ユニクロ全面敗訴に『ブラック企業』著者 「私への脅しについて謝罪してほしい」
ユニクロを展開するファーストリテイリングが、ジャーナリストの横田増生氏による「ユニクロ帝国の光と影」(2011年3月刊)を発行した文藝春秋に2億2000万の損害賠償を求めて起こした名誉毀損訴訟で、最高裁判所は2014年12月9日にユニクロ側の上告を退けた。高裁の二審判決は請求をすべて棄却しており、ユニクロ側の全面敗訴が確定したことになる。
記事の内容は国内店舗や海外工場の過酷な労働環境を記したもので、今回の判決でその「真実相当性」が認められたことになる。ただ、ユニクロの「2億円超」という高額訴訟には、もともと批判者を萎縮させるための「嫌がらせや恫喝が目的だったのでは」との批判もある。
ブラック企業批判に対し「警告申し上げます」
同じ文藝春秋から12年11月に「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(文春新書)の著者、NPO法人POSSE代表の今野晴貴氏の元にも、ユニクロからの「警告文」が送られてきたことがあった。
書籍では「衣料品小売り大手X社」に勤務していた女性を取材し、「ほぼ毎日14時間も拘束された」「1年目の新卒がうつ病で、次々と辞めている」といった「過酷な労働条件」を指摘している。
「具体的な事例を通じて、若年労働問題を分析し、その問題の解決策を探るのが目的」だったことから、この企業の実名はあえて出していない。
その数ヶ月後の13年3月、5枚に渡る「通告書」の入った配達記録郵便が送られてきた。通告人は「ファーストリテイリング」と「ユニクロ」で、代理人弁護士6名の名前が連名で入っていた。
「通告人会社らに対する虚偽の事実の摘示や違法な論評などを二度となされませんように警告申し上げます」
「貴殿が、通告人会社らに関して誤った発言や記述を続けられるようであれば、通告人会社らは、通告人会社らの社会的評価を貶めた本書籍の発行に関する責任も含めて、貴殿の法的責任を厳しく追及させていただく所存ですので、その旨お含みおきの程、宜しくお願い申し上げます」
高額訴訟は「取材当事者の恐怖を誘う」
その後、今野氏は13年11月に「ブラック企業ビジネス」(朝日新書)を刊行した。
この本の中で、今野氏は「ユニクロ帝国の光と影」に対する2億円訴訟は、「脅し」が目的だったのではと推測している。国や大企業など資金力のある団体が、個人などに高額訴訟を起こすことは「SLAPP(スラップ)訴訟」と呼ばれるが、ユニクロの訴訟もそれに該当するのではないかというのだ。
「個人を狙い撃ちにすることで、取材当事者の恐怖を誘い、結果として公平な取材活動や研究が成り立たないようにする。『ユニクロは高額訴訟を仕掛けてくる』という事実そのものが威力を発揮する」
実際、「ユニクロ帝国の光と影」の著者の横田氏は、自身は「訴外」だったものの、2年に渡る訴訟で「疲弊し切った」とMy News Japanの記事で明かしている。
ユニクロの柳井会長は全面敗訴確定後の12月19日、新卒向けに開かれた説明会で自社を「ブラック企業でない」と否定し、「サービス残業、パワハラ、セクハラに厳しい対応をしている」と明言したと報じられている。朝日新聞は講演後の取材で、柳井氏がこう話したと報じている。
「昔の我々の会社には、ブラック企業のような部分もあったと思う。それはなくなってきた」
「職場環境の改善が進んでいることに期待」と今野氏
この報道を受けて、今野氏は20日のツイートでこう見解を述べた。
「柳井氏が『昔の我々の会社には、ブラック企業のような部分もあった』と認めた。ならば、2億円の脅迫訴訟や、私への脅しについて謝罪してほしい」
今野氏の書籍を「誤った発言や記述」と決めつけ、警告してきた企業の経営者の発言として、そのまま信用してよいかどうか疑問もあるかもしれない。しかし今野氏はキャリコネニュースに対し、これからの取り組みを見守りたいとしている。
「今後、POSSEとして(ユニクロに)働きかけを行う予定はありませんが、柳井氏は過去の問題を認める発言もしていますから、職場環境の改善が進んでいるものと期待しています」
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