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非通信領域に注力するNTTドコモ シェア拡大に向けた採用活動とは

日本を代表する通信事業の大手企業、株式会社NTTドコモ。ポケットベルから始まり、携帯電話でその名を世界中に知らしめてきた同社は、昨年7月に社内カンパニー制を導入し非通信領域に注力している。今後は「スマートライフ事業」でのシェア拡大を目指すという。

同社が変革期を迎えたのは奇しくもコロナ禍と重なるが、新事業領域での人材をどのように獲得していたのか、既存社員の働き方はどのように変化しているのか。総務人事部 採用育成担当部長の上田誠さん、採用担当課長の室住篤子さんにお話を伺った。(聞き手・文:藤間紗花)

ポストコロナの採用活動はオンラインと対面のハイブリッドに

NTTドコモ総務人事部 人事戦略担当・採用育成担当部長の上田誠さん(右)、同採用担当課長の室住篤子さん

NTTドコモ総務人事部 人事戦略担当・採用育成担当部長の上田誠さん(右)、同採用担当課長の室住篤子さん

――コロナ禍と時期を同じくして、新事業や新サービスも展開されている御社ですが、こうした分野で活躍する人材に関しては、やはりキャリア採用での獲得に注力されているのでしょうか。

室住さん:当社が採用活動でキャリア採用に重きを置くようになったのは、実はここ3年ほどです。それまでは基本的に新卒採用を重視していましたが、10名、20名と徐々にキャリア採用者を増やしていき、現在では年間300名程度を採用しています。

それぞれの部署で見ると、新卒採用で入社したプロパー社員が大半を占めますが、たとえばスマートライフなどの非通信事業における金融決済では、経験があるキャリア採用者の割合も多く活躍してもらっています。

――大幅にキャリア採用の枠を増やしたのには、何か理由があるのでしょうか?

室住さん:当社では、マーケットでの競争力の強化や収益性向上のため、2022年7月に「スマートライフカンパニー」という社内カンパニー制を導入しました。スマートライフ事業に特化した人材を獲得していこうと考えたときに、やはり即戦力であるキャリア採用の枠を増やす必要があると判断したのが理由の1つです。

――コロナ禍では、御社もさまざまなところで変化を余儀なくされたかと思います。とくに採用活動で苦労されたことはありますか?

室住さん:コロナ禍当初はやはり苦労はありました。たとえばキャリア採用においては、「このポストの人材が欲しい」というピンポイントでマッチする人材を求めていますが、対面で初めて分かるコミュニケーション力やスキル、経験をオンライン環境でいかに見極めることができるかといった観点です。

慣れないオンライン環境での採用活動で、入社後に業務のアンマッチが発生しないように、ジョブディスクリプション(業務内容や必要スキルがまとめられた文章)を出すにあたって、総務人事部でしっかりと内容を確認し、世の中に出しています。

オンライン採用を実施してみてわかったことは、なんといっても時間的なメリットが生まれることでした。キャリア採用では、仕事をしながら転職活動をする方が多く、わざわざ当社まで出向いていただく必要がなくなったことで、かなり時間を有効に使えるようになりました。

新卒採用では、時間的なメリットに加えて、距離的なメリットから地域人材や優秀人材の獲得に成功しています。最近ではコロナも徐々に落ち着いてきましたが、当社では今後はオンラインと対面のハイブリッドで進めていく予定です。

全組織を「リモートスタンダード」と「オフィスベース」に分類

――社員の皆様の働き方についても、変化がありましたか?

室住さん:当社にはさまざまな職種の人間がおり、業務をリモートワークで行えるか、出社しないと難しいかというのは、部署ごとに大きく異なります。NTTグループ全体でリモートワーク制度を導入したタイミングで、全部署を「リモートスタンダード組織」と「オフィスベース組織」の2つに分けました。

リモートスタンダード組織には、たとえばR&Dのような研究開発チームがあります。彼らはリモートでもスムーズに業務を進めることができますので、とくに必要がなければ、基本的にはリモートワークで対応してもらってかまいません。反対に、お客様対応をするようなオフィスベース組織は基本的には出社して働いていますが、リモートで対応できる業務であればリモートワークに切り替えるなど柔軟に対応してもらっています。

リモートスタンダードだから出社してはいけない、オフィスベースだからリモートしてはいけない、ということはなく、その日の業務の内容など必要に応じて、各部署で判断してもらっています。コロナ禍前には、どんな職種の人間もみんな出社していましたから、コロナ禍前よりもそれぞれに合った働き方ができるようになり、生産性が向上しているのではと思います。

――たとえば、上田さん、室住さんのいらっしゃる総務人事部の皆さんは、やはりオフィスベースで働かれているのでしょうか?

上田さん:総務人事部はリモートワークに向かないと思われがちですが、実はかなり取り入れています。部内でも職種によって多少違いはありますが、私が担当している人事戦略、採用育成業務のチームは、ほとんどリモートワークです。チーム間でのコミュニケーションはリモートでもしっかり取れていますし、業務もむしろしやすくなったのではと思いますね。

室住さん:コミュニケーションツールには主に「Slack」を使用しているのですが、かなりオープンに活用していて、みんなレスポンスは早いです。また、オンラインでのミーティングも頻繁に実施していますが、全員基本的に顔出しで参加しているので、「顔を見て話している」という感覚があり、いざ出社して対面したときにも「久しぶりに会った」と感じることはありません。私を含め、リモートワークスタンダードに切り替わったことで、ネガティブな感想を持っている人間はほとんどいないと思います。

人材獲得は現場主導型

リラックスした雰囲気の本社34階カフェスペース

リラックスした雰囲気の本社34階カフェスペース

――御社では、過去にドコモに在籍し、家庭の事情や転職などの理由で退職した方を再度受け入れる「カムバック採用」を実施されていますね。

室住さん:2020年の下期ごろから運用を開始しました。ちょうどコロナ禍と重なっていたのですが、「転職先の企業がコロナ禍の影響を受けて芳しくない状況になってしまった」という方が増えていましたので、偶然ですがタイミング的にはあっていたのかと思います。

かつて当社で働いていた方がさまざまな理由で外に出て、新たなスキルや経験を積んでから、またドコモに戻って活躍してくださるというのは、やはり当社としてはかなりプラスです。すでにカムバック採用で再入社してくれた社員は、職種を問わず何人もおりまして、皆それぞれの部署で活躍してくれています。

――カムバック採用のほかに、キャリア採用ではどのようなルートで人材を獲得されていますか? 御社ならではの獲得の仕方などはあるのでしょうか。

室住さん:大半を占めているのはエージェント(人材紹介)ですが、現在さらに力を入れているのはダイレクトリクルーティングやリファラルです。

当社のキャリア採用活動には大きな特徴として、いわゆる総務人事部主導の採用活動ではなく、現場主導型という形を取っていることがあります。「自分たちの必要とする人材をしっかり見極めて獲得する」というマインドは、現場側にも昔からあります。

現場主導型にすることには、当然メリットもデメリットもあります。メリットとしては、現場とのマッチング確度が向上する点や、現場の社員たちが主体的に動いてくれる点が大きく、結果としてリファラル採用の成功率が高いことなども挙げられます。とくにインセンティブを設けているわけではありませんが、現場主導型という考え方がベースにあると考えています。

デメリットとしては、やはり現場の人間には「なるべく早く人材を獲得したい」という人手不足解消の観点から短期的目線に流されてしまいがちなため、見極めるべきポイントをおろそかにしてしまうことがあります。

その部分をフォローするのが、我々総務人事部の仕事でもあります。基本的なルールは部内で構築して展開をしたり、選考においても総務人事部が最終面談で同席して現場と意識合わせをしたりと、しっかりと実施しています。

上田さん:今後はさらに現場主体で採用活動してもらいたいと考えています。事業部が自ら採用したい人材を獲得し育成することで、生産性が向上し事業貢献につながる、というサイクルをつくっていきたいと思っています。

それは、採用する人材に対して、より責任を持ってもらうという思いからです。自分たちが採用した方を、しっかりと活躍してくれる人材に育ててもらう。そのほうが、長い目で見れば事業部のメリットにもなるはずですから。いきなりすべてを現場に任せるということはありませんが、今後少しずつシフトさせていきたいと思っています。

「挑戦心」「行動力」を持った人材に期待

――新卒採用・キャリア採用問わず、新たな人材に求めるのは、どのようなマインドでしょうか。

室住さん:当社では「挑戦心」と「行動力」を持った人材を常に求めています。どんなことでも「やってみたい」という挑戦心を持ち、行動に移して実行する力が、新規事業領域の創出などを可能にすると信じています。

当社は「携帯電話の会社」というイメージや、安心安全といった、どちらかというと保守的な企業だと思われることが多く、それは非常にありがたいことですが、「さまざまなことにチャレンジできる企業」だということもしっかりと理解してもらう必要があります。「実はAIや機械学習、ビッグデータの解析をしている」という話をハッカソンなどですると、驚かれたり、興味を持っていただけたりすることは多いです。

そういったことから、新卒採用では今年の冬に2週間ほどの「現場受け入れ型インターンシップ」を開催しました。実際の現場で所属する社員と業務を実施いただくことで、自身の体験として理解いただけた施策だと思っています。

いずれ人事の我々の方からこうした説明をしなくても、「ドコモはチャレンジできる会社だ」という認識をしていただけるような工夫が必要と考えています。たとえば、当社が今研究に力を入れている人間拡張に関してはCMを放映しましたが、多くの方から反応をいただけました。人間拡張の分野はまだ研究段階であって、実用化も先ではありますが、ああいう形で発信することで、言葉で説明するよりはるかにわかりやすく伝えられたと思います。

あとは、SNSを活用した広報活動にも力を入れています。多くの人に使用されるサービスは日々刻々と変化しますので、毎年広報部と力を合わせて、どのSNSが効果的なのか、情報をアップデートしています。今後も採用活動で積極的に活用していきます。

上田 誠(うえだ・まこと):総務人事部 人事戦略担当・採用育成担当部長。入社以来、iモード、スマートフォンなどの端末企画・開発、アプリ開発業務に従事。2021年から人材開発業務を担当し、2022年に現職に至る。

室住 篤子(むろずみ あつこ):総務人事部 採用育成・採用担当課長。入社以来、長年コンシューマサービスの企画開発業務に従事。ダイバーシティ関連業務やドコモ・バイクシェア社への出向経験を経て、2020年から若手育成や新卒採用を担当。2022年にキャリア採用業務が加わり現職に至る。

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