向き合い信念を貫き通せる素晴らしい社員をもっていて最高に幸せだと感じられない経営者はいつか滅びること間違いない」
しかし、まだ裁判は終わっていない。残業代や未払い賃金、弁償金の問題などは引き続き争われている。
懲りない企業側、ブラック企業たる所以か
番組ではそのほか、大手飲食チェーン「しゃぶしゃぶ温野菜」のフランチャイズ加盟会社DWE JAPANを相手取り、賃金未払いやパワハラを訴えた元アルバイト店員の大学生も紹介。店舗は既に閉店して証拠がないとするDWE JAPANだったが、弁護団が丹念に調べると122日間の連続勤務と月438時間の長時間労働の実態が明らかになった。こちらは審議中で、来年判決が出る予定だという。
労働者の訴えに対して迅速に未払い賃金を支払った企業は、それほど評判を落とさずに済んでいる。一方で、裁判が長引くだけ損失が大きくなるのは、長い目で見れば企業側ではないのかと不思議に思う。残念だがそうした対応をしてしまう所が、ブラック企業たる所以なのだろう。
一年半の嫌がらせ配置にも負けず、やっと営業に戻れたら「これでまたお客さんと話せる」と笑顔で言う。こんなに正義と向き合い信念を貫き通せる素晴らしい社員をもっていて最高に幸せだと感じられない経営者はいつか滅びること間違いない。#ガイアの夜明け
— サマンサ (@samansa_who) 2017年7月25日
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