他人の失敗を見ているうちに「自分のアイデア」が生まれる:ビジネスデザイナー細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方 (4) | キャリコネニュース
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他人の失敗を見ているうちに「自分のアイデア」が生まれる:ビジネスデザイナー細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方 (4)

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

ビジネスデザイナーの細野真悟さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

リクナビNEXT編集長やリクルートキャリア執行役員を経て、現在はフリーのビジネスデザイナーとして活動する細野真悟さん。自らの挫折経験を踏まえ、新しいビジネスを作ろうとする人の実践型コミュニティ「Fukusen(フクセン)」を運営している。

インタビューの4回目は、「失敗」への向き合い方について。Fukusenでは事業化に成功したアイデアはまだない。それでもメンバーは多くのことを学んでいると細野さんはいう。それはどういうことなのか。聞き手は株式会社グローバルウェイ取締役の根本勇矢。(構成:キャリコネニュース編集部)

「事業立ち上げ人」として成長する時間を取って

――前回は、サラリーマンがビジネスを学びながら実験できる「Fukusen(フクセン)」のしくみについてお聞きしました。しかし、まだ成功例が出ているわけでもないし、どちらかというと失敗が続きそうですよね。

細野:ええ。僕はFukusenを「しくじり先生ファーム」って呼んでいるんです(笑)。ここで失敗しても、会社の評価は下がらないし、人の失敗を見て学べる。時間をかけていいから、「事業立ち上げ人」としての自分を成長させる時間を取ってくれと。むしろ、いきなり一発で当てない方がいい。

しかも、払っている1万円は、アイデアを思いつけば回収できるチャンスがある。「時間を味方につけて戦うこと」が企業に対する最高の対抗策です。スケールするのに時間がかかることは、企業はやらない。でも個人は、サブであればやれるんです。

――会費も5年間で5~60万円くらいだとすると、英会話スクールやプライベートジムと同じくらいか、それより安い出費です。

細野:ひとつの実験に30万円くらい使っていいんだから、どう考えたって得でしょ。本当はもっと人が殺到してもいいと思うんだけど(笑)、まだ「概念」が正しく伝わっているとはいえないんでしょうね。

――リアルな人のやりとりを通じて、アイデアが練り上げられたり却下されたりを見ているのは、座学的なインプットと違って、スポーツ観戦のような感覚でも楽しめそうです。

細野:実際、見るだけで面白がって毎回参加してくれる人も多いです。でも、見ているうちに「あれ、だったらこういうのもいけるかも?」って思いつくタイミングが来るのではないかと期待しています。

「やりたい」という思いがあれば助言できる

メンバーと細野さんのビジネスアイデアの壁打ちを別のメンバーが聞くことができる

メンバーと細野さんのビジネスアイデアの壁打ちを別のメンバーが聞くことができる

――とはいえ、ビジネスアイデアを自分で持って来られる人ばかりではないですよね。

細野:そうですね。最近は新しいやり方を2つやっていて、1つは漠然と「旅行系でなんかやりたい」というのだけでもいいから、それを言ってくれたら僕がたたき台を考えるサービスをやっています。「カメさん枠」って呼んでいるんですけれども。

「やりたい」っていうその人思いがあれば、1000万円くらいのちょうどいい、競合がやってこないアイデアはこうだっていうのを僕が一緒に考えて、それを気に入ったら自分でやっていいよ、というやり方です。

もう1つは「思考力トレーニング」です。たとえば「自分たちの親世代をターゲットにしたビジネスを考えよう」という共通のお題を出し、参加者全員が30分でGoogleドキュメントに思考プロセスを書いていきます。

そして、残りの30分で他のメンバーが書いたものを読みまくります。この方法によって、他の人はどうやってビジネスを考えようとしているのか、自分にはどんな思考プロセスの癖があるのかを学ぶことができます。

これは僕も同時にやるんです。僕がどういう順番で考えて、どういう結論になるかのプロセスを公開します。そうすると「なるほど、先にマーケット規模を考えてるんだ」とか、考え方のHOWのところを覗くことができるので、初心者はまずここから参加して、エントリーできるようにしています。

――「カメさん枠」で形になりそうなものはありましたか。

細野:元歯科技工士の会員の男の子がいます。歯科技工士は、歯のかぶせ物や入れ歯、歯列矯正装置などの「歯科技工物」を作るのが仕事ですが、実は型のとり方や歯の削り跡で、どの歯科医の腕がいいか、すごくよく分かるらしいんですね。

「ビジネスになりませんか?」というネタの持ち込みも

スモールグッドビジネスの隙間はまだまだある

スモールグッドビジネスの隙間はまだまだある

――なるほど。それは初めて聞きました。

細野:それで最初は、「実はこういう情報があるんですけど、ビジネスになりませんか?」と持ち込んで来たんですが、最初に彼が出してきた案が微妙で(笑)、質問してみるとビジネスとしてとても回りそうにない。

それで、手離れのいいやり方をいろいろアドバイスして、歯科技工士が匿名で「お勧めする町ごとの歯医者ランキング」とか、情報商材的な形にするとか、いまいろんなアイデアを練っているところです。

もしかしたらこのアイデアも、実現しないかもしれないし、なんとか立ち上げてみたけど失敗に終わるかもしれない。でも、そうやって自分で考えて実行しているうちに、事業の立ち上げにどんなことが必要なのか、じっくり学べると思うんです。

――どうせやるなら大きいことを、と考えると見落としてしまう視点です。

細野:大企業がやっている大きな岩の隙間ってめちゃめちゃあって、小石ならまだ入る、砂利ならまだ入る、水ならまだ入るみたいな。隙間がいっぱいあるのに、みんなビッグビジネスばっかり狙って、だからそれ全部GAFAにやられますよ。

資本主義だから大きな岩の入れ替えは起きるけれども、そこに乗らずとも、スモール・グッド・ビジネスを自分のサイズでやって幸せに生きる人生って、選択肢にそろそろ出てきていいのでは。そんな問いかけをしたい。

※本記事は2月24日に掲載した取材記事となります。7月よりブランドチャンネル設立に伴い、カテゴリーを移動しておりますが、本記事はPR記事ではございません。

細野真悟(ほその・しんご):リクナビNEXT編集長、リクルートキャリア執行役員、リクルートグループの子会社の社外取締役を歴任。現在は、企業間レンタル移籍プラットフォームのローンディールのCSOを務めるかたわら、音楽コラボアプリを運営するnana musicの戦略顧問、および共済型ビジネス実践ファーム「Fukusen(フクセン)」を主宰するビジネスデザイナーとして活躍中。【ビジネスデザイナー細野真悟さんに聞く「小さな事業」の作り方:過去記事一覧(全5回)】

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細野さんへのビジネス壁打ちの相談は「タイムチケット」まで。

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