横河電機が立ち上げたコンサル会社「横河デジタル」が本格始動 グループの強みを総動員して製造業を支援 | キャリコネニュース
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横河電機が立ち上げたコンサル会社「横河デジタル」が本格始動 グループの強みを総動員して製造業を支援

横河デジタル 執行役員 DXコンサルティング事業部 事業部長の清水誠さん

横河デジタル 執行役員 DXコンサルティング事業部 事業部長の清水誠さん

石油・ガス等のプラントや工場における「プロセス制御システム」の分野で世界トップレベルのシェアを誇る横河電機。2023年3月期には過去最高業績を更新しつつ、さらなる伸長に向けて「事業ポートフォリオの変革」を目指した積極的な取り組みを進めています。

2022年7月設立の「横河デジタル」もそのひとつ。横河電機社内のDXの成果をハードウェアやノウハウとともに製造業のお客さまに提供し、横河グループの進化を先導する役割を担います。執行役員 DXコンサルティング事業部 事業部長の清水誠さんに、新しい会社の進む方向性と求める人材像について聞きました。(グローバルウェイエージェント編集部)

自社の「先進的DX」の成果を製造業のお客さまに提供

清水誠:1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部を卒業後、日本IBMに入社。製造機器の研究開発、ITシステム導入・運用、海外拠点立ち上げなどを歴任。2014年にアビームコンサルティングに入社し、企業のIT戦略立案やM&AにおけるITデューデリジェンスなどに携わる。2023年1月に横河デジタルに入社。

清水誠:1972年生まれ。慶應義塾大学理工学部を卒業後、日本IBMに入社。製造機器の研究開発、ITシステム導入・運用、海外拠点立ち上げなどを歴任。2014年にアビームコンサルティングに入社し、企業のIT戦略立案やM&AにおけるITデューデリジェンスなどに携わる。2023年1月に横河デジタルに入社。

――横河デジタルとは、どういう会社なのでしょうか。

DX子会社というと本社情報システム部門のアウトソーシング先というケースが多いですが、当社はそうではありません。横河電機が自社の生産性を上げるために積み上げてきたDXの成果を、おもに製造業のお客さまに提供して支援するために作った会社が横河デジタルです。

DX戦略からAI、カーボンニュートラル、セキュリティ、OT(生産技術)など、お客さまの課題を踏まえて、戦略策定から実装、インフラ整備、運用まで一気通貫で支援するコンサルティングを行います。私は今年1月から参画し、現在はコンサルティング部門の責任者を務めています。

一般的な知名度は高くないかもしれませんが、横河電機は100年以上の歴史がある大手メーカーです。プロセス制御の分野で世界トップレベルのシェアを誇り、ABBやハネウェル、シーメンスなどと並び「グローバル・ビッグ6」の一角を占める唯一の日本企業です。

――新しい会社に、清水さんはどういう経緯で入社されたのですか。

私の経歴を簡単にお話ししますと、新卒で入社した日本IBMに約17年、アビームコンサルティングに約9年おりました。IBMではハードディスクの研究開発からキャリアをスタートし、ITシステムの導入や運用、営業などを担当していました。海外拠点の立ち上げでタイや中国・上海、シンガポールに駐在したこともあります。アビームでは執行役員プリンシパルとしてIT戦略を担当し、ミャンマーで携帯電話プロジェクトにも携わりました。

IBMは完全にできあがった大企業でしたが、ありがたいことに運良く「ゼロイチ」(新しい取り組みの立ち上げに関わること)の仕事に多く携わらせてもらいましたし、アビームの急成長に関わることができて非常に楽しかったです。

充実した日々を送りながら、また新しいことにチャレンジしたいな、と思っていた矢先に、人材エージェントから「OT(生産技術)経験者」「ITやDXを知っている人」「コンサルタント経験者(パートナークラス)」「会社の立ち上げ経験者」という募集要項が送られてきて、これを満たせるのは僕しかいないと(笑い)。

ベテランコンサルでも「知的欲求が満たされる」

「脳みそがすごく活性化している。これがもう日々楽しくて」

「脳みそがすごく活性化している。これがもう日々楽しくて」

――それですぐ応募することにしたんですか。

募集要項を見た瞬間に「これだ」と思って、即座に自分で電話をかけました。コンサルティングをやるにしても、横河デジタルならアビームとカニバラない(競合にならない)し、新しいことができるのでは、というワクワク感がありました。

決め手となったのは、NTTデータやソニーなどを歴任された舩生(ふにゅう)さん(幸宏氏)が、横河電機のCIOと横河デジタルの非常勤取締役を務めていたことです。大学の先輩でもある彼が横河グループのDXを大きく進めたことは、業界でもよく知られていました。

――経験豊富な清水さんから見て、横河デジタルの印象はどうですか。

ITやコンサルの業界に25年以上いて、知らないことはほぼないと思っていたんです。新しいテクノロジーが出てきても何かの延長上にあるので、すぐにキャッチアップできるだろうと。でも、横河に入ってみて驚きました、知らないことだらけで。いま知的欲求が満たされるのがすごく刺激になって、脳みそがすごく活性化しているんですよね。これがもう日々楽しくて。

横河電機といえば、IBMでハードディスク生産機器の開発に使っていたオシロスコープ(電気信号を波形として表示する測定器)の印象が強かったんですが、現在の主力は制御事業に移り、売上高の9割超を占めています。海外売上比率も7割を超えています。

さらに、制御はハードウェアだけではなく、ソフトウェアやサービスの組み合わせでもある。あらためて会社のホームページを見てみると、知らない単語が並んでいるんですよ。そんな段階で入社していいのか、という話ではあるんですが(笑い)。

――事業会社系のコンサルティング会社というポジションも新鮮ですよね。

横河電機には長い歴史があり、センサーなど自社のハードウェアを持っていて、いろんな製造業のお客さまとつながりがある。制御システムやソフトウェアの実績があって、すでに絶大な信頼があるわけです。そして、豊富なInternal DX(社内DX)の成果を、お客さまに展開することができる。

ですから、横河デジタルは確かにコンサルティング会社ではあるのですが、他のコンサル会社やベンダーとの決定的な違いは、お客さまから見て机を挟んだ「向こう側」ではなく、同じ側に立ってお話をしていただけること。それがすごく新鮮です。

DXコンサル事業部の担当領域は「センサーから経営まで」

「横河グループ社員のものづくりの理解は飛び抜けている」

「横河グループ社員のものづくりの理解は飛び抜けている」

――そうすると、横河デジタルのターゲットは、横河電機の既存のお客さまへ提案していく場合と、他社と提携しながら開発のデリバリー部分を担当する場合、それから新規のお客さまの新たな案件を開拓する場合、という3種類くらいありそうです。

他社との提携は、すでに超大手のパッケージベンダーや総合コンサル会社から「ぜひ一緒にやりましょう」と多くの声をかけてもらっています。横河は工場やプラントの現場が他社コンサルティングファームと比較して圧倒的に強いからです。

既存のお客さまへの提案ももちろんやっていきますし、すでに信頼関係のある取引先の候補があるというのはものすごく有利です。

――内閣総理大臣賞も受賞した「プラント自律制御AI」(AIが化学プラントを35日間自律制御することに世界で初めて成功)はキラーコンテンツになりますね。

「横河さんと同じことをうちでもやりたい」という引き合いはあって、当然それに応えていきます。ただ、単にパッケージを広めていくだけではなく、お客さまごとの課題をきちんと見極めて提供する形を変えていくとか、例えばプラント以外の分野でも展開していくとか、新しいやり方を提案していくべきだと考えています。

――横河の伝統に「デジタル」が新たな風を吹き込むこともありそうです。

入社して初めて知った要素技術を調べてみて「これは売れそうだな」と感じることもあります。そういうネタが社内にいっぱいあるので、新しい会社を作るのは事実ですが、すでに武器がいろいろあって「これを組み合わせると何かできるんじゃないか」と考えることができるのも、当社の面白いところだと思います。

私たちDXコンサルティング事業部は「センサーから経営まで」を標榜していますが、これは他社ではできません。それに横河デジタル単体で戦う必要はなく、横河グループの総合力を活用して価値を提供すればいい。例えば “製造DXコンサルタント” といった新しいカテゴリーを作り、他社と被らないブルーオーシャン市場で戦っていければと考えています。

横河グループからの出向者と中途採用者が力を合わせる

「安定した横河グループに、ディスラプティブな取り組みを持ち込む」

「安定した横河グループに、ディスラプティブな取り組みを持ち込む」

――できたばかりの横河デジタルですが、すでに450人ほどの方が働いているそうですね。

現在は主に、横河電機とともにOTのパッケージソフトの開発や導入支援を担当していた、横河ソリューションサービスからの出向者が多数います。これに加えて、コンサル部門の社員を新たに50人ほど採用しています。

なお、横河ソリューションサービスは、横河グループの国内販売会社であると同時に、現場のお客様を支援するエンジニアも所属しています。彼らはものづくりの現場を非常によく知っており、センサーや制御システムの導入だけでなく、ラインの改善提案まで行うことができます。

――これは日本の伝統的な大企業が苦労していることですが、終身雇用を前提としたメーカーと、流動性の高いコンサルティング会社とでは、給与体系などの待遇が大きく異なります。

横河デジタルには横河電機のような細かな給与テーブルがありませんし、出向者と中途採用者では同じ年代でも給与水準を合わせることはできません。スキルが高く経験豊富なコンサルタントは、メーカーの待遇では採用できないのが現実だからです。

コンサルタントには出向者のような安定した給与が保証されていませんが、市場価値に基づいて給与水準が決められ、達成度に応じて評価が柔軟に行われます。年功的な要素もなく、給与が上がることもあれば下がる可能性もある、ハイリスク・ハイリターンな働き方です。

なお、横河グループからの出向者で、コンサルタントのような働き方をしたい人には、転籍をしてもらっても構わないと考えています。安定した横河グループの中に、そのようなディスラプティブ(破壊的)な取り組みを持ち込むのも、私たちの役割のひとつと考えています。

――とはいえ、横河グループとしての安定的な基盤もありますね。

健康保険組合は横河グループの一員なので保養所やスポーツクラブなども使えますし、グループ社員が共通して使える福利厚生メニューは横河デジタルの社員も使えます。一方、横河デジタルには、いまのところ退職金制度がありませんが、来年度から導入するべく導入準備中です。これから当社独自の人事制度や待遇、働く環境づくりの整備をしていこうと考えています。

「グループ売上高1兆円」達成に向けレバレッジ利かせる

「お客さまとディスカッションして新しい価値を生み出せる人が欲しい」

「お客さまとディスカッションして新しい価値を生み出せる人が欲しい」

――先ほど「横河デジタル単体で戦う必要はない」というお話がありましたが、事業計画面ではどうなっているのでしょうか。

私が責任者を務めるDXコンサルティング事業部には、現在社員が20人ほどいます。仮に5年後に250人に増えたとしましょう。その彼らが、普通のコンサル会社のような人月仕事をしていたらどうでしょうか。1人あたり2000万円くらいの売上を生み出したとして、250人で50億円です。

一方、横河グループは2021年5月に発表した長期経営構想で、2030年度までに「売上高1兆円規模のグループ企業像」を描いています。2022年度が4500億円台ですから、ギャップは5000億円以上あります。

横河デジタルは、このギャップを埋める策のひとつとして作られました。でも、コンサル単体のビジネスではギャップの1%しか埋めることができない。ということは、コンサルの稼働率を上げるなんて小さな話をしていてはダメで、横河グループの強みを総動員してレバレッジを利かせる方法を考える必要があるのです。

――なかなか高いハードルがありそうですが、横河デジタルにはどんな人に参画してもらいたいでしょうか。

当初はまったくの未経験者を育成する余裕がないので、DXコンサルティング事業部ではいまのところコンサルティング経験者を歓迎しています。ただ、それ以上に「ゼロイチで新しいものを作るのが好きな人」が向いているのではないかと思います。

できあがった会社で安定的な働き方をしたい人ではなく、お客さまとの間で「次はこんなことしてみましょうか」とディスカッションをしたり、社内で新しいしくみや制度を考えたりすることが楽しいと思える人ですね。

私の経験から言っても会社の立ち上げフェーズに関わった経験は後々高く評価されますので、貴重なチャンスだと思います。ベンチャー企業に行きたいのに親ブロックや家族ブロックに遭っている(転職を賛成してもらえなかった)人でも、横河デジタルなら新しいことができて、親会社も安定しているし周囲にも納得してもらいやすいかもしれませんね。

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