「過労死防止法」で初のシンポジウム開催 川人弁護士が「連続11時間の勤務間インターバル規制」を提言
東京・千代田区の厚生労働省講堂で2014年11月14日、厚労省が主催する「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催された。11月1日に施行された「過労死防止法」の周知を図るのが狙いだ。
基調講演では、登壇した川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)が、この法律を「日本経済健全化の鍵」と評価し、具体策として「勤務間インターバル規制」の導入を提言している。
ILOも批判「日本人のマジメさがゆがんでいる」
川人弁護士は、日本人の間に「過労死」が広がった原因として、「日本的経営システムの中に長時間労働が組み込まれてしまった」と分析。高度経済成長下での「脳・心臓疾患による突然死」の頻発や、バブル崩壊後の雇用不安ストレスによる「精神障害による自殺」の激増が、これを象徴しているとする。
精神障害による自殺の労災認定件数は約60件にとどまるが、警視庁の調べによると勤務問題が原因となる自殺は2013年に2323件起きているという。川人弁護士は、過労死は表面化しているケースよりもずっと多いと指摘し、
「過労死防止は日本経済健全化の鍵と言っていい」
と、今回成立した過労死防止法の重要性を訴えた。そのうえで川人弁護士は、EUで導入されている「勤務間インターバル規制」の導入を提言。1日24時間のうち最低11時間は「連続した休息」を取らせることで長時間労働を防止するもので、「このような規制を我が国も近々に採用すべきだ」と訴えた。
超党派議連の代表として挨拶した馳浩参院議員は、オリンピック招致の際にILO(国際労働機関)から「KAROSHI(過労死)は国際用語になってしまった。日本人のマジメさや勤勉さがどこかでゆがんでいる」と批判を受けたことを明かし、こうメッセージを送った。
「国内に戻り、改めて議員や弁護士、過労死家族会等の仲間のみなさんと議論を重ねて、絶対にこんなことは2度と起こしてはならないし、させてはならないと実感した」
厚労相も「企業への働きかけの強化」明言
シンポジウムの冒頭には、塩崎恭久厚生労働大臣が登壇。日本再興戦略には「働きすぎ防止」が重要な課題となっており、過労死防止には強い使命感を持って取り組むべきと強調し、
「現在、長時間労働削減推進本部を設置し、過重労働の撲滅に向けた取り組みや働き方の見直しに向けた企業への働きかけの強化を進めているところだ」
と、具体的な規制に向けた動きが進行中と明かしている。
過労死防止法はいわゆる「基本法」で、過労死対策が「国の責務」であることを法案で初めて明記した。国に過労死の実態に関する調査・研究や、総合的な対策の推進を義務付けたもので、具体的な防止策は労使の代表者や専門家、過労死遺族らによって協議されることになっている。
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