環境配慮型新素材「LIMEX」のTBM サステナビリティ革命に挑戦する若手社会人のキャリア採用を強化
サステナビリティ領域に特化したディープテックのスタートアップ企業TBMは、今年で会社設立14年目を迎えます。日本の代表的な「ユニコーン企業」(企業価値の高い未上場企業)として知られますが、現在も新領域の開拓に果敢に挑戦し続けています。
IPOの準備も行っているという会社は、いまどのような事業に注力し、どのようなキャリア採用を強化しているのか。同社常務執行役員CMO(最高マーケティング責任者)の笹木隆之さんに話を聞きました。(構成・文:水野香央里)
プラスチックや紙に替わる新素材「LIMEX」を展開
――御社の沿革について教えていただけますか。
代表の山﨑敦義が、2008年に石灰石を主原料とする素材「ストーンペーパー」に出合ったことが事業のきっかけです。木や水の資源を保全し、紙の代替となることに可能性を感じ、台湾からの輸入販売を始めました。
当時のストーンペーパーは重さや価格、品質に課題を抱えており、それを自ら解決すべく素材メーカーとして研究開発を行っていこうという覚悟をもって、2011年に会社を立ち上げました。ストーンペーパーと異なる、自社開発した新素材「LIMEX(ライメックス)」は、プラスチックや紙に替わる第三極の素材として国内外で成長を続けています。
社名のTBMは「Times Bridge Management」の略で「何百年後も継承され、人類の幸せに貢献できる、時代の架け橋になるような会社をつくりたい」という想いを込めています。従業員数は315人(2024年4月現在)、国内では東京のほか神奈川、名古屋、大阪にオフィスを、宮城に東北LIMEX工場、神奈川に横須賀サーキュラー工場、海外はベトナム、韓国、アメリカに拠点を設けています。
――具体的にどのような事業を行なっていますか。
現在当社が手掛ける事業は、当社が開発・販売を行う新素材LIMEXに関する事業と、廃プラスチックなどの資源循環を促進するMaar(マール)事業、リサイクル工場の運営、そしてサステナビリティ領域における新規事業の3つです。
LIMEXはさまざまな用途で1万以上の企業や自治体などで利用されています。主原料の炭酸カルシウム(石灰石)は世界中に豊富に存在し、価格も安価です。石油由来のプラスチックと比べて温室効果ガスの排出量を削減でき、水資源に恵まれない国でも製造が可能です。既存のプラスチック工場で代替でき、専用の加工機を必要としないのも特徴です。
あわせて、使用済みLIMEXや廃プラスチックなどを回収・再生する循環モデルの構築にも取り組んでいます。2022年には回収したLIMEXと汎用プラスチックを選別し、再生利用する世界初のプラントの運用を横須賀サーキュラー工場で開始しました。これからも同様の取り組みを国内外に展開していく予定です。
新素材を国内外に広める「ソリューションセールス」を募集
――現在どのようなキャリア採用に注力していますか。
キャリア採用については、募集ポジションは幅広く、1ポジションあたりの採用人数は少ないロングテール型の採用を行っています。職種は新規事業、営業、サプライチェーン、開発からコーポレートまで、役職もハイレイヤーからスタッフ層まであらゆるポジションで募集を行っています。
その中でも主軸のLIMEX事業の国内営業職では「ソリューションセールス」の募集に力を入れています。新素材をさらに多くの企業に導入してもらうため、新規用途の開発や新製品開発、仕様検討などに携わる仕事です。
LIMEX事業では海外営業職の募集にも力を入れており、素材の販売以外にも、LIMEX Pelletと呼ばれる粒状の素材を既存の設備を活用して製造する海外OEMも行っており、提携先の開拓を行っています。
2021年からはベトナムに現地法人を設立して現地採用を進め、他の東南アジア諸国、ヨーロッパ、中国、北米エリアの販売パートナーとの関係性の構築や、バリューチェーン、サプライチェーンの構築を通じて、LIMEXの素材と製品を普及していくことも重要な役割となっています。
また、LIMEX事業では次世代LIMEXを広めるポジションの募集も行っており、CCU(Carbon Capture and Utilization)技術を使い大気中や排ガス中の二酸化炭素を回収して原料として作る炭酸カルシウムを使ったLIMEXの普及にも力を入れていきます。
――前職など求める経験などはありますか。
新素材を広めるチャレンジにはさまざまな課題があるので、ソリューションセールスや新規開拓に積極的に取り組んできた方であれば、特に前職は問いません。
LIMEX事業の本部長はコンサルティング業界の出身者ですし、執行役員は金融業界の出身者です。もちろんメーカー出身の社員も活躍しており、例えば大手商社で化学品を扱っていた経験は当社の業務との親和性も高くなりますが、同業種出身でなければならないというわけではありません。
資源循環事業でも、メーカーやリサイクル事業などの出身者が多く活躍していますが、商社から転職してきた方、大企業でオープンイノベーションや新規事業に関わっていた方も、事業本部で営業や事業開発に取り組んでいます。
ハングリーに挑戦する「アーリーフェーズ」のつもりで
――御社は「ユニコーン企業」の代表的な存在として名前を知られています。
ユニコーン企業とは一般に、企業価値または時価総額10億ドルをねらう未上場企業を指します。当社は2019年に国内で史上6番目のユニコーン企業としての評価をいただき、日本経済新聞がベンチャーキャピタルの協力で推計した2023年版「NEXTユニコーン調査」にもランキングされています。
このような経緯から、当社はすでにスタートアップの「レイターフェーズ(安定段階)」にいると思われがちですが、決してそうではありません。GX(グリーン・トランスフォーメーション)の分野で、革新的な技術に基づいて世界に大きな影響を与える問題を解決するディープテックのスタートアップとして、常にチャレンジを続けています。
ユニコーンのスタートアップには、非常に高い目標やハングリーに挑戦し続けるメンタリティーが非常に重要です。そのため当社への入社を考える方には「アーリーフェーズ(起業段階)」、場合によっては「シードフェーズ(最初期段階)」で活躍するイメージして欲しいと考えています。
IPOの準備にはかなり以前から取り組んでいますし、ガバナンスの対応も進んでいますが、まだまだ組織の中の状態はカオスです。この状態から一人ひとりがTBM草創期のメンバーとして、どうすれば高い成長に向けた組織や事業のモデルをつくることができるかを考え、自ら積極的に「TBMづくり」に貢献する活動を行うことが、私たちが今、キャリア採用で入社される方に求めていることです。
――候補者に御社について伝える際、苦労する点はありますか。
世代間で「環境ビジネス」に対する認識に差があるように感じています。「GXとは何か」「カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに資するビジネスとはどういう仕事か」といったところが、ITビジネスなどと比べるとイメージしにくい部分があるようです。
グローバルでみると、気候変動問題に取り組むクライメートテックやカーボンニュートラルに資する未上場企業の資金調達額は1,000億円を超えています。ESG投資と同様、ディープテック領域は先が予見しにくく時間がかかりますが、事業モデルに対する市場からの期待値の高さは一時のトレンドではなく今後ますます高まると考えています。
かつてのITビジネスのように、もっと多くの方々から目を向けてもらえるようにしなければなりません。一社ではなかなか成せない部分もありますが、こういったサステナビリティのビジネスの中身を、広く候補者の方に伝えられるようにしていきたいですね。
TBMで働く「3つの魅力」
――候補者の方には御社で働く魅力をどのように伝えていますか。
1つ目は、成長環境で働けることです。2050年の環境関連ビジネスの世界市場規模は約2,300兆円と予想され、このうちサーキュラーエコノミー市場は約1,390兆円、気候変動市場は約390兆円に成長すると見込まれています。
当社が挑戦しているサステナビリティ領域の市場規模は非常に大きく、グローバル市場を押さえるために、2021年には韓国SKグループと135億円の資本業務提携を結ぶなど、国内だけでなく海外でもチャレンジを始めています。
2つ目は、勢いのあるスタートアップで働けることです。私たちは「ユニコーン企業」の第一世代としてすでに300億円超の資金調達を行っており、ステークホルダーからの期待に相当大きな責任を背負っています。
それと同時にステークホルダーと連携しながら日本のスタートアップの新しいロールモデルをつくっていきたいとも考えており、スタートアップで働くことに興味を持っている方には熱くなっていただける部分だと思います。
3つ目は、株式報酬です。当社は、会社の成長や企業価値を社員一人ひとりに「自分ゴト化」してもらいたいという思いから、全員がオーナーシップを持って一人ひとりの成功や幸せを本気で叶えていくためのリターン設計を行なっています。
ストックオプションについては、これまで新卒入社を含むほぼ全員に役職を問わず付与してきた実績があります。今後は日本でも給与報酬だけでなく、株式報酬も考慮してスタートアップに転職して来る人が増えると思っていますし、そういった機運もつくらなければならないと考えています。
――人材定着についてどのような取り組みをおこなっていますか。
キャリア採用で入社した方には、入社後3日間かけてオンボーディングプログラムを行っています。各部門長やマネージャー、執行役員を含めて約20名のメンバーが講師として参加し、TBMの事業と組織について伝えています。これを毎月行っていますので、オンボーディングについては相当なリソースをかけて取り組んでいます。
入社後1ヶ月目と3ヶ月目には、「スタートアッププレゼン」というプレゼンテーションの場を設けています。入社後に学んだことや過去の経験などから、他のメンバーに対して学びとして共有できるものをシェアすることが目的です。
また、カルチャー浸透と事業進捗の共有を目的として全体ミーティング「Same Boat Meeting」を毎月開催していますが、この場では入社半年以内で目覚ましい活躍をしたメンバーの表彰も行なっています。
「理念で繋がる」仲間を集めたい
――カルチャーフィットはキャリア採用においても重要ですね。
理念共感は、事業としてのフェーズが変わっていったとしても決して外せないものです。やはり「理念で繋がる」仲間を集めるということを、まずは第一に考えています。
2020年には、当社の企業理念体系を「TBM Compass」として再定義しました。ミッションを「進みたい未来へ、橋を架ける」、ビジョンを「過去を生かして未来を創る。100年後でも持続可能な循環型イノベーション」としています。
なお「循環型」とは事業領域のことではなく、人や組織が入れ替わりながらイノベーションを何度も繰り返し起こし続けていく企業、チームでありたいということです。そのための価値観として「非常識に挑戦しよう」「両立主義でいこう」「自分ゴトを広げよう」「約束への逆算思考」「感謝と謙虚で繋がろう」という5つのバリューを示しています。
また、毎年「スローガン」をつくり、今年は「全員レギュラー」としました。一人ひとりが「会社をつくっている」自覚を持ち、レギュラーとして挑戦することを大切にしているので、そういった覚悟を持って一緒に挑戦していける仲間を増やしていきたいと思っています。
――バリューの中では「感謝と謙虚で繋がろう」はやや異質に見えます。
感謝や謙虚さが大切なのは当たり前と思われるかもしれませんが、あえてバリューとして掲げている理由があります。当社は日本のスタートアップとして、世の中に新しい物差しで業界コンセンサスをつくっていくという非常に大きなチャレンジをしています。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれるほど強かった高度成長期と比べ、今の日本に競争力があるかと問われれば、そう言い切れないと思います。そんな中にあって「日本発のものづくりを世界へ広げる」チャレンジをするためには、一人でも多くの方々に支援してもらい応援してもらえる「人格」を鍛えなければならないと考えています。
TBMは非常に難しいチャレンジをしており、今後訪れるかもしれない修羅場をくぐりぬけるために「感謝と謙虚で繋がれる」かどうかは、非常に大事な価値観になるのではないかと感じています。
大企業で活躍する「複業人材」の活用も
――今後人材採用について新たに取り組みたいことはありますか。
当社はこれまで、フルコミットを原則とする「正社員偏重型」で組織をつくってきましたが、事業フェーズが変化する中で事業成長を加速するためには、雇用形態の多様化が必要だと考えています。そこで今年度から、大企業などで活躍されている方にTBMに複業として関わっていただく「複業人材」の活用を始めました。
パワフルな複業人材が増えると、正社員の役割はより重要となり力量も問われます。正社員が活躍に応じた高いリターンが得られるよう、正社員のインセンティブの設計についても強化していきたいと考えています。
スタートアップの成長や、ユニコーン企業を増やしていくことは、日本政府においても政策上非常に強く求められていることです。その中で、人事制度を始めとするTBMの取り組みが、どれだけ他社のロールモデルになれるか。私たちはまだまだチャレンジャーの立場です。
今後は国内だけでなく海外の視野にも立ち、新しい採用モデルづくりや新しい人事制度の構築にも力を入れていきます。IPOに向けた取り組みも強化しますのでまだまだ新しいメンバーの力が必要です。高い志を持った方とご一緒できれば嬉しいです。
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