今年の「既卒・第二新卒」どんな感じ? 専門カウンセラーは「悲観する必要はない」と断言
2016年卒の就活に号砲が鳴ったが、15年卒学生にもまだ苦戦している人がいる。厚労・文科省合同の調査によると、12月時点での大学生内定率は80.3%。数字は改善しているが、依然として就職希望者の約8万人が内定を得られていない状況もあるという。
辛くも内定を得て入社しても、大卒者の3人に1人(32.4%)は3年以内に離職することが厚労省の調査(2014年)で分かっており、全体の13.4%は「1年以内」に離職している。若者たちにとっては、とても厳しいデータだ。
とはいえ既卒・第二新卒の状況は、マスコミがこぞって特集する新卒と違って見えづらい。どのような現状があるのか、既卒・第二新卒に特化した人材紹介「第二新卒ナビ」を運営するUZUZ(ウズウズ)社のキャリアカウンセラーに聞いてみることにした。
中小・ベンチャーから新卒採用は変わっていく?
就職情報サイト「日経就職ナビ」を運営するディスコの調査(2015年度)では、卒業後3年以内の既卒者を「受け付けている」と答えた企業が66.0%だったが、「既卒者に内定を出した」企業は14.2%に留まる。
2012年度の同調査ではそれぞれ56.0%・7.8%だったことと比べると、双方の数字は伸びているが、新卒と比べると厳しいと言わざるをえない。
その一方で、既卒者にも明るい材料がある。従来の就活スケジュールでは3年の3月に内定が出ていたが、今年から選考が4年の8月に始まるので、「新卒が採用できなければ既卒を」と考える企業が増える可能性もある。キャリアカウンセラーも、こう指摘する。
「現状、門戸は開いていても大手は採用してくれない企業のほうが多いですね。どうしても新卒優先で採用が進んでしまうので…。とはいえ、今年からの後ろ倒しで、既卒者と新卒者で就活開始の足並みが揃います。なので、既卒を対等に見てくれるような環境は整ったかなと思います」
「後ろ倒し」によって、大手採用終了後に行っていた中小・ベンチャー企業の採用活動期間が約半年と短くなる。このため、既卒・第二新卒を対象に早めに内定を出す企業が増える可能性もある。優秀な第二新卒に対する大手の期待も高まっているようだ。
「『大手ではぬるすぎる』といって、入社後すぐに辞める優秀な第二新卒も出てきているし、企業も『本当に自社の社風に合う優秀な人を採用したい』というニーズが高まっている。新卒のアドバンテージは、徐々に下がっているといえるかもしれません」
既卒・第二新卒には「意外と優秀」な人もいる
では、どんな人が企業から評価されるのだろうか。かつてのイメージでは、既卒は「就活をサボっていた」、第二新卒は「新卒で入った会社で脱落してしまった」といった悪い印象を持たれがちだったが…。
「いや、意外と優秀な人は多いんです。ただ、就活のノウハウやメソッドが分からなかったという人は多いですね。そういう人は、理想と現実のギャップさえ埋めてあげれば、すぐに内定が出て、割とうまく良い企業に就職できます」 「大手に行きたい、マスコミに行きたい、と皆さんよく言うんですが、実際にカウンセリングすると、実は周囲とか就活本とかに流されているだけのことが多いんですよね」
カウンセリングでは「なぜ結果が出ていないか」について要因を探る。たとえば、海外でのワーキングホリデー体験や短期留学をしていた学生は、よく「英語を仕事にしたい」という。しかし、外資系企業や商社を受けても内定が出ない。
そうした人は「手段が目的化」しているのだという。商社であれば、英語は手段であり、あくまで求められるスキルは営業力だ。そうした企業の面接で半端な英語力をアピールしても、「ネイティブや留学組と勝負できますか?」ということだ。
「シンプルに『なぜ?』と5回くらい聞いてみると、答えられないケースが多いんです。大手や公務員を目指すのが当たり前と思っていた人に聞くと、『安定』とか言うんですよ。『クビがないから』とか。でも、もし法律が改正されて解雇ありになった場合はどうですかと。組織や看板が安定しているだけで、個人は一切安定してないですよね、というと、納得してくれることが多いです」
そうやって、周囲や建前に邪魔をされていない「ホンネ」を引き出していく。そこから本当に「譲れない」と思う条件に優先順位をつけて、その条件にあった求人を紹介していくのだという。
「成長意欲が高い」と評価する企業も
ただ、そうは言っても、「どうしようもない人」は来ないのだろうか?
「いや、来ます。『働きたくない』とか、公務員志望で『民間には就職したくない』とか(笑)。でも、会ってカウンセリングできれば、9割以上は内定が決まっていますね。僕らは相談にいくらでも時間かけますから」
実際、応募者に30時間、40時間かけることも少なくないという。一般の人材エージェントであれば「時間をかけすぎだ」と上司から叱責されてしまいそうだが、企業と応募者双方からニーズがある以上、このスタンスは変えないと話す。
「既卒や第二新卒の方は、周囲に同じ悩みを持つ人が少ないので孤立しやすい。かといって、家族や友達に相談できないこともありますよね。逆に赤の他人だから相談できることもある。そうやって理解を深めていくことが、何より重要だと思っているんです」
採用する側のニーズは多様化してきている。リクナビやマイナビに代表される新卒一括採用から通年採用に変わり、柔軟に門戸を広げる大手企業も出てきた。むしろ既卒や第二新卒を「追いつこうと自覚している分、成長意欲が高い」と評価する企業もあるそうだ。
既卒や第二新卒になったからといって、自分の希望を叶えられないわけではないし、むしろ自身にとって良い選択ができる可能性すらあるかもしれない。
「だから悲観しないでください、と本当に言いたい。道はたくさんありますし、企業で活躍している既卒・第二新卒もたくさんいます。相談するところがなければ、いくらでも相談しにきてください」
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