オフショア開発でベトナムに大注目 「低単価」だけじゃない「親日」「技術力」でも高評価 | キャリコネニュース
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オフショア開発でベトナムに大注目 「低単価」だけじゃない「親日」「技術力」でも高評価

システム開発の海外委託先として注目されているベトナム

システム開発の海外委託先として注目されているベトナム

あらゆる企業活動にITが必要な昨今、エンジニア人材は引っ張りだこだ。しかし日本では「2030年にはIT人材が最大79万人不足する」(経産省)という試算が出るほど深刻な人手不足が進んでいる。

そこでいま注目を集めているのが、海外のIT企業にシステム開発を委託する「オフショア開発」だ。委託先には中国やインドなどの会社が使われてきたが、近年急速に人気を高めてきたのが東南アジアの「ベトナム」だという。その理由は何なのか、取材した。(キャリコネ企業研究Resaco編集部)

平均年齢31歳。GDP成長率7%の新興国

「オフショア開発白書(2021年版)」を発行する株式会社リソーズによると、2021年に日本企業から寄せられた海外開発委託先に関する相談のうち、国名を指定したものは全体の35%で、このうち52%が「ベトナム」の名前を挙げた。

2位はフィリピンの12%、3位はインドの10%というから、ベトナム人気は断トツといっていいだろう。かつて人気の委託先だった中国は、バングラデシュやミャンマーに押されて順位を6位に下げている。

そもそもベトナムとは、どんな国なのか。国連人口基金の調査によると、2020年のベトナムの人口は約9,730万人で、東南アジアではインドネシア、フィリピンに次ぐ第3位。平均年齢31歳の若者の多い国だ。

生産年齢人口の比率が高く、15~59歳の占める割合は65%で、25~29歳の層が最も厚い。2018年と2019年にGDP成長率7%台を記録。2020年以降はコロナ禍で2%台に落ち込んだもののASEAN内で最も高水準であり、「成長中の新興国」といえるだろう。

ベトナム人の労働力は、日本では製造業などですでに活用が盛んになっている。2021年10月の調査では、日本で雇用されている外国人労働者で最も多いのはベトナム国籍で、全体の26.2%と大きな割合を占めている。

ちなみに、人手不足が深刻な日本の平均年齢は48.4歳。最も厚い層は団塊ジュニアを中心とする45~49歳と、団塊の世代を中心とする70~74歳という高齢社会だ。2021年の実質GDP成長率は1.7%と小さいが、これでも3年ぶりのプラス成長である。

「日本語ができる人が多く、あまり異文化を感じないと思う」

出典:海外対日世論調査(令和元(2019)年度。外務省)

出典:海外対日世論調査(令和元(2019)年度。外務省)

ベトナム人気の理由のひとつは「親日度」だ。外務省の海外対日世論調査(2019年)によると、ベトナム人から見た「今後重要なパートナーとなる国」「最も信頼できる国」で、日本はいずれも1位となっている。「習得に最も関心がある外国語」でも日本語が1位で、回答者の55%が関心ありと答えた。

ベトナム人のニャンさんは、ハノイに本社を置くOminext(オミネクスト)グループの営業担当として日本で働く女性だ。ベトナムで日本語を学び、日本企業を相手に日本語で仕事をしている。

「当社は日本の医療・ヘルスケアシステムのオフショア開発に特化した会社です。従業員は約500人で、ほとんどがベトナム在住のエンジニアですが、日本語ができるブリッジSEがいますので、日本企業と同じ感覚で業務を委託いただけます」(ニャンさん)

ブリッジSEとは、日本企業のクライアントとベトナムのオフショア開発部門の間を橋渡しするエンジニア。ベトナム側の開発の進捗管理を行い、状況を日本側に報告し、日本語のドキュメントを残してくれる。

代表のチャン・クオック・ズン氏は、日本政府の奨学金で来日し、早稲田大学大学院の国際情報通信研究科を修了。日本企業でオフショアのブリッジSEとして働いた後、2012年にベトナムに帰国して起業した。オフショア従事歴は18年あまり。国際プロジェクト管理資格のPMPを保有し、コロナ禍が始まってからは家族とともに日本に移り住んでいる。

「ベトナムでは、日本で働いたITエンジニアが帰国してオフショアの会社を設立するスタートアップがブームになりました。当社のように500人規模の大きさとなった会社は少ないですが、現在でも小規模のオフショアの会社はたくさんあります」(同)

ベトナム本社の副社長は女性で、慶應義塾大学を卒業後にグーグルジャパンでエンジニアとして勤務した経験を持つ。日本法人の代表も女性で、筑波大学を卒業後にベトナム大手IT企業の日本法人に長年勤務しており、日本語が流暢だ。

「他のオフショア先と違うところは、ベトナム人は文化、国民性が日本に似ているところではないでしょうか。日本語ができる人が多く、勤勉で親日家です。仕事をする上で、あまり異文化、差を感じないと思います」

コストは日本人エンジニアの「半分から3分の1」

ベトナムの人気の理由として「オフショア開発白書」は、「親日であること」のほかに「勤勉な国民性」「地理的近さ」「単価の安さ」を挙げる。さらにIT人材の育成が盛んで、「リソースの確保」の点からも文句なしの状況としている。

豊富な人材リソースを支えるのは人口の多さで、将来的にベトナムと日本の人口は逆転する勢いだ。ベトナム政府は「IT人材を100万人に増やす」というビジョンを掲げ、人材育成を進めてきた。科学的リテラシーや数学的リテラシーでは、東南アジアでシンガポールに次ぐ高得点をあげたこともあった。あるベトナム企業で働く20代の女性はIT人気の背景をこう明かす。

「ベトナムではITエンジニアに憧れる人が多いです。ベトナム人の平均月収は日本円で約3万円ですが、ITエンジニアになると7~8倍にもなります。日本では大学で文系を専攻し就職して初めてITに関わる人もいますが、ベトナムではホーチミンやハノイ、ダナンの工科大学で専門教育を受けた人がIT人材になりますので、技術レベルも決して低くありません」

かつてオフショア開発先として人気だった中国やインドは人材コストが上昇し、いまや日本人と同じかそれ以上の場合も。ベトナムは人件費がまだ安く、開発コストは「日本人の半分から3分の1で済む」(20代女性)という。

インドやフィリピンのオフショア開発では、主なコミュニケーションは英語になることもあるが、ベトナムでは日本語を流暢に操るITエンジニアも少なくない。日本語学習者が多く、日本語能力試験の平均点は東南アジアでトップクラスという背景もある。

ただし、現時点では若い技術者が多く、プロジェクトマネジメントを担える人材が育っていない、という課題もあるようだ。そのため、単純な日本企業の下請けとして使われてしまい、技術力の高さなど潜在的な力が十分に活かされていなかったという見方もある。

技術や開発手法のレベルも「日本に負けず劣らず」

ベトナムの政体は社会主義共和国だ。ベトナム資本のオフショア開発会社には、前述のOminextのようにベンチャーとして起業した会社以外に、国営企業として設立された後に民営化されたFPTソフトウェアという大企業がある。

前出のニャンさんによると、FPTソフトウェアは「日本でいうところのNTTとか、NTTデータのような」圧倒的規模を誇る存在とのことだ。Ominextが医療分野に特化するのは、FPTのようなオールマイティな大企業と差別化を図るためでもある。

FPTソフトウェアは2005年から日本で事業展開を始め、日本企業の情報システムの子会社の下請けなどとしてオフショア開発に携わってきた。さらに近年では、企業の経営課題を理解してプロジェクトの上流に食い込むべく、コンサルティング領域を担当する法人を立ち上げ、事業を強化している。

日本法人のひとつ、FPTコンサルティングジャパンに勤める30代男性によると、東京・港区の本社には1,000人ほどの従業員が働いているが、約8割はベトナム人。残りの2割が日本人で、主に日本語で仕事をしているという。

ただし、ベトナム本社主催の会議や欧米拠点のエンジニアとのコミュニケーションは、すべて英語。欧米系の総合コンサルティングファームからの転職組であるこの男性から見ても、グローバルな技術レベルの高さを感じるという。

「これまでベトナムのオフショアは、コスト削減という意味合いばかりが注目されすぎてきました。もちろん欧米のコンサルティングファームの数分の1のコストで開発や運用ができる部分も強みですが、それだけでなく、すでにグローバルなネットワークの中で幅広い案件を手掛けています。私もクライアントに対し、自信をもって以前と同じかそれ以上の提案ができていますし、私のような経歴の転職者も増えていますね」

この男性は、これからのベトナムのオフショア活用は、豊富なリソースとともに「新しい技術的挑戦」という側面も増えてくると予想する。

FPTのような巨大グループ、Ominextのような専門性をもった中堅企業以外にも、小さな予算から委託できる小規模のベンチャーが数多くある。ベトナムのオフショアの選択肢は幅広く、自社に合った委託先選びが重要になるだろう。

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